五月五日(木)丁亥(舊三月廿九日・立夏 晴

 

今日の讀書・・『大和物語』を讀みつづけました。今日は、一〇一段から一〇七段まで讀みました。その中に、藤原滋幹と平中の話が出てきたので、谷崎潤一郎の『少將滋幹の母』(角川文庫)を思ひ出し、書庫から探し出してきて讀みはじめたら面白く、まづ平中と時平が登場です。 

この『大和物語』は、「歌物語」であるわけですけれど、ぼくはくづし字を讀むことに專念し、内容はそんなに氣にしないで讀んできたのですが、今日のところで、胸に響いてくるやうな歌に出會ひました。

 

「くやしくそ のちにあハんと ちきりける けふをかきりと いはましものを」(一〇一段)・・【意譯】後日會ひませうと約束したのにあの時が最後の別れになつてしまひましたね。 

と、 

「ゆくひとハ そのかみこんと いふものを こころほそしや けふのわかれは」(一〇二段)・・【意譯】すぐに歸つてきますよと言ひましたが、明日の命も分からないわたしには、それが最後のお別れになるでせうね。

 

これらは、ひとときの別れが永遠の別れになることの悲しみを詠つてゐますが、ぼくみたいに病氣をかかへてゐるものにとつては、じいんと胸に迫るものがあります。 

その後者の歌の作者は、酒井人眞といつて、『古今和歌集』にも一首取り上げられてゐるんです。が、それがまたいいのです。

 

「大そらハ 戀しき人の かたみかは ものおもふことに なかめらるらん」(七四三)

 

さういふことで、これからは、も少し歌の内容にも心を向けて讀んでいきたいと思ひました。 

 

また、風間真知雄著「耳袋秘帖」シリーズ、妻が圖書館から、第八彈から第十彈まで借りて來てくれたので、また讀みはじめました。 

 

今日の《平和の俳句》・・「毎日のいつもどおりがあたたかい」(十四歳女) 

 

今日の寫眞・・今日の《平和の俳句》の切り抜き。