六月廿六日(火)己丑(舊五月十三日) 晴、蒸し暑い

 

『枕草子』 を讀み通しました。くづし字だつたらこんなに早くは讀めなかつたでせうが、現代語譯で、しかも翻譯言葉とは思へない流暢さでしたので、數日で讀めました。 

たしかに、くづし字の能因本は、二月のぼくの誕生日に讀みはじめてから四カ月もかかつてしまひました。それも右も左もわからないままに、だからどうしたのといつた、各章段ごとの感想で終はつてゐましたが、山本淳子先生の 『枕草子のたくらみ』 を讀んだことで、一氣に靄が晴れるといふのか全體像が鮮明になつたおかげで、かくして讀み上げることができました。平安時代の宮廷の雰圍氣を知るには最適です。 

それにしても、淸少納言はどうして日記的章段を、それこそ日記を書くやうに、年月順にせずに、かうもばらばらに記したのでありませうか。思ひ出すままに書き綴つたと言へばそれまでですけれど、「原『枕草子』」 執筆以後、編集したやうでもありますのに、なぜそのとき順番を正さなかつたのか。中宮定子と中關白家の榮華を、道長の世に見せびらかして、刺激しないといふ、そのためだけだつたのでせうか。 

ところで、笠間影印叢刊の 『能因本 枕草子 上下』 は、前後飛び飛びに讀んだので、上下一册として數へました。 

これで、『枕草子』 を讀み終へましたので、『源氏物語』 にもどりますが、その前に、ちよいとイージーリーディングといきまして、ハヤカワ文庫の 『オールド・ディック』 を讀みはじめました。以前に讀んだかなとは思ふのですが、まあ氣晴らしです。

 

今朝、Aさんから突然に連絡があつて、妻はあわてて飛び出していきました。生まれたばかりの子ネコ八匹の捕獲をたのまれたといふのです。ところが、行つてみると、そこは足立區で、何のことはない、足立區はノラネコにたいする援助などは最先端を行つてゐる區で、ノラネコの不妊手術は無料なんです。 

それをよりによつて、支援金も微々たる葛飾區のわたしたちにたのむとはなんぢやい、と妻とAさんはかんかん。 

きつと、Aさんならただでやつてくれるといふデマが飛び交ひ、先日のぢいさんもさうですが、いざとなると他に助けを求められないので、安易にたのんでくるやうなんです。なかには、「ボランチアなんだからただでやつてくれるわよ」、なんて、ノラネコの捕獲にも協力せず、不妊手術にかかつた費用も出さずに、かわいいかわいいしてエサをばらまくだけの婆さんがけつこうゐるのです。それでゐて、子ネコが増えて困るとていよく使はうといふのです。 

だから、「地域猫」の觀點から、Aさんと妻は猫をただかわいいかわいいしてゐるだけの「愛護の人」が一番嫌いです。やりにくくてしかたないのださうです。やつと捕獲したと思ふと、「あら、この子ネコかはいいはね」、とかなんとか言つて連れていつたりするのです。 

葛飾區に動いてもらふためには、まあ、實績を擧げていくしかないはね、といつてがんばるお二人さんです。 

ちなみに、妻たちが連れて行く足立區のクローバー動物病院では、ワクチン代、檢査代、不妊手術代で、約一萬五千圓ほどかかるさうです。ところが、ラムが生前お世話になつた葛飾區のリオ動物病院などは三萬五千圓もします。だから、葛飾區から援助金オス二千圓とかメス四千圓とかを、面倒な手續きを經ていただくよりも、越境してクローバーにつれて行くはうが安くつくのです。しかもそこの先生はノラネコについての理解があつて、本當に必要とされてゐる獸醫師です。 

 

氣をきかしてくれたのか、妻がDVDを借りてきてくれたので、二本も見てしまひました。ブルース・ ウィリス出演の “ファースト・キル” と “探偵はBARにいる3” です。東直己の「ススキノ探偵シリーズ」映畫化の第三です。 

 

今日の寫眞・・今日は、ノラの子ネコ八匹のうち三匹しか捕獲できませんでした。そのうちの二匹を我が家で預かりました。緊急でしたからお手傳ひしましたが、殘りは足立區の方にまかすさうです。といつて、横のつながりが希薄なやうで、これではこれからも協力しあふこともできません。とぼくは思ひました。 

それと、とても敎へられた 『枕草子のたくらみ』 と 『オールド・ディック』 です。