十月廿六日(金)辛卯(舊九月十八日) 曇り

 

今日から、《東京名物 神田古本まつり》 がはじまりました。何はさておき出かけなければなりません。 

でも、まづは、同時に開催の古書會館の古本市を訪ねました。今日は和本が多く、表に並べてあるものは、みな目の玉が飛び出るほどのお値段です。が、ぼくは平臺につまれた和書の束のなかから何冊か手ごろなものを掘り出すことができました。

 

最近は手のひらサイズの電子辭書(広辞苑と漢字源)を片手にして和本の束に向かひます。面白さうだなと思つても、著者が誰なのか、どんな人物なのか分からないときに調べます。今日も、『おくれし雁』 なんていふ本が目にとまり、辭書を引いてみると、著者の藤井高尚さん、「江戸時代後期の国学者・歌人・神官。本居宣長の門人として文章で最も秀でた」人だつたのです(註)。本文十丁ほどの和本ですから、その秀でた文章とやらを味ははせていただきませう。

 

それと、三日前に訪ねた縁切寺滿德寺に關する、五十嵐富夫著 『縁切寺の研究 徳川満徳寺の寺史と寺法』(五〇〇圓) と、井上禅定著 『駈入寺 松ヶ丘東慶寺の寺史と寺法』(四〇〇圓) といふ三くだり半の詳しい本が見つかりました。まつたくの偶然でしたが、そこには必然性があつたとしか言ひやうがないですね。これこそ古本漁りの醍醐味と言はずして何と言ひませう。

 

靖國通り沿ひの古本市は、たくさんの人でごつた返してゐました。八木書店の二階をのぞいたり、目ぼしい書店に入つたりしながらも、今日は偵察ていどにして早々に歸路につきました。 

實は、明日も歩かなくてはなりません。しかも雨模様といふではないですか。體力を温存しておくに如くはないと思ひました。 

 

註・・・藤井高尚(ふじいたかなお)、17641840(明和1‐天保11  江戸後期の国学者。備中吉備津神社祠官。通称忠之丞、小膳。松屋(まつのや)、松斎と号す。本居宣長有力門人の一人。歌文の学に長じ、中古ぶりの文章では彼の右に出る者がいなかったという。国学普及の志を立て、京都鐸舎(ぬでのや)、大坂小柴屋などで教授。著書は刊行されたもの1535巻におよぶが、そのうち随筆《松の落葉》、消息文《おくれし雁》《消息文例》、註釈《伊勢物語新釈》《大祓詞後々釈》や《松屋文集》などがよく知られている。 

 

今日の寫眞・・・神田古本まつりの樣子。と、求めた本。それに手放せないシャープの電子辭書。