十一月六日(金)丙戌(舊九月廿五日 晴

 

今日は、新橋驛前SL廣場で開催中の古本市に行つてまゐりました。なにしろこまめに探索することが、歴史のお勉強には缺かせない大事な作業、いや仕事なのであります。ワゴンに詰められ積まれた本の中から、なにが寶物か、その掘り出し物を探すのは、けつこう繊細な觀察力と頭腦の回轉が必要なのでありまして、古本探索は心身の健康のためにもとてもよいのであります。ぼくの健康の秘訣と言つてもいいと思ひます。はい。

 

今日の讀書・・繼續して、羽中田誠著『昭和二十年八月』を讀みました。夜寝る前には、かへつて目が冴えるくらい集中して讀めたのに、日中は、考へ考へ讀んでゐるせいでせうか、あまり進みません。でも、それはそれでいいと思ひます。

考へながら讀んだその中で、「抵抗する『近きより』」の章から、抜き書きします。いいですか、これは、戰時中のことであることをお忘れなく。かの有名な、「冤罪弁護士」といはれた辯護士の正木ひろしさんのお言葉です。

「この編集後記を書いている間に、東条内閣は崩壊し、小磯、米内の連立内閣が誕生しました(補注・・昭和十九年七月)。悦ばしいことです。東条氏については、本誌の第七巻第二号(昭和十八年二月号)で、現時局を担当する資格のないことを痛論してあります。今日になって辞めることは遅きに失しているので、その間の帝国に及ぼした害悪は計り知ることができません。かかる低劣な人物が、権力をほしいままにすることができるところに、現日本の弱点があります。結局民度の低いということが根本的な問題と思います。」

ついでに、もうひと言。これは、著者の羽中田さんが、印旛沼のほとりにをられた正木さんをお訪ねし、沼で獲れたウナギをごちそうになりながら、お聞きしたお話です。

「日本政府が有為の青年をどしどし戦線に送り出し、その生命を消耗させながら、国内では公然と不正を行っている。これを知りながら見過すのは、外地にいる同胞に対し、また後世の子孫に対しても申訳けないと思うんですよ。だから不正をバクロするんです。それと民衆の心を窒息させるのが軍部の独断専行です。権力政治はいけませんねえ。」

どうです。繰り返しますが、これは戰時下の發言なんです。「東条」を「安倍」に置き換へてみてください。まつたく變はつてゐないぢやあありませんか! どうしませう。

 

今日の寫眞・・新橋驛前SL廣場で開催中の古本市と、そこで發見したので改めて購入した山田風太郎の文庫本二册。カバーの圖柄に驚いてはいけません。中身のはうがずつと驚くべき内容なんですから! この『銀河忍法帖』と『忍法封印いま破る』は、山田風太郎の、大久保長安集大成なんです。解説では、「著者は『銀河忍法帖』と『忍法封印いま破る』によって、長安に託して存分に鬱屈したものを洩らしている」と述べてゐます。さて、風太郎さんはどんな鬱憤を「洩らしている」んでせう?

それにしても、ぼくの大好きな半村良さんと山田風太郎さんが、二人して同じ大久保長安について書いてゐるんですね。偶然なのか、いや、お互ひに通じあふものがあつたんでせうね! まあ、まづは讀みかけの『講談大久保長安』を讀んでしまはなくてはなりません。

それと東京新聞朝刊の社説。忘れないやうに、常に、毎日確認しておかなければならない内容です。

 


コメント: 1
  • #1

    森豊治 (金曜日, 06 11月 2015 23:53)

    東京新聞は、最近は読んで居なかったけれど、堂々と、憲法違反の安保体制の拡大化を懸念するなど、確かな目線で持論を展開していると思います。今日の日記に有る通り、東条と安倍を入れ替えても通じる凡夫達、こうゆう人間を選んだ我々を悲しむばかりです。