十一月廿一日(月)丁未(舊十月廿二日・下弦 曇天のち小雨

 

今日の讀書・・飯嶋和一著 『汝ふたたび故郷へ帰れず』 を讀み終はり、ちよいと重苦しい氣持ちにさせられました。でも、不快ではありません。表題の作品と、『スピリチュアル・ペイン』 と 『ピロミス・ランド』 の三作とも、「死んだような日常からの脱出、再生がテーマ」ですから、むしろ眠いのを叩き起こされた、さういふ氣分だと言つたはうが適切かも知れません。 

戰爭や近代化によつてもたらされた影、といふか傷を、人はいかに癒すことができるのか、ぼくは、それは結局は一人の人間がその人生を通して、ひとりで「脱出、再生」してゆくしかないといふことを敎へられたやうな氣がします。 

 

『日本紀略』 今日も讀み進んだのはたつた一年分。應和四年、いや、七月に改元したので、康保元年(九六四年)の一年だけでした。けれども、また収穫がありました。 

「一種物(いつしゆもの)」といふ行事、といふか樂しみがあつたことを知りました。 

 

十月廿五日丁卯 是日、於左近陣座、諸卿有一種物。魚鳥珍味毎物一兩種。於中重、調備之。參議雅信、重信。儲菓子飯。本陣儲酒。自殿上藏人所、給菓子等。左大臣實賴早退出、不預此座。少納言、外記史同預之。 

十二月二日甲辰 諸卿、於左近陣座、有一種物事。 

 

參會者が、酒や肴などの一品料理を持ち寄つて開く宴會や酒盛りをすることを言ふのださうです。魚鳥は分かりますが、珍味とは何でせう。 

この記事によれば、左大臣の實賴さんは、仕事が終はるとさつさと歸つてしまつたやうで、一緒に樂しめなかつたやうです。また、暮れの十二月にも行はれてゐます。きつとこの手の宴會大好き人間がゐたんでせうね。 

それで、どうも、この記事が、「一種物」についての初出であるやうで、典を調べると、この本文が必ず引用されてゐます。

 

參考に申し上げますと、漢文の讀み方ですが、句讀點を參考に、切りながら文字をたどると、けつこう書いてあることは分かるものです。返り點がうまくつけられませんので、そのかはり句讀點が返り點の役目を負つてゐるとお考へください。まあ、ちよいとめんどうですけれどね。 

 

今日の寫眞・・飯嶋和一著 『汝ふたたび故郷へ帰れず』 と、つづいて讀む豫定の第二册目の 『雷電本紀』。それと今日のココちやん。なんとなく艶めかしいのであります。