十二月十四日(水)庚午(舊十一月十六日・望 雨のち曇り

 

今日はぼくのご公務、通院です。正々堂々と外出してまゐりました。今日の診療科目は、心臟とは別に、すでに症状も檢査の値にも特別な變化がないのに、念のために診ていただいてゐるのであります。醫師もそのことは承知で、ですから、次回は、來年の三月になつてしまひました。いへ、なんの問題もありません。 

ありがたいのは、ここでは、コレステロールその他氣になる値が示されるので、健康管理にはとても役立つてゐるのであります。感謝。 

 

今日の讀書・・實は、昨晩、水戸黄門さまの 『大日本史』 「列傳」中の「叛臣・平將門」を讀みました。どのやうに「徹底的に批判を加えた」のか確かめたかつたためです。が、ことさら悪く書いてゐるとは思ひませんでした。ぼくが叛臣將門になれてしまつてゐるからでせうか。まあ、「英雄として追慕する声」とは對照的でしたが。 

といふのも、『將門記』の冒頭などに明らかなやうに、その戰闘場面の殘酷さはまるで野蛮、讀むのにも目を背けるたくなるほどです。しかしそれは、戰の實態なのであつて、それに目を背けたら、歴史に蓋をするしかなくなります。 

問題は、それを、どう評價するといふことになるわけですが、勝てば官軍となるご時世です。それゆえに、將門をはじめとして、「英雄」かも知れない人びとを、時の權力と対峙したからといつて、といふか、そのやうに叛臣と決めつけてしまふところが怖いです。かういふ決めつけを踏み臺にして歴史がねじ曲げられていく恐ろしさですね。明治維新後の日本歴史を見ればそれは明らかであります。 

 

さて、それで、織田完之著 『平將門故蹟考』 が途中なのですが、それはぼちぼち讀んでいくことにして、今日から、フィールドワークさながらに、『將門記』 の原文と、村上春樹著 『物語の舞台を歩く 将門記』 (山川出版)とを讀み合はせながら、地圖の旅といふか、地圖で合戰場所等を確認しつつたどつていくことにしました。 

そのために、病院からの歸路、神保町の三省堂に寄つて、笠間、桜川、結城、筑西、下妻、つくば、以下、「ちばらぎ」と呼ばれる、坂東、常総、つくばみらい、守谷各市の「都市地図」を買ひ入れてきました。 

ぼくはかういふ作業は得意なんです。さすれば、『將門記』 の舞臺がどのやうに展開したかが、立體的に見えてくるでせう。 

 

〈將門紀行 その前哨戰(三)〉 

 

「桔梗塚」 から再び「將門口ノ宮神社」にもどり、なほ通り過ぎて進むと。赤い鳥居が見えてきました。八幡神社ですね。そこに通りかかつた配達途中の靑年に、神社の參道を通り抜けて、大佐倉驛に抜けられますかと聞いたのですが、地元ではないから分からないと言はれました。 

それでも進むのが冒です。田舎の神社にしては長すぎる杉木の參道を歩いていくと、何本か倒木があり、さらに先にやつと社が見えてきました。 

ものの本によると、「倉市将門町にある八幡神社は、一説に、平良将が守護神として勧請し、居館を構えたといわれています。また、ここも将門山の一郭であり、「瀧夜叉姫」(将門の娘)が、父・将門の恨みを晴らそうとしてこの地に来て、将門山に篭もり 「蝦蟇の妖術」 を習っていたという伝説が伝わっています。」 

とあつたのですが、いやあ、この 「蝦蟇の妖術」 つて何ですかね。初耳です。

 

幸ひ、社のわきの森のなかに、落ち葉を敷き詰めやうな細道が裏につづいてゐて、すぐに驛に戻つてくることができました。なんだか、夢のやうな世界から現實に引き戻されたやうな違和感をえましたね。まことにのどかな、山村としか表現し得ない風景にもつと浸つてゐたかつた。 

以上、傳説的史跡探訪ではないかと言はれさうですが、なんと言はれやうと、忘れられないすばらしい探訪になりました。(つづく) 

 

今日の寫眞・・『大日本史』 「列傳」中の「叛臣・平將門」の頁と奥書。 

今日は、赤穂浪士討入りの日です。病院の歸りに、舊田村町の道路際にある、「淺野内匠頭終焉之地」碑を訪ねてきました。 

それと、以前から岩波文庫の 『玉葉和歌集』 を探してゐました。岩波専門店では、文庫本なのに二五〇〇圓もしてゐるのです。悔しくて、いつか安いのを見つけようとあちこち目を光らせてゐたのですが、今日、びつくりするやうなことがあつたのです。 

三省堂のはうから、一軒ごとにひやかし半分で歩いてきて、一誠堂にさしかかつたときのことです。ここの店員さんはとても品がよくて、ぼくは何べんかをかけたことがあるので顔も知つてゐます。そこで、店頭のワゴンを前にして、ぼくが、岩波文庫の 『玉葉和歌集』 を探してゐることをひとこと言ふか言はないうちに、これでせう、と器用に指をくねらせてそのワゴンに竝べられた本をさしたその指先にあつたのです。『玉葉和歌集』 がです。いやあ、ぼくはぞくぞくとしてしまひました。手品でもやられたのかな、と思へるやうでした。しかも一〇〇圓! 

古本探しの醍醐味ここにありと叫びたい心境であります。はい。 

最後は、地圖をそばに讀み始めた、『將門記』 の原文と、村上春樹著 『物語の舞台を歩く 将門記』 (山川出版)。 

おまけは、將門山の八幡神社。