九月二日(金)丁亥(舊八月二日 晴

 

やはり夕べもさう。これで三日連續であります。夜中にお腹が空いて空いて、目の前に「うな重」がちらついて眠れないのです。それでゐて、朝になつてしまふと空腹感がなくなり、むしろ食欲がなくなつて、朝食はなかなか喉を通らないのであります。 

そろそろ禁斷症状が出てきたのかと思ひます。それで、今日は思ひきつて、昨日の餘勢を驅りて出かけてみることにしました。神保町です。八月は一度も訪ねることができませんでした。古本屋をのぞきたいなんて氣持ちがおきなかつたからですが、まあ、今日もそれほど行きたくはなかつたのですが、なにせうなぎ屋といへば、ここのところ神保町のかねいちさんで、それでついでに東京古書會館の古書市にも顔を出しました。 

案の定、掘り出し物を嗅ぎ分ける能力はまだ眠つてゐるやうで、どうにか手に取つたのは、中野三敏先生の 『近世新畸人伝』(岩波現代文庫 二五〇圓) と夢枕獏さんの 『陰陽師 醍醐の卷』(文藝春秋 一〇〇圓) の二册だけでした。

 

それからかねいちさんを訪ねたのですが、一時を少し回つたところといふのに、店仕舞ひ寸前に店に飛び込むことができました。すでに他のお客は歸つたあとだつたので、上のうな重を一人でゆつくり食べることができて、大滿足をいたしました。これで、夜中に目を覺まさないでくれるといいのですが。さうだ、目を覺ましたら、昨日靑木君がくれた「うなぎパイ」を食べることにします。はい。 

とにかく無事に家に歸り着くことができました。少しづつ、また出かけて體力をつけ、氣力も養つていきたいと思ひます。 

 

今日の讀書・・『蜻蛉日記』を讀み進むにあたり、數ある參考書の中から、田辺聖子著 『蜻蛉日記をご一緒に』(講談社文庫)を選んで併しはじめました。これは、カルチャーセンターでの講演をまとめたものなので、よくわかるだけでなく、内容も濃くて面白いのです。 

 

今日の寫眞・・店仕舞ひ寸前のかねいちさんの店内と上うな重。 

中野三敏著 『近世新畸人伝』(岩波現代文庫) と夢枕獏さんの 『陰陽師 醍醐の卷』(文藝春秋)。