六月廿三日(木)丙子(舊五月十九日 雨のち

 

今日の讀書・・上杉聰著『日本会議とは何か 「憲法改正」に突き進むカルト集団』の後半を讀みました。菅野完著『日本会議の研究』でははつきりとしなかつたことがはつきりと分かつきて、ますます緊張してきました。 

前半では、現憲法は「押しつけ憲法」ではないことが克明に説明されてゐて、心から納得いたしましたが、後半では、教科書問題を取り上げてゐて、これまた目から鱗が何枚も落ちました。

 

二〇一五年十一月十日、武道館で開かれた「美しい日本の憲法をつくる国民の会」(實態は宗教團體の連合體である「日本会議」)に寄せた安倍総理のメッセージによると、「宿題とされていた投票年齢の18歳への引き下げが実現し、憲法改正に向けて渡っていく橋は整備された」と語つたといふのです。ぼくは、「投票年齢の18歳への引き下げ」は、むしろ意識を持つた靑年たちの參加によつて政治状況は改善といふか希望がもてるのではないかと、漠然と考へてゐました。 

ところが、魔の手は一段と上手を行つてゐました。教科書です。歴史教科書によつて中學生・高校生のうちから「洗腦」させようとしてゐるのであります。18歳からの兵役も視野にいれて、「日本会議」の教科書を發行する、そのためにだけ作られた「育鵬社」を通じて、魔の手をのばしてゐるのであります。

 

そもそも、「日本会議」の發行する教科書は誤りが多いのであります。内容は省きますが、上杉さんは、「育鵬社教科書は重大な虚偽を書いている。文部科学省の検定官たちは、少なくともこの虚偽を修正する力のない人たちか、もしかしたら偏った考えの人たちであることが分かる」。「これをチェックできなかった検定官は非難されるべきである」、と書いてゐます。 

どんな内容か。實は去年の暮れに求めた本が手元にあるので、その「目次」を紹介します。書名は、『ここまでひどい! 「つくる会」歴史・公民教科書』(明石書店)です。

 

・消された「慰安婦」・「南京大虐殺」 

・読んでびっくり 天皇中心の「神の国」史観 

・ゆがめられた加害の歴史─侵略・植民地支配 

・どこまでも国家中心、見えない女性と民衆 

・戦争肯定、めざすは戦争のできる国づくり 

・これはひどい! 伝統主義と女性蔑視 

・そんなに大切? 人権より国権

 

まあ、ぼくはどちらかといふと苦手な分野ですので、今までもあまり氣にしてはゐませんでしたが、この一項目ごとを讀むと、たしかに目も當てられない内容です。これが中高生に敎へられてゐるとするならば、「憲法改正に向けて渡っていく橋は整備された」と言はれてもしかたないでありませう。 

しかも、この「育鵬社教科書」がどんな手段で學校やら教育委員會やらに採用されるやうごり押ししてゐるか、その部分を讀んでゐて、ぼくはドキドキはらはら、血壓があがつてしまひました。のほほんとしてゐられるのは、のほほん民主主義憲法があればこそでありまして、改憲どころか、カルト的思想集團に國會が乗つ取られた場合には、もうのほほんとはしてゐられない、どころか、いつもイライラさせられ、不安と心配な生活状況に陷るのは目に見えてゐます。 

 

今日の《平和の俳句》・・「鎮魂に敵味方なしデイゴ咲く」(六十四歳男) 

〈金子兜太〉 島民十数万人を無残に失った沖縄戦を忘れるな。敵を労る気持ちも。 

〈いとうせいこう〉 恩讐を超えて慰霊する。広島でも同じ心の慰めが起きますよう。 

〈中江有里〉 軍人も民間人も日本人もアメリカ人も、みな同じ尊い命。 

 

今日の寫眞・・「日本会議の組織」と「日本会議による運動と課題別系列組織」表。「日本会議」は「右翼運動のデパート」と言はれてゐます。表面的な動向だけではわからない「日本会議」の実態を表す表。 

『ここまでひどい! 「つくる会」歴史・公民教科書』(明石書店)と、夢枕獏著『陰陽師』(文春文庫) 

富士正晴著『パロディの精神』(平凡社選書)と『二勢物語』(和泉書院影印叢書刊)。 

『パロディの精神』は、前半は、烏丸光廣について、とても面白く讀むことができました。江戸幕府開府當時の公卿と武士との關係がなんとなくわかつてきました。ところが、殘りの五分の三は、「打付ヶ訳 仁勢物語」でありまして、これは、『伊勢物語』のパロディなのでありますね。著者は、ご存じ烏丸光廣さんといふことになつてをります。 

調べましたら、その影印本がありました。すぐに取り寄せ、せつかくですから、富士正晴譯とくらべながら讀んでみたいと思ひます。