二〇一七年三月(彌生)一日(水)丁亥(舊二月四日 晴のち曇りのち雨

 

今日から一周間、所澤驛前のくすのきホールで、恆例の古本まつりが開かれます。初日ですが、出かけてきました。 

まあ、妻が、今日は隣人の病院への送り迎へをしたり、カツネコの御用があつたりで、「亭主元氣で外がいいよね?」つて言はれてしまつて、出かけざるを得なかつたのであります。せめて足手まとひにならないでね、といふことらしいのです。 

ぼくも、さうなれば堂々と出かけられますから、今日は驛までの送り迎へなしで、歩いて、日暮里、池袋經由、西武電車で所澤への最短コースでまゐりました。

 

くすのきホール八階の會場は、とにかく廣いといふより廣大な會場でありまして、三、四時間では回りきれません。しかも、ただ回るだけでなく、頭腦を鋭敏に働かせながら、出會ひを求めてのの探索、捜索ですから、心身ともに竝の疲労ではありませんのです。 

その努力の結果、本日掘り出し得たのは、良寛歌集 『木端集』 といふ大きな本です。はじめて見る良寛さんの本なので、疑ひながら手にとつてみたら、良寛さんの筆ではありませんが、上杉篤興といふ方が蒐集し筆録したもので、影印なのであります。

 

『木端集(こつぱしゆう)』 は、良寛自らの歌論・芸術論ともいうべき 『歌の辞』 をはじめ、『題しらず』 とする出家の長歌など、良寛作品の秀作を同時代人の上杉篤興が蒐集し筆録したものです。しかるに本書はこれまでその姿をかいま見せることなく、ために研究家の間では良寛研究の “幻の資料” とされて、永らくその公刊を渇望されていたものです。」

 

ですもの、見逃すわけにはいきません。しかも定價六千圓が、一千圓でしたから、ぼくの古本買ひの値からすると高價でしたが、しつかりと確保して持ち歸りました。 

それと、安いといへば、一百圓で、日本名跡叢刊の 『伏見天皇宸翰 筑後切古今集』(二玄社) も確保しました。なにせ、はじめからすらすら讀めて、むしろ、『木端集』 のはうがむずかしくて讀めないくらゐです。 

さういへば、昨年訪ねた、五島美術館だか、出光美術館で見た展示のなかにあつたやうな氣がします。伏見天皇といふお方はさうたうの能筆だつたやうなのであります。それにしても、やわらかい筆づかひで、わかりやすい文字なのが好感持てます。 

この伏見天皇の主導で、京極爲兼の撰によつて仕上げられたのが 『玉葉和歌集』でありました。で、そうしたら、また、ほぼ同時代人といつてもいい、『明恵上人歌集』 が目にとまりまして、これは飜刻本ですが、二百圓。參考にすべく入手しました。

 

今日の寫眞・・くすのきホール古本まつり會場内と、八階の窓邊にて 

賣り物の本の山に、 『木端集』 と 『伏見天皇宸翰 筑後切古今集』 

さいごは、歸路いただいた天ざる。ドイツでは、食べられるのでせうか?