二月七日(金)己酉(旧正月八日・上弦) 晴れ、寒い 

今日は、昼から都知事の期日前投票にいきました。そして、そのついでに、(いや、投票のはうがついでだつたかも知れませんが)、神田古書会館にお参り、でない、見学に行つてまゐりました。定例の金・土の古書即売会です。今日は、「書窓展」でした。

ぼくは、本以外はほとんど出費はしなくてもすむ生活をしてゐるんですが、それでもお小遣ひには限度がありますから、より必要度の高いものしか求めないやうにはしてゐるんです。ですから今日も、厳しく自制して見学だけにしようと決心したのであります。それだけでも勉強になることは必然だからであります。けれども、そこがぼくの節操のないところで、あれこれ言ひ訳を考へながら、結局二冊買ひ込んでしまひました。

一冊は、『木曽路名所図会』(名著出版、一九七二年)です。その帶(腰巻)には、「木曽路の歴史と地理を豊富な絵図と共に語る案内記!!」とあります。いいでせう! 文化二年(一八〇五年)に刊行された和本の翻刻で、くづし字の勉強にはなりませんが、「中仙道を歩く」旅には、案内記と絵図が大ひに参考になりさうです。

そして、もう一冊は、薄つぺらい『道外百人一首』(太平文庫、一九八二年)です。これも、最近の本ではありますが、今日の写真に載せましたやうに、中身は影印本です。「道外」と書いて「どうけ」と読みます。これも文化年間の刊行のものですが、原題は長いのです。「浮世風俗繪盡 道外百人一首 醉放逸人画」とあります。

例へば、柿本人麻呂の歌。「あしびきの山屋がうどん汁もよし、長々しきをひとりすすらん」(写真はじめの、左上)なんて、元の歌を知つてゐればなほさら面白いですね。さらに、小野小町は強烈です。「顔の色は変りにけりないたはしや、悪い夜鷹に馴染みせし間に」(写真二枚目)。こんなのがたつぷり入つた「百人一首」なのであります。か・つ・て・き・て・よ・か・つ・た!

 ところで、今日も見てきましたけれど、本当の和本といふのは高価ですね。ぼくなんか手もお足も出せません。ぼろぼろで使ひ古しの廉価なものを手に入れるのが精いつぱいです。

 

今日の写真:『道外百人一首』から二枚と、『木曽路名所図会』から二枚。これらは、一月に訪ねた、中仙道の名所です。