六月二日(木)乙卯(舊四月廿七日 晴

 

今日の讀書・・『大和物語』のうち、百十七段「生田川」と百十八段「蘆刈」を讀みました。この兩段は、『大和物語』の中でも最長の物語でありまして、短編小説の面白さを味はふことができました。 

これまでの段は、宇多天皇とその后、温子のサロンにおける「歌語りの世界」だつたのが、この段から、いきなり當時の庶民生活が舞臺となりました。 

この兩段は、また内容的にはつづいてゐる、といふか、對照的な話と言ひ換へてもいいかも知れませんが、とても切ない話です。百十七段「生田川」のはうは、「二人の男の愛にさまよう女の姿が描かれている」のに對し、百十八段「蘆刈」は、生活苦のために別れて暮らしはじめた夫婦のうち、妻は宮仕へする男の後妻に迎へられて幸せに、それでも前の夫への愛が忘れられず、再會はすれども悲しい別れが待つてゐるといふ、まことに身に沁みるお話であります。 

まあ、これらは、宮廷のサロンで語られた話でもありますから、穿つた言ひ方をすれば、豐かな生活に飽きた、無い物ねだりのお涙ちようだい物語なのでせう。だつて、宇多天皇の后温子は、當時の實質的最高權力者藤原忠平の妹ですからね。その回りにどんな人々が集まつてゐたかが想像できます。 

さういへば、いづれ讀むつもりの『源氏物語』だつて、道長の娘のサロンで書かれた物語ですからね、それなりに意識して讀まなければならないと思つてゐるところなのであります。 

 

今日の《平和の俳句》・・「桜花(さくらばな)散ることだけが褒められた」(八十六歳女) 

〈金子兜太〉戦死だけが妙に称賛されるのが戦争。桜花は満開こそ見事のはず。 

 

今日の寫眞・・今日の新聞の切り抜き。