五月(皐月)廿一日(土)癸卯(舊四月十五日 晴のち一時小雨

 

今日の讀書・・今日は、妻の苦言に追ひ出されたわけではないのですが、やはり寢てもゐられないので、出かけてきました。ちよいと賴まれ仕事があつたのを辭退したあとだつたのですが、やむにやまれず、針を買ひに出たのです。針を買ひに出たのです。針といふのは、布を縫ひ合はせる縫ひ針ではなく、和本を糸で綴じるための針です。 

先日、古本市で、『はじめての和装本』(文化出版局)といふ本を手にしたときから、自分で和綴本といふか和装本を作つてみたいと思ひはじめたところ、なんとも都合良く、〈宮内庁書陵部 畫像一覽〉から、寫本をプリントアウトすることができるやうになつたのです。 

それを、二つ折りにして、いつもはホッチキスですが、それを糸で綴じれば和装本のできあがりです。すでに、『將門記』と『庵ぬし』をプリントアウトしてあるので、早速作つてみたいと思つたわけなのであります。

 

先日來、文房具店にたちよつては聞いてゐたのですが、「とじ針」は手藝店にあると聞かされてゐました。そこで、最近ご無沙汰してゐる東急ハンズを訪ねることにしました。澁谷にも、銀座にも、北千住にもありますが、その中から池袋を選んで出かけたのでありました。JR池袋驛から歩いて向かひましたが、土曜日といふこともあるのでせう、すごい人出です。しかもそのほとんどが若者です。 

東急ハンズ池袋店も押し合ひへし合ひの盛況ぶり、七階の手藝用品賣場で聞いて、やつと手に入れることができたのでした。「とじ針」と、それに「綴じ糸」も求めました。控へていつたメモを見せて、「レース糸などの太めのもの」をさがしてもらつたのです。いやあ、色とりどりで迷つてしまひましたが、和本の現物を思ひ出して、金と銀と群靑色の三つを求めました。 

用をすませたのち、東池袋まで歩いて、都電荒川線で歸路につきました。もちろん、町屋驛前で今川焼きを買ふのを忘れませんでした。

 

ただ寢てゐるより、多少は動いたり歩いたりしたはうがいいことがわかりました。いや、わかつてはゐたんですけれど、寢ながら本を讀むのが大好きで、それで、妻にも嚴しいお言葉をもらふことになつてしまつたわけなのでありまして、どうにか外出し、今日など、八三〇〇歩歩きましたが、それほど疲れませんでした。それで、往き歸りに、「耳袋秘帖」シリーズ第十彈をたつぷりと讀むことができました。 

 

今日の《平和の俳句》・・「戦後とは私の歴史春惜しむ」(七十一歳男)。 

今日は選評も寫しておきませう。「〈いとうせいこう〉教科書に載っている人ごとではない。自分自身の血の通った歴史を、私たちは生きている。そして影響を与える。」

 

今日の寫眞・・和装本作製に必要な針と糸。池袋東急ハンズ前。そして都電の中からの一枚。