十一月十四日(火)乙巳(舊九月廿六日 曇天のち小雨

 

早いものです。もうひと月がたつてしまひました。慈惠醫大病院への通院日でした。ミカ先生にお會ひできるので、いそいそと出かけてまゐりました。 

血液檢査の結果が出るまでには一時間かかるので、いつも早めに病院につくやうにしてゐます。ところが、今朝はばかにがらがらなのです。電車のはうは通勤時間こそはづれてゐましたがいつものラッシュ。なぜかと聞いたら、血液採取をしてゐた檢査技師のおばさんは、とぼけるやうに、昨日もこんなものでしたよ、と、かうです。ぼくもこれ以上聞くのはやめましたが、心電圖も待つことなくすみました。 

主治醫の診察も良好、檢査の結果もよく、やはり歩いたのはよかつたやうです。また前回いただいた藥によつて、コレステロールの値も平常値になり、もちろんぼくが天ざるやかつ丼を避けた努力もありましたが、だいぶ安心して歸路につくことができました。

 

今日は、ぼくの貴重なご公務日ですから、むだにできません。調べておいた、「早稲田青空古本祭」 を訪ねました。ちよぼちよぼと小雨交じりの天氣でしたが、テント張りの會場の中を、學生諸君も熱心に本を見て回つてゐました。女學生が一人、抱へるやうに大量の本を買ひ込んでゐるのには、ぼくも感心しました。 

で、ぼくはといふと、見つけてしまつたのです。『國書總目録』全九册です。その値段がまたどうして? と言つてしまつたくらゐ安かつたのです。それでも、ぼくが一度に使へる限度額でしたけれど、この機會を逃してはなるまいと思ひました。古本でも通常、數萬圓はするのです。それが四〇〇〇圓!

 

『國書總目録』 は、我が國の初めから、慶應三年までに刊行された日本人による著作、編集、翻譯した書籍(國書)が、全國のどの圖書館や文庫に所藏されてゐるかを記載した、全九册の合目録です。國書を探す際の基本的なツールと言へるわけです。が、ぼくにとつては、どのやうな本があつたのか、また先日のやうに、求めた和本がどんなものなのかを確認できるだけでも貴重です。 

嬉しくて、歸り、牛タンを食べてしまひました。 

 

註・・日本人が幕末までに著したあらゆる分野の書物50万書目を見出しとし、その各々に簡潔に書誌事項を記し、所蔵者名・翻刻書を網羅した古典のブックガイド。全国の主要な図書館・文庫など500余カ所に所蔵する古典籍・古文書の総合目録であり、図書館・研究者に不可欠の資料。書名を50音順に配列し、それぞれに読み、巻冊数、別書名、著編者・画家名、成立・刊行年などを簡明に記した。各々の書目に、その写本・版本を所蔵するすべての図書館・文庫名と翻刻活字・複製本を網羅している。群書類従・古事類苑とともに「三大編纂物」と称される。 

 

今日の寫眞・・早稻田通りの早稻田大學への入口の角にあるそば屋。三朝庵と言ひ、昔から名のある方々が通つてゐたといひます。ぼくが座つた席の眞ん前に飾られた色紙を見て驚きました。淺沼稻次郎ですよ! その右には「八一」とありますので、會津八一の色紙のやうです。

それと、「早稲田青空古本祭」全景と、歸りにいただいた牛タンです。もう、牛タンはねぎしに限りますです。はい。