十一月日(木)辛酉(舊十月十三日 曇天

 

コツキン父さん死す!

 

コヤタ、ブンゴ、モモたちの父親で、長い尾の先が九十度に折れてゐるのでつけた名前です。また、寅ちやんとともに生前のラムを知つてゐる貴重なノラネコでした。 

そもそも、これら三匹の子猫に食事を與へるために、痩せ細つたからだを我が家の勝手先に運んできた母猫との出會ひがすべてのはじまりでした。食べ物を口にすると、その母猫は、自分では食べずに、近所の廢屋の縁の下に入り込み、そこで生まれてまもない三匹の子猫に口にした食事を與へてゐたのでした。

 

それを見た我が妻は、人が變はつたやうになり、ノラネコの世話をはじめたのでした。子猫たちが、我が家に來れるやうにし、そして、家の脇に猫のアパートを備へてあげました。子猫たちはみるみる成長し、母猫も太つていきました。そんなころ、のこのこやつて來たのが、子猫たちの責任者でもある父親のコツキン父さんです。

 

はじめから病氣がちでした。しばらく姿を見せないと思つたら、突然ふらふらやつて來て、他のノラたちからいぢわるされながらも、居ついたやうなのです。最近は食事が口にできないやうな状態でしたので、柔らかい榮養のあるものや藥もあげてゐたのですけれど、殘念で氣の毒です。でも、我が家に歸つて來て、いつもの寢床で死んでくれたのはうれしいかぎりです。 

報はれたね、とぼくは妻に聲をかけました。思はずふたりして涙ぐんでしまひました。 

 

今日の讀書・・學習院さくらアカデミー 《源氏物語をよむ》、今度の土曜日が秋期の最終回です。〈帚木〉はまだ讀み終はりませんが、だいぶ先まで豫習いたしました。 

 

今日の寫眞・・ラムの生前、ベランダにきたゐた、コツキン父さんと寅。きつい顔をしてゐて、人好きのしないノラでした。やつと見つけた二枚です(20140301)。 

「私は見た!」 くすのきホールにて。と、昨日求めた、『かなを読む 変体仮名解説と、古筆の鑑賞』。

 



  

十一月一日~卅日までの讀書記録

 

十一月四日 森銑三著 『思い出すことども』 (中公文庫) 

十一月五日 神坂次郎著 『藤原定家の熊野御幸』 (角川文庫) 

十一月五日 藤原定家 『後鳥羽院熊野御幸記』 〈群書類從特別重要典籍集〉所収 

十一月六日 窪田空穂著 『窪田空穂歌文集』 このうち、〈Ⅲ 短歌・和歌について 「平安朝の歌と実際生活との關係」と「歌人和泉式部」〉 (講談社文芸文庫) 

十一月七日 井原西鶴著 『繪入 好色一代男 三』 (複刻日本古典文學館) 

十一月十二日 鳥越碧著 『後朝 和泉式部日記抄』 (講談社文庫)。 

十一月十四日 藤沢周平作著(七) 『逆軍の旗』 (文春文庫)再讀 

十一月十六日 『紫式部日記絵詞』 (コンパクト版日本の絵巻()・中央公論社) 

十一月十九日 逢坂 剛著 『逆襲の地平線』 (中公文庫) 

十一月廿日 坂上栄美子著 『源氏物語ひとりごと』 (新風舎) 

十一月廿日 永井路子著 「左大臣顕光」 (『悪霊列伝』 角川文庫 所収)

十一月廿三日 竹原春泉画 『桃山人夜話~絵本百物語~』 (角川文庫) 

十一月廿四日 古瀬奈津子著 『摂関政治』 (岩波新書) 

十一月廿八日 ドナルド・キーン著 『日本文学史 古代・中世篇三』 その内、「一二・源氏物語」 (中公文庫) 

十一月廿八日 土田直鎭著 『王朝の貴族 日本の歴史5』 (中公文庫) 

十一月卅日 藤沢周平作著(八) 『竹光始末』 (新潮文庫)再讀