正月十三日(土)乙巳(舊十一月廿七日 晴

 

今日一日を振り返つてみると、なんと氣ぜわしかつたことか。歩數で言ふと九九〇〇歩。また、朝から夜までのまる一日出歩いてゐたことになります。妻に言はせれば、元氣で樂しく出歩いてくるぶんには、どうぞご自由にといつた按配で、まあ、放し飼ひされてゐるやうなものですが、それが収入にもつながらずに家をあけてばかりゐては、やはり後ろめたいものがあります。

 

それはさておき、今日から、學習院さくらアカデミー、冬の講座がはじまりました。《源氏物語をよむ》 も通算二十回目、〈帚木〉の卷の途中からでしたが、みなさん活發に意見交換や、ご意見開陳などもありまして、樂しくもあり有意義な講義のひとときでした。

それで、〈帚木〉の卷、「あまよの品定め」のつづきですが、「靑表紙本」で、四二頁の三行目から、五一頁の五行目あたりまで讀み進みました。

 

そこでぼくはふと思ひ出したのですが、小學三年生のときでした。何の授業だか忘れましたが、先生が、さあみなさん、手首に觸れて脈を數へませう、と言つたあとで、ぼくは、大きな聲をあげて數へてしまつたのです。笑ふ子もゐましたが、先生からはひどく叱られまして、それがぼくのひとつのトラウマになつてをるのであります。 

眞面目であるべき場にかぎつて、ふざけてしまひたい、いや黙してゐようとの葛藤が繰り廣げられ、じつと講義をきくと言ふのはぼくにとつては精神修養でもあるのであります。これは、性分なのか、癖なのか、それとも主義なのか、とにかくいい生徒にはなれないままこの年まで來てしまひました。

 

それと、今日から、新たに男性三名が加はり、總勢十二名になりました。女性は五人ですから、『源氏物語』 のこの種の講座にしてはたいへん珍しいことのやうであります。で、歸り、いつもならそのまま古本市に直行してしまふのですが、今日はクラスメートの男性三人のあとに從ひ、講義後の乾杯につき合はせていただきました。このグラスビールがうまかつた!

 

それから高圓寺の古書會館に向かひました。今日は店内のものすべてが二〇〇圓といふ特價日で、まあそれなりのものしかありませんでしたが、「古事類苑」があつたのにはビックリ。ぼくは選びに選んで、小學館の「新編 日本古典文學全集」の 『方丈記・徒然草・正法眼藏随聞記・歎異抄』 の卷を求めました。この全集本が二〇〇圓で買へることはおそらく今後ないでありませう。それと、至文堂の日本の美術95 『法然上人絵伝』。ところが、表紙には一〇〇圓の値札がはつてあつたので、四〇〇圓です、と言はれて、でも問ひ返す勇氣はありませんでした。

 

さらに、もうすでに暗くなつてきましたが、有樂町まで行きました。東京フォーラム ロビーギャラリーで、《新春特別企画 宮廷文化・今昔物語》 といふ展示が公開されてゐるといふことを、今日の講義で聞いたものですから、しかも十五日までだといふので、ちよいと無理してやつてきました。 

「明治改元(1868年)から150年の節目に、日本の宮廷文化の貴重な資料を特別展示。大正天皇即位礼の模型・等身大装束などの展示に加え、平安時代の『源氏物語』六條院を具現化」 

「六條院」の模型などは面白く、參考にもなりましたが、やはり、どこかに、「明治維新一五〇年」を正當化するにほひが感じられて、ぼくは警戒心を解くことはできませんでした。

 

今日の寫眞・・冬枯れの南三號館。高圓寺の古書會館。すべて二〇〇圓の特價日でした。それと、宮廷文化展。