七月卅日(水)壬寅(舊七月四日) 晴れ、暑い

今日は、東京慈大學病院への定例の通院でした。心臟外科の診察は十時ですが、その一時間前に血液檢査をしなければなりません。それで、またラッシュアワーの電車で通院することになりました。

 診察の結果、いや、よくなつてゐたんです。最近、動悸もしないし、不整脈もほとんど感じません。ましてや、恐れてゐた「動停止」はなく、これでペースメーカーをつけるなんてことは當分去つたといつてよいのでせう。ほつとしました。もちろん妻にはすぐメールで知らせました。

ところが、もう一つかかつてゐる内分泌科のはうが、午後二時三十分からの診察だつたので、その間、仕方なく神保町で時間つぶしをしてしまひました。地下鐵三田線で水道橋驛まで行き、そこから神保町交差點まで歩いたのです。このコースは、國文学コースとぼくは呼んでゐます。日本書房さんと西秋書店さんを訪ねるコースだからです。

日本書房さんは、お堅いですが、掘り出し物も多く定期的に訪ねなければなりません。一方、西秋書店さんは、ちよいとひつこんでゐるんですが、ここも注目です。今日は、影印本の、『定家歌論集』(新典社)と『雑兵物語』(勉誠社文庫)、それに『一言芳談』(和泉書院影印叢刊)です。これはネットで探した時には四千圓してゐたので、約分の一で購入できました。

また、他の書店で、「中仙道紀行」のために、武田信玄に關するものを探しました。が、探し出してみるとなかなか目にとまらないものですね。ブックオフに寄つたら、佐竹申伍『武田信玄』があつたので足掛かり? いや、手懸かりに求めてみました。

それからまた病院に行き、先生と血液檢査の結果だけを確認して、あとはちよいとお喋りをして歸つてきました。歸宅したら、八一四〇歩でした。でも、何だか氣分はよかつたです。

 

今晩から、“ラム追悼散歩”に變へて、“夜のピクニック”としました。夕後、八時に家を出て歩きだしてから、妻とどこまで行こうかと話ましたが、今まで、東へ、北へ、そして南へと向かつたので、今晩は西へ向かつて歩きだしました。

赤門を通り、堀切中央通りと平和橋通りを越えて、荒川に向かひました。リオ動物病院あたりからは寂しくなり、ミヨシ油脂の大きな工場に出くはしたときには、妻と異口同音(?)。このへんは昔は野原(のつぱら)だつたよね、と。たしかに、ミヨシ油脂以外の建物はなく、すぐに綾瀬川の川縁(かわつぺり)でした。妻は、小學校で繪を描きにきたと言ひます。

高速中央環線の下に出ました。川は見えません。左側は住宅地の道路沿ひを南下して行くと、小谷野神社に出會ひました。そしてそのすぐ先はガードが迫り、京成電車が通り、並行して堀切橋にかかる橋脚に直面。なほも南下しました。さうだ、堀切菖蒲園まで行つてみようとなり、歩いてゐると、はじめの信號が、「堀切小橋」とあるので、不思議に思つたら、ここが、かつての堀切橋がかかつてゐた橋のたもとだつたのです。

昔の堀切橋は木造で、川をへだてた向こう岸には東武鐵道の堀切驛が見えました。その回りには木立も伺へて、一幅の墨繪を見るやうでした。さうなんです。橋のたもとには交番がありました。ぼくは、まだよちよち歩きの頃から放浪癖があつて、記憶にはないんですが、一人でふらふら橋まで來たんでせうね。橋のなかばで、見ず知らずの女の人に聲をかけられて交番に連れて行かれ、そこに父が黄色い車體の自轉車で迎へに來てくれたことを思ひ出してしまひました。

いや、菖蒲園はまだ先です。もちろん真つ暗で中には入れませんでした。ふと見ると、「水辺公園」と書かれた矢印がみえたので、この際だから行つてみました。そしたら再び堤防にぶつかり、公園はその向かうらしいのです。何だかSF映画に出てくるやうな建物がそびえてゐるんです。思ひきつて石段を上りました。すると堤防の上に出たわけなんですね。いい風が吹いてゐました。それとともに全貌が見えました。そこは綾瀬川の「堀切菖蒲水門」といふ建物だつたんです。綾瀬川と荒川放水路の間の堤防が、上流部から下流部にはるかにつづいてゐます。荒川側の河原はスポーツができる広場になつてゐるやうです。

東京に來て、といふか帰つてきてはじめにおどろいたのが、懐中電燈がなくてもラムと夜の散歩ができることでした。今晩は、その伊豆の山暮し以来はじめて懐中電燈が欲しいと思つたのでした。でも、遠くの夜景は最高の眺めでした。ここで花火見物ができたら、と思つてしまつたくらゐでした。スカイツリーもよく見えましたが、頭の上は時々雲がかかててゐました。またここは、いいデートスポットですね。中學生のカップルを見て、さすがぼくたちは冷靜でしたが、何だか懷かしい氣分になつてしまひました。

歸り道は省きます。歸宅したら九時三十分、六六九五歩でした。これですからね、“夜のピクニック”としたわけです。はい。

 

今日の寫眞:西秋書店さん。元の堀切橋のたもと。堀切菖蒲園。異樣な水門の建物。堤防から見た夜景。