八月十三日(土)丁卯(舊七月十一日

 

夕べは点滴注射と酸素吸入のおかげで息苦しさがなくなり、楽に呼吸ができやうになりました。肺の中の水も少なくなつたためでせう。 

また、ラジオを持参したので、何度も目覚めたけれども聞きながらまたすぐに眠ることができ、点滴注射と尿管と酸素吸入と血中酸素量をはかる管やコード、心電図モニターのコードでがんじがらめではありましたが、気分はさう悪くない一夜をおくることができました。 

 

どういふわけか、朝食は抜き、水で口と喉を潤すついでに朝の薬をのんだだけ。10時頃レントゲンを撮りに行きましたが、車椅子に乗るのに、尿の管と他のいくつものコードを取り外したりまとめるのが大変。戻つてくると妻が来てゐたので、パジャマに着替へることができた。 

妻が本やウォークマンや箸、それに身の回りの物などを持つてきてくれました。 

11時には、こんどは予約してあつた整形外科外来から呼ばれ、車椅子でまた苦労して身の回りのコードを整へて出かけました。前回と同じ若い医師に診ててもらつたつたので、病名を尋ねたところ、「母指CM関節症」といふ病名でした。南鄕さんは、「第一中手骨骨折」と診断してくださつてゐましたので、「えッ」と思ひましたがここは黙つてゐました。 

それで、固定はせずに、様子をみて、それでも必要ならば取り外しができる固定装具を作りませうといふことになりました。といふことは入院中に、様子をみることかできさうです。 

 

昼になりましたが、昼食も抜き。妻も帰つていきました。 

そののち担当医師の徳竹先生が来てくれて話すには、昨夜診てくださつた緊急外来の伊藤先生が一週間から二週間かかりますとおつしやつたのに対して、来週の半ばには退院できるでせうと言ひました。まあ、楽観視しないでゐることにします。 

点滴注射はすみましたが、尿管は挿入されたまま。利尿剤を投与されたので、昨夜からたくさんの尿が出ました。 

こんどの心不全は肺に水が溜まつたためだつたのか、肺に水が溜まるやうな心不全だつたのか、よくわかりませんが、道理で息苦しかつたはづです。 

夕食から食べていいことになりましたが、酢豚らしきものをどうにか食べることができました。また苦行がはじまりさうです。 

さう、今日は半ばうとうとしながらも、夢枕獏さんの『陰陽師 夜行杯の巻』を読み上げることができました。