正月(睦月)十一日(水)戊戌(舊十二月十四日 晴

 

今日の讀書・・今度こそ 「血沸き肉躍る面白本」 をと思つて手に取つたのは、松本健一著 『真贋 中居屋重兵衛のまぼろし』 (幻冬舎アウトロー文庫)でした。それが昨夜のこと、豫想通りの面白さに、なかば興奮して夜更かしし、今日もそのつづきに引き込まれ、かりんとうをかじりながら、一氣に讀んでしまひました。 

思ひ返せば、松本健一の著作ではづれたものはありませんでした。『開国のかたち』 と 『藤沢周平が愛した静謐な日本』 だけですけれど、面白かつた。それで、『評伝 佐久間象山』、『幕末の三舟 海舟・鉄舟・泥舟の生きかた』、『幕末畸人伝』もそろへてあるのですが、手ごろな文庫本ですまさうとしたその結果が、大圖星。 

長くなりますが、五木寛之さんの解説から引用しておきます。

 

「月並みな文句だが、『真贋』 は、近来まれに見る刺激的な一册である。 

ここで一册という曖昧な表現をあえて使ったのは、この作品を何と呼べばよいか、一瞬とまどったからだ。 

〈中居屋重兵衛のまぼろし〉と副題がそえられているが、小説ではない。文芸作品、またはフィクションの範疇に入れてしまうには、あまりにも精緻な論考である。しかし学問的な研究書ともいえない。それにしてはミステリアスな面白さにあふれすぎている。エッセイと呼ぶには重厚すぎるし、批評と呼ぶには人間の情念の不思議さが濃厚に行間に漂いすぎているようだ。 

あえていうなら、それらの全ての要素を一気飲みして体内で発酵させた、想像力の冒険とでも称すべきだろうか。 

これは中居屋重兵衛という実に興味ぶかい歴史上の人物の生涯と、その関係資料のコレクターである 〈中山文庫〉 主人とにまつわる松本さんの知的追求のドキュメントであると受けとめてもいいだろう。」

 

と、まあ、これだけ説明されなければ多少なりとも分かつていただけない内容でありました。いや、そんぢやうそこらの面白本とは質がことなりましたね。あ~あ、美味しかつた!

 

今日の寫眞・・松本健一著 『真贋 中居屋重兵衛のまぼろし』、その他。 

それと、ネット注文で届いた、小島政二郎著 『小説 永井荷風』 (ちくま文庫)と、中野三敏先生お薦めの、横山重著 『書物捜索 上』 (角川書店)。これも面白さうです。