正月廿一日(土)戊申(舊十二月廿四日 晴

 

今日の讀書・・今日は、古本漫歩。ちよいと調子が思はしくなかつたのですが、寢てゐればよけいに氣になるので、飯嶋和一著 『神無き月十番目の夜』 を持つて出かけてまゐりました。先日來滯在しゐた弟と新御茶ノ水驛まで一緒に行き、美術館へ向かふ彼と別れて、東京古書會館を訪ねました。 

まづ目に留まつたのは、反町茂雄さんの本でした。『日本の古典籍―その面白さその尊さ』 です。この方は、知る人ぞ知る方で、ぼくも最近知ることになりました。どんな方か、人名事典を參考に・・・。 

 

反町茂雄 そりまち-しげお 19011991 昭和時代の書誌学者、古書籍商。 

明治34828日生まれ。昭和2年東京神田の古書店一誠堂書店に東京帝大出の店員としてはいる。7年店舗をもたない目録販売の古書肆(しょし)弘文荘を設立する。埋もれた古典籍の目ききとして知られ、松尾芭蕉の「貝おほひ」、「為家本土佐日記」などを発掘した。平成394日死去。90歳。新潟県出身。著作に「日本の古典籍」「一古書肆の思い出」など。 

【格言・営業方針】借金はすまい、人は傭うまい、安い本・平凡な本は扱うまい。 

 

つづいて、銀座松屋で開催中の 《第33回 銀座古書の市》 を訪ねました。「キャッチフレーズは・・・昔へ帰ろう、子供に帰ろう  古典籍、書画からモダニズムまで専門16店舗の古書の祭典。書籍はもちろん、掛軸、絵画、紙モノ、彫刻、その他ありとあらゆる趣味のモノが。」といふものでした。早稻田通りの五十嵐書店さんも出店されてゐて、ご主人とお會ひしましたので、「一桁○が多いですね」と言つたら、靜かなお聲で、「あっちとこっちは違うからね」と諭されてしまひました。 

たしかに、ここは古書市の老舗といつた感じで、和本でも、端本はほとんどなく、揃ひものばかり。『一休諸國物語』 なんか、目が飛び出てしまひました。もしかして、反町さんも關係してゐた古書市かも知れません。 

 

で、目の保養はそこそこにして、次は中央線で吉祥寺に向かひ、《吉祥寺パルコの古本市》 に行きました。「若手店主が営む古書店12店舗による、ワゴン22台の即売会です」といふ、まあ、新本の古本がほとんど。でも、手に取つた、洲之内徹の 『絵のなかの散歩』(新潮文庫) はぼくには掘り出しものでした。 

これは、すでに讀んだ 『気まぐれ美術館』 と 『帰りたい風景』 との間に納まるべき第二卷目なので探してゐたのです。もちろん、新潮文庫での再刊本ですが、これらは不思議な内容で、繪畫、それに人生を見る目が養はれることは必然です。 

『気まぐれ美術館』 の裏表紙の解説を寫しておきます。 

 

「魅せられて、見つめ尽した一枚の絵。その絵について語ることは、自らの来し方を振返り、物語るに等しい。絵に秘められた人間の諸相、人生の機微が、見る者を深く、多様な想いに誘う・・・。無名画家をあまた見出した 『現代画廊』 の主人であり、小林秀雄をして 「今一番の批評家だ」 と評せしめた筆者が、絵との運命的な共生を通じて透写した、生きることの哀歓。比類のない美術随想33話。」 

 

補・・つづく三册、『セザンヌの塗り残し 気まぐれ美術館』1983年、『人魚を見た人 気まぐれ美術館』1985年、『さらば気まぐれ美術館』1988年 とともに、全6巻が函入りセットで2007年に新潮社から復刊されたやうです。 

 

今日の寫眞・・妻と妻のお氣に入りのたまちやん。《吉祥寺パルコの古本市》と、洲之内徹の三作。