十月十八日(木)癸未(舊九月十日) 曇り

 

八月は靜嘉堂文庫美術館と町田の馬刺し、九月は成田山新勝寺と成田書道美術館と宗吾靈堂を訪ねてうな重。そして十月の今日は、出光美術館と天龍の餃子といふ、川野さんとの 〈美術と美味探訪の旅〉 を行つてまゐりました。

 

東武鐵道でやつてくる川野さんとは、半藏門線直通の押上驛ではなく、淺草驛一つ手前の東京スカイツリー驛の東改札口で待ちあはせました。そこからだと、改札口を出た目の前のエスカレーターを上ると、そのままソラマチに入れるからです。 

まあ大きなショッピングセンターですから、店内に入つてから名店街のすきまを延々と歩いて、さらに六階に上がり、やつと天龍に到達いたしました。ところが、ぼくは開店が一一時半だとばかり思つて待ちあはせ時間をそれにあはせたのですが、開店時間は一一時でした。それで混んでゐてすぐには入れないかなと思つてゐたら、ショッピングセンターの中もですが、混雑がないのです。むろん天龍もすぐに入ることができました。なんと三組の先客しかゐませんでした。 

どんな理由が考へられるかいろいろあるでせうが、こんなにスカスカのソラマチははじめてです。で、天龍の餃子ははじめての川野さんに能書きをたれながら、熱々の餃子と焼きそばを分けあつてゆつくりいただくことができました。

 

つづいて、半藏門線で大手町驛まで行き、ついでなので川野さんも興味をお持ちの將門の首塚を訪ねました。地下から地上に出てびつくりしました。首塚が大きな建設中のビルにかこまれて、といふか埋もれて、これではさしもの將門も鬱陶しいと怒りもはにしてもおかしくないと思ひました。それでも、碑のまえに額ずく人は絶えず、數分のうちに四人の方を見かけました。

 

さらに、お堀に出て、大手門を入つて桔梗門に抜けやうとしたら、皇宮警察官にとめられてしまひました。それで、三の丸尚藏館で開催中の、《春日権現験記絵─甦った鎌倉絵巻の名品─》 を見たのですが、これがすごい(註)。さういへばポスターを見かけたときに行かうと思つたことを思ひ出しました。繪卷の變體假名もさうむずかしくはなく、讀んでみようと思つて普段は買はない圖録まで求めてしまひました。

 

仕方がないので大手門を出て、内堀通り、和田藏門に出て、日比谷通りを馬場先濠沿ひに南に、帝國劇場を左に折れて出光美術館に到着しました。しかし、權現繪卷の迫力に壓倒されてしまつたやうで、《仙厓礼讃》 の九十五點におよぶ、「老後の達人」仙厓さんの禪畫も色あせてしまひました。ちよいとした番狂はせでした。

 

註・・・春日権現験記(かすがごんげんげんき)は、藤原氏の氏神である春日神(春日権現)の霊験を描いた鎌倉時代の絵巻物。絹本著色、巻子装、全20巻(他に目録1巻)、三の丸尚蔵館所蔵。1309年(延慶2年)に時の左大臣・西園寺公衡の発案で、宮廷絵所の長・高階隆兼によって描かれ、春日大社に奉納された。全21巻(うち1巻は目録と序文のみ)。最高峰の大和絵で描かれた社寺縁起絵巻の代表作であると同時に、全巻が揃い、制作者が判明していることや、当時の風俗が細かく描かれていることなどから、日本の中世を知る貴重な歴史的資料とみなされている。

 

今日の寫眞・・・將門の首塚と、ポスター二種