三月七日(金)丁丑(旧二月七日) 晴れ、寒い 

そろそろ禁断症状が出ると思はれたんでせうか、「よかつたら出かけてもいいはよ」との、妻の温かいお言葉に促されて、今日は出かけてきました。行く先は言はずと知れた古書市です。しかも、はしごをしてしまひました。はじめは、いつもの神田の古書会館です。「城南展」でしたが、目ぼしいものは、『箱根御関所日記書抜』ぐらいでした。

それから、御茶ノ水駅まで歩いて食事をし、神田川の橋を渡つて地下鉄丸の内線に乗りました。終点の池袋駅では、西武線に乗り換へて、所沢駅へ直行です。所沢駅はずつと工事中でしたが、とてもきれいな駅になつてゐました。その東口広場の前にそそり立つガラス張りの建物が“くすのきホール”です。そこで、「彩の国 所沢古本まつり」が五日から開催中なんです。

ぼくが、この“くすのきホール”の「所沢古本まつり」を知つたのは、もう十年ほど前でせうか。TBSラヂオで、毎週火曜日朝八時から、詩人の荒川洋治さんが本や読書に関するお話をする十三分ほどの番組があつたんです。いや、番組そのものはまだ続いてゐますが、荒川洋治さんはいつのまにか辞めてしまはれたやうなんです。その番組のなかで、“くすのきホール”の「所沢古本まつり」を紹介してくださつたんですね。ぼくは、まだ伊豆にゐる頃でしたから、仕事で東京に出るついでに訪ねてみました。それからです。年に四回、三月と七月と九月と十二月に一週間行はれるのですが、時々出かけるやうになつたんです。 

ここがいいのは、 ロビーがあつて、休めることです。自動販売機がありますし、そこでお弁当を食べてゐる人もゐるんです。窓の外の眺めもいいです。なにしろ広いスペースですから、のんびりと休み休み見ることができるのは助かります。でも、今回、ここも掘り出し物はありませんでした。お財布のためにはよかつたですがね。それでも、何冊か、一つは、中西慶爾著『巡歴 中山道』(木耳社)と、福田和彦著『艶・浮世絵グラフィック 枕旅木曽街道六十九次』といふ、ちよつと人目にはさらせないお楽しみ本が収穫でした。

ま、それで、まつすぐ帰宅し、ラムの散歩にも間に合ひました。めでたしめでたし。

 

今日の写真:近ごろ珍しい不気味な写真! そして、所沢駅前の“くすのきホール”。八階ロビーと会場。その八階から見た夕日。