十二月廿四日(日)乙酉(舊十一月七日 曇りのち晴

 

今日の讀書・・『源氏大鏡〈上〉』(ノートルダム清心女子大学古典叢書)が意外や意外、すらすら讀めるのをいいことにして、もちろんくづし字のお勉強ではありますが、はじめの〈序〉から讀んでみました。ダイジェスト版ですから、それこそ復習には適してゐますでせう。〈序〉がついてゐて、「光けんしの物語のおこりは云々」と、紫式部が石山寺に參籠して執筆したこと、在原業平と源高明を光源氏のモデルにしたことなどが書かれてゐて興味しんしん。午前中のうちに〈桐壺〉に入り、そして讀み上げてしまひました。

 

原文とは全然雰圍氣が違ひます。まづ、「桐つほは大内四拾八殿のひとつ也」からはじまつて、「すぐれて時めき給有けりと云は、光源氏の御母なり」といふやうに、物語の進行より、言葉や事柄の説明と解説を重ねながら進んでいきます。原文では、桐壺帝のあまりな更衣に對する執着といふか愛着によつて更衣が苦しみ、病んでいくところなど、イライラしながら讀んだものです。ところが、そのやうな人物の心の動きにはまつたく無頓着に物語は進んで行きます。讀みやすいといへばたしかに讀みやすい。

 

そのかはり、作中人物によつて交はされた和歌がすべて載せられてゐます。今日の「註」で述べられてゐるやうに、本來、『源氏大鏡』 は、「歌人・連歌師たちの手引書・教養書」なんでせうね、物語よりも、和歌集として重んじられてゐたやうです。ですから、どのやうな場面で詠はれたかは省いてでも、和歌だけは記されてあります。

 

いや、それだけでなく、「引歌(ひきうた)」まで記されてゐるのです。和歌の通し番號でいへば(「作中和歌一覽」を参照しました)、〈桐壺〉には、一番から九番まで、桐壷更衣(一)、桐壺院(四)、靫負命婦(一)、桐壷更衣母(二)、左大臣(一)がそれぞれ贈つたり答へたり、独吟したりして書かれてゐますが、それだけではないのです。例へば、二番と三番の桐壺院と靫負命婦の歌の間には二つ、四番のあとにもひとつ、七番を挟んで前後にひとつづつ、以上五つの「引歌」が、「引歌」といふ注意書きとともに記されてゐます。 

以下の五つの歌が「引歌」です。

 

1「直き木にまかれる枝も有物(あるもの)を けをふき傷をいふかはりなき」 

2「八重葎しげれる宿はさひしきに 人こそみえね秋はきにけり」 

3「いかにしてありてしられんたか砂(高砂)の 松のおもはんこともはづかし」 

4「鳥羽玉のやみのうつゝはさだかなる 夢にいくらもまさらざりけり」 

5「有時(あるとき)はありのすさみににくかりき なくてそ人はこひしかりけり」

 

淺學なぼくには、原文にはないこれらの「引歌」が、必然性があつて詠はれかつ記されてあるのかどうかがわかりません。もしかしたら、原文では隠されてゐた「引歌」がわかりやすく表に引き出されたのか、或いは、『源氏大鏡』 が用ゐられるのに便利なやうにさうしたのか。でも、「引歌」として、このやうに引き出されてしまつたら、そもそも「引歌」とは言はないのではないかと思ふのですが、どうなんでせう。 

さういへば、さくらアカデミーの講義で聞いたやうのも思ひます。「八重葎」の草が茂る情景のところで、ここには「引歌」が隠されてゐると學んだと思ひます。でも、この歌ではなかつた。〈源氏クラスメート〉のみなさんと先生にもお聞きしたいところであります。まあ、歌がにがてなぼくですので、疑問としてこころに留めておきませう。 

 

註・・『源氏大鏡』  『源氏物語』の梗概書。成立は、南北朝~室町中期とされる。作者は未詳。「ひかるけむしの物かたりのおこりは」云々と、紫式部が物語を執筆することになった経緯が説かれ、以下、巻ごとの梗概が続く。作中和歌のすべてが取り込まれつつ、注釈的説明を加えて各巻がダイジェスト化されている。中世の歌人・連歌師たちの手引書・教養書として流布した。 

 

今日の發見。デスクトップ畫面の左下に出てくる、いつもは迷惑してゐたのですが、「ここに入力して検索」のスペースに、例へばと思ひ、「源氏大鏡」と入力してみたら、あら便利! ネット畫面を開くことなしに、いきなり検索できることを發見いたしました。これは重寶です。辞書がすぐに開けて、そのまま必要な文章をコピーできるのです。 

ぼくにとつては新發見ですが、どなたかこのやうな便利な機能が他にもあつたら敎へていただきたいものであります。 

 

最近は、週二回、日曜日と木曜日にお風呂に入つてゐます。以前は不定期でしたが、母が月曜日と金曜日にデイサービスに行き、お風呂のサービスも受けられるやうになつたからです。母が入るときには、妻かぼくが必ずそばにゐて、物音に注意するやうな日々でしたが、デイサービスで入れていただけるやうになつたので、正直ほつとしてゐます。それで、母が明日入浴できるといふ前の日に入るやうにしたわけであります。他のみなさんもこんな苦勞、といふか氣がかりな生活してゐるのでせうか?

 

今日も御詠歌はお休みします。すみません。 

 

今日の寫眞・・さういへば今日はクリスマスイブでした。となりの良ちやんが、自作のケーキをくださつたので思ひ出しました! 

ココは、ノラの氣が抜けないのか、いたづらです。