十一月廿日(月)辛亥(舊十月四日) 曇り
今日の讀書・・二百圓で求めた、坂上栄美子著 『源氏物語ひとりごと』 が意外に面白くて、一氣に讀んでしまひました。たしかに、著者の「ひとりごと」でしたが、『源氏物語』 をよく讀みこまれてゐて、またよく噛み砕いて述べてあるので、源氏がとてもよくわかつてきました。
帶に、「自分らしい生き方を貫くこと、自分に与えられた立場で生きること、どちらを選びますか。あなたに問いかける源氏物語随筆集」とある通り、今日のぼくたちがどう讀んだらいいかに重點がおかれてゐるやうに思ひました。
「『源氏物語』 は、ほぼ千年前の摂関時代という、現代とはまったく違う時代背景の中で生まれました。摂関時代という閨閥政治の中では、結婚は、男も女も恋愛の結実としてあるのではなく。一族の政権獲得のための手段とされました。
それが政略結婚という形で、個人が根本の部分で否定されたとき、いかにして人は個人を回復するか、人間性を取り戻すかという、その前提条件を抜きにしては、『源氏物語』 の恋は語れないと思います。
この窮屈な秩序の中で、人はいかに自分らしく、人間らしく生きるかという、時代を越えたテーマを中心に据えているからこそ、苦労してでも私たちは 『源氏物語』 を読むのでしょう」。
この 〈あとがき〉 のことばは、忘れないでゐようと思ひました。
それはさうと、今日はじめて母がデイサービスに出かけました。九十四歳と三か月にしてやつとです。これまでに何度、行くところまでこぎつけながら、その場になつて嫌だといふので斷つたことでせう。ほつとしたことはしたんですが、それが、迎へに來るのが十時四五分だといふのです。妻と顔を見合はせてしまひました。
でも、最初だから來てもらひましたが、來た方に、朝こちらから車で送ることはできるので、早く行くことはできますか、と聞きました。が、それは檢討させていただきたいとのこと。また、あとで電話があつて、コーヒーを飲ませてもいいか、お砂糖とクリームを入れてもいいか。さらに、お晝の藥がないが持たせたのかどうかとの問ひ合はせがあつて、留守もできず、まあ、なんのデイサービスかわかりません。
歸宅した母は、しかしルンルン。また行きたいと言ふので、はいはいと言つておだてておきました。
今日の寫眞・・夕方、夕食の準備をする妻と見た、NHK・BSの一場面。『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』〈オードリーとローマの休日~秘めた野心 貫いた思い~ 2017年11月14日〉 の再放送でしたが、食事をそちのけにして見てしまひました。