十一月廿六日(土)壬子(舊十月廿七日 晴

 

〈東京近郊紅葉めぐり(二)〉 

 

さて、五島美術館は、環八通りを大井町線に沿つて左折した先にありました。電車の線路が左崖下に走つてゐましたので、電車を撮らうとかまえたら、なんと陸橋の先、遠くの山の上に頭を出した富士山が見えたのでした。逆光でしたが、どうにかその姿をとらえることができました(寫眞一)。そして、その陸橋を左手に渡つたところが、五島美術館でした(寫眞二、三)。

 

現在、「特別展 平安古筆の名品」が開かれてゐて、これを見たいがためにぼくが見學を提案したこともあつて、いささか熱心に見て回りました。いや、回るほど廣くはありませんが、たくさんの女學生が學びに來てゐて、それでも肩越しに丁寧に讀み進みました。 

くづし字を學んでゐるぼくにとつては、まるで試されてゐるやうでしたが、それでもひとつの短册を讀み通せると、喜びより、快感でしたね。それで、時間を取りすぎてしまひさうだつたので、年代的には、「九〇〇年頃~一一〇〇年頃」までにして、あとは流して見るにとどめました。 

そのなかで、心に響く歌が目につきました。「くろかみにしろかみましりおいたれとかかるこひにはまたそあはさる」。『元暦校本万葉集切(有栖川切)』といふのださうです。はい。

 

二時に入館し、三時半に出口で集合といふことで、館内外各自自由見學でしたが、ここの庭園が廣くて、しかも紅葉の盛りでありまして、散策のよい〆となりました(寫眞五)。 

 

*補注二・・「五島美術館(ごとうびじゅつかん)」 東京都世田谷区上野毛(かみのげ)にある美術館。1960年(昭和35年)418日に開館し、所蔵品は日本・東洋の古美術を中心に国宝5件、重要文化財50件を含む約5000件にのぼる。保存上の理由から常設展示はありませんが、分野別に所蔵品を紹介する展覧会を年56回、特別展を年12回程度開催。ちなみに、国宝「源氏物語絵巻」は毎年春に、国宝「紫式部日記絵巻」は秋に、それぞれ1週間程度、公開しています。常設はしていませんので、展示については美術館に問い合せが必要です。 

また、五島美術館の庭園は、多摩川が武蔵野台地を侵食してできた傾斜地にある為、山あり谷ありと自然がそのまま大事に残されて、東京とは思えないほど自然が溢れています。6000坪ほどの庭園には、伊豆や長野の鉄道事業の際に引き取った石仏や燈籠などがあちこちに置かれ、赤や黄色の色とりどりの紅葉の中に、ひっそりと佇む燈籠や石仏などが顔を覗かせます。菖蒲園・瓢箪池・蓬莱池・赤門・大日如来などと見所も多数あります。 

 

出口の前は駒澤通りで、そのまま道なりに二子玉川驛まで歩きました。西日がまぶしいくらゐの良い天氣。時間はまだ早かつたのですが、二十四時間營業の磯丸水産といふ食堂で會食。生ビールと刺身が美味しかつたです(寫眞六)。

 

二子玉川驛に來たのは何年振りでせうか。たいへんな變はりやうでした。田園都市線は半臧門線となり、さらに東武道に乘り入れ、また押上驛で京成線に乗り換へできますから、藤が丘へ歸る大塚さん以外はみなそろつて乘り込み、ほろ酔い氣分で歸路につくことができました。めでたしめでたし。 

六時半歸宅。一日で、一六七〇〇歩でした。 

 

今日の讀書・・昨夜讀みはじめた志水辰夫著 『疾れ、新臧』 (徳間書店) 、一気に讀みんでしまひました。ロードムービーといふ言葉がありますが、さながらロードストーリーでありまして、讀み始めたらとまらない内容になつてをります。 

 

今日の寫眞・・讀み終はつた、志水辰夫著 『疾れ、新臧』 (徳間書店)。 

(寫眞四)は、古本市で求めた「古筆」のレプリカ。三〇〇圓でした。