十二月廿六日(月)壬午(舊十一月廿八日 曇りのち 晴、曇り

 

今日の讀書・・妻が、ノラネコ活動で早く家を出るといふので、ぼくも早起きをさせられまして、おかげで讀書もはかどりました。 

織田完之著 『平將門故蹟考』 が途中でしたので、將門紀行 現地探訪》 を書くのと平行に讀みだしました。すると、なんと、難しい内容だと思つてゐたのに、出てくる地名や神社が、昨日讀んだ、七海さんの 『平將門魔方陣』 で語られてゐた神社ばかりなのです。まあ、それはほんの數頁にわたつてだけですけれども、ウラがとれた感じがして、ちよいと自信をとりもどすことができました。 

 

將門紀行 現地探訪》(三)

 

生きてゐたのは、モニュメントや將門公のレリーフだけではありませんでした。連絡してきていただいたタクシーの運ちやんが、大河ドラマがどうのかうのと喋りはじめたのであります。祭りに來た加藤剛をだれだれのタクシー會社の車に乘せたとかなんとか、昨日の出來事のやうにご報告なされたのにはまゐりました。 

なんと、先ほどの 「將門公苑」 は、NHKの大河ドラマで取り上げられたのを記念して作られた「公苑」のやうです! 

 

が、そんなお話をうかがつてゐて、さしま郷土館ミューズを先に見たはうが順番としてはいいだらうといふことになつて、すぐに方向をかへて向かつてもらひました。期日が迫つてゐることに氣がついたからでもあります。坂東市の北部、かつての猿島郡の中心部だつたところのやうです。 

餘談ですが、地圖によると、この近くに、長塚節の生家や歌碑があるやうなんです。が、どなたも話題にしませんので、訪ねることはかなひませんでした。はい。 

 

さて、さしま郷土館ミューズには、約一五分で到着。だだつぴろい平野に點在する小山のひとつの上のご立派な建物が目的の資料館でした。 

入館は無料。でも、まづはじめに資料を三册買ひ求めました。で、展示の内容ですが、いやいやたいしたものです。入場無料にしては見應へもあるといつてよいでせう。「坂東市が新たに制作した平成版の『将門記』を公開し、あわせて郷土の英雄・平将門の史跡や各地の将門伝説を紹介します。」と謳つてゐる通りです。 

それで、目玉の 『“平成版の坂東市本”将門記』 ですけれど、まあ、まづ坂東市の言ひ分を聞いてみませう。 

 

*ミューズ企画展 初公開! “平成版の坂東市本”将門記の制作と公開 

『将門記』は日本最初の軍記物語とされ、平将門の乱の顛末を記述する唯一の史料であるとともに、古代坂東の景観や地名を記録した第一級の史料でもあります。『将門記』は二つの写本が現在に伝えられていますが、冒頭部分の欠損と写本による誤字脱字のため、完全なものではありませでした。 

坂東市では、『将門記』研究の第一人者である村上春樹氏と小林保治氏の監修のもと、最新の研究成果を踏まえて誤字脱字を加筆訂正した「漢文」に「読み下し文」と「現代語訳」を加えた三種類の現代版『将門記』を作成しました。 

さらに、この三種類の現代版『将門記』を市内在住の初見太清氏(漢文)、染谷曠邨氏(読み下し文)、平勢小喬氏(現代語訳) の三氏に書写いただいたのが『坂東市本将門記』巻子本全9巻です。 

今回の展覧会では、新たに作成した『坂東市本将門記』を、坂東市役所新庁舎完成(平成28111日開庁)を記念し、展示公開いたします。 

 

でも、大きな聲では言へませんが、これつてほんとうに必要なの、といふ感じでした。「眞福寺本」と「楊守敬本」の二つの寫本があれば十分と思ひますけどね。まあ、町興しとしては、これ以上の目玉商品はないわけで、氣持ちはわかりますよ、でもね、つていふ感じは否めませんでした。はい。 

しかし、その他の、「錦絵に見る将門伝説」 の展示は面白かつたです! 「相馬の古内裏」 とうたはれた畫なんて、きつと誰しも一度は見たことがあるのではないでせうか。ぼくは、この畫、將門だつたのだあ、と認識を新たにさせられました。歌川國芳の畫です。壓倒的な凄みがありますね。「将門の娘・滝夜叉姫が妖術で骸骨を出現させ追手に立ち向かう場面」です。(つづく) 

 

補註・・『相馬の古内裏』 江戸時代後半に読本作家の山東京伝によって書かれた『善知鳥安方忠義伝(うとうやすかたちゅうぎでん)』により歌川国芳が描いた浮世絵。 

『善知烏安方忠義伝』のあらすじは次の通り。承平天慶の乱(935-941年)で朝廷に反抗して新皇を称した平将門が討ち取られた後、その娘の滝夜叉姫(たきやしゃひめ)は、父の遺志を実現するため兵を集め、妖術を用いて妖怪どもを操る。大宅太郎光国(おおやたろうみつくに)という勇士がこれを討伐しようとして、滝夜叉姫の繰り出す妖術に苦しめられながらもついに勝利する。 

「相馬の古内裏」は、この物語の中の、滝夜叉姫が呼び出した骸骨の妖怪が大宅太郎光国に襲い掛かる場面で、原作では等身大のたくさんの骸骨が現われるところを、歌川国芳は1体の巨大な骸骨として描いている。ヨーロッパの医学書の骨格図に基づいた非常に写実的な骸骨はそれまでの浮世絵には無い凄みを画面に与え本作品を国芳の傑作の一つたらしめている。 

 

今日の寫眞・・一枚目はさしま郷土館ミューズ全景。 

二枚目は、新たに制作された三種類の「坂東市本将門記」巻子本や数多くの関連資料が展示された企画展会場の一部。 

三枚目は、その中の、平將門坐像。これは國王神社藏のもので、茨城県指定文化財ださうです。「衣冠束帯姿の寄木造坐像。將門の三女・如藏尼が地蔵菩薩に帰依し、將門の苦患を助けようと一刀三拝して刻んだといわれる」。 

四枚目は、今讀んでゐる、『平將門故蹟考』 の著者、織田完之(おだかんし)について。「將門復権に尽くした織田完之と岩井の將門史跡」と題したパネルです。 

五枚目は、歌川國芳の畫 「相馬の古内裏」 です。 

六枚目は、これまたなんとも趣のある家、といふか神社の寫眞。「將門の胴塚」です。延命院にあるといふので、のちほど訪ねることにしました。