六月九日(月)辛亥(旧五月十二日) 曇天、午後雨のち小雨 

どうしたわけか、背中が痛くなり、貼り薬を貼つて、一日中仰向けに寝てゐました。おかげで本が読めて、子母澤寛の『おとこ鷹』(新潮文庫)を読み終へ、さらに、勝小吉著『夢酔独言』を手に取りました。

『父子鷹』と『おとこ鷹』は、物語として、筋が通つてゐます。当たり前のことですが、そのタネ本となつた『夢酔独言』は断片的で筋がよく通つてゐません。一応年齢に従つて書かれてゐますが、思ひついたことをあれこれ記してゐるだけですので、前後の関連がよくわからないところがあります。これをタネ本として、長編物語を書いてしまふなんざあ、やつぱり作家といふのはすごいと思ひました。

勝麟太郎が鉄砲五百挺を作る御用を仰せつかひ、鋳物師の銅太と対面した場面です。銅太が御神酒料(おみきりょう)を差し出したところから・・。

麟太郎はじろりと見て、「御神酒料たあ何んだえ」・・「おい、賄賂かえ」・・

   「お前ら、今までその手で先生方のお目をごまかし、圧銅の量を減らしたり、いい加減な銅を使って、無性にぼろい儲けをしたろうが、考えても見な、拵えるのは鉄砲だよ、そ奴はいけない事ではないか」・・

「五百両賄賂に使うよりは、それだけ圧銅の量を増し、精一ぱい、いい鉄砲を作るが本当だ、そうすれあお前が為、おれが為、そしてお国の為よ」

また、勝海舟の「海舟」といふ名ですが、妹が嫁入つた佐久間象山からいただいた扁額、「海舟書屋」から取つたものだつたんですね。

それと、海舟と江川太郎左衛門英龍とは、ほとんど交流がなかつたやうです。といふより、江川英龍は二十二歳も年上で、いはばすれ違ひの人生だつたやうです。

 

今日のラム:缶詰を変へてから残さずに食べるやうになり、体重も少しもどつたみたいです。毛並みはいいんですが、触るとごつごつ、骨だらけ、洗濯板そのものです。

 

今日の写真:『夢酔独言』と子母澤寛『勝海舟』。