十二月九日(土)庚午(舊十月廿二日 晴

 

今日はうなぎを食べに、ぢやあない、古本を探索するために、今日から開催のつちうら古書倶楽部の古本まつりに出かけてまゐりました。晝食のうな重をはさんで、十一時ころから、三時まで捜し歩きました。なにしろ廣いのです。所澤くすのきホールと同じくらゐでせうか。ちよつとのぞいてみようかなんて半端な気構へぢやあ、いい本はさがせませんね。 

行き歸りの常磐線がまた懐かしい列車の旅を味はせてくれて、ぼくには樂しみの一つです。

 

今日の寫眞・・車窓から見た筑波山。土浦驛西口から徒歩一分の古本まつり會場。お晝にいただいた、小松屋さんのうな重。これが美味い! 

 

それと、先日(十一月二十六日)、17世紀に長崎の出島から極秘に持ち出され、大英博物館に1冊だけ正本(台本)が残る幻の古浄瑠璃 『越後国柏崎 弘知法印御伝記(こうちほういんごでんき)』 が、英国で上演される」 として、BS朝日 《ドナルド・キーン95歳 心の旅》 といふ番組でとりあげられた、その翻刻本である、『古浄瑠璃集(大英博物館本)』(古典文庫)。 

「時空を超えて330年後に大英博物館で発見された」といふこの古浄瑠璃は、早稻田大學の鳥越文蔵先生が、55年前の若かりしときに、發見したものでした。 

實は、そのテレビを見終るや否や、日本の古本屋で探し出し、注文した時には一〇〇〇圓でした。ところが、注文したあとになつて、賣却みですなんて、あまりにも失禮な態度でした。しかし、捨てる神あれば拾ふ神ありで、今日はなんと三〇〇圓で買ふことができました。 

 

それとともに、『西國三十三所並善光寺御詠歌』 といふぺらぺらの和本。五〇〇圓でしたけれど、安政二年(一八五五年)のものですよ! まあ、ほとんどがかな文字ですけれど、古文書と言つてもいいのでせうね。印刷ではなく、直筆です。 

今日は、一ばんだけにしておきますが。くづし字のお勉強のために、毎日見開きの二所を讀み解いて行くことにしませう。「字母」が何かが肝心なところですが、それは各自お調べください。

 

「一ばん きのくに なちさん 

ふだらくやきし うつなみは みくまのの なちのおやまに ひびくたき つせ」

 

この時代には、濁點がつけられてゐるやうですね。これを漢字假名交りで記せば、

 

「補陀洛や 岸打つ波は 三熊野の 那智のお山に ひびく瀧津瀨」

 

とでもなるでせうか。第一番札所 那智山 靑岸渡寺の御詠歌です。 

ここには、ぼくは父ととも訪ねました。ツアーに参加しての旅でしたけれど、父を誘つて行けたことが今となつてはよい思ひ出です。たしか父が八十八歳の時でした。