八月二日(火)丙辰(舊六月卅日 

 

入院生活第五日目。 

今朝は激しい雷の音で目覚めました。でも、6時半頃にカーテンをあけたら、すでに青空が見えはじめてゐました。 

さうでした、昨夜、一昨夜来てくださった整形外科の先生が、昨日撮つた左手のレントゲンの結果、もともとあつた親指の関節炎が原因ではないかと、それだけ傳へに來たみたいに、言ふや否や、すぐ去つてしまつたので質問するひまもありませんでした! 

まあ、一昨夜もお傳へしたのですが、長年木工をしてゐて、作業するときには作品を固定するのに左手親指を酷使してきたので、それが今になつて現れたのかなと独り合点するしかありませんでした。 

痛み止めはのまなくてすみましたが、触れれば痛いので、湿布薬をいただいてはつてゐます。冷やつとして気持ちよく、痛みもだいぶうすらいできました。

 

朝食はパン。しばらくして、心電図とレントゲン検査に行き、昼食はまた焼き魚! 

ふとテレビをつけると、「バルジ大作戦」がはじまるところで、つい見入つてしまひました。前に見たことがある映画ですが、よく見るとこれは反戦映画だなと思ひました。ドイツ軍の戦車隊を指揮する大佐とその付き人との会話に、この映画の主題が克明に描かれてゐました。 

 

ところが、その映画を見てゐる途中に妻がやつてきて、久しぶりにのめり込んで見てゐたので、対応に苦慮しました。 

そこで、苦肉の策で、妻にコーヒーを買ひに行つてもらひました。が、すぐにかへつてきたのでテレビを消し、我が家の難問について話し合ふ、といふか話しをよく聞いてあげました。実際に動くのは妻ですので、ぼくは聞いてあげることしかできませんが、まあ、母が存命中は仕方ないことで、二人して自由になれるのはそれからのことのやうです。 

ところで、妻がきたからではないでせうが、ふと気づくとからだかとても軽くなつたのです。起きあがるにしても、トイレに行くにしても、どこかかばいながら動いていたのが、ふだん家でごろごろしていて起きあがるのとかはらない感じなんです。 

むろん、左腕の動きには気をつけていますが、これでよくなつてくれればいいなと思ひました。 

歩いてみたらさらにはつきりしてきました。まだ病棟からは出てはいけないやうですが、八階にあるレストランに行つてステーキでも食べたい気分です。

 

ところで、肝心の心臓なんですが、ペースメーカーは脈拍を上は130から下は50までをキープするやうに設定されてゐるやうで、ただ不整脈との関係がはつきりしません。まだ時々起こつてゐますから、本格的治療はこれからなんでせう。

 

そんなこんなで、けつこう気が散ることの多い一日でしたが、やつと夢枕獏著 『陰陽師 龍笛ノ巻』 (文春文庫)を読み終へることができました。 

 

今日の寫眞・・便利な配膳車。一枚のトレーの右と左とが、保温と保冷とが同時に保たれるといふすぐれもの。それと、晝食の焼き魚とベッド回り。