十二月廿八日(金)舊十一月廿二日(甲午) 

 

『保元記 上』 讀み終りました。崇徳上皇側において、源爲朝が、戰ひは夜討にかぎると進言したのにもかかはらず、左大臣賴長はそれを一笑に付し、その結果、後白河天皇側の夜討を受けて大混亂におちいつた、といふところまででした。 

足利氏の祖となる義康も、たしかに後白河天皇側に組して、「・・・陸奥守新判官義康百餘騎・・・以上四千五百餘騎我も我もといさみあらそひ」、とあつて、確實に力をつけていつた模様です。 

一概に、金刀比羅本と稱されてゐるこの 『保元記』、先に述べたやうに、一度讀み聞きした話を、後日まとめ直した感の強い内容です。二册の文庫本とくらべると、前後入り亂れ、登場人物も少なかつたり、違つてゐたりで、やはりくらべないで讀み流したはうがよかつたやうです。それにしても、すらすらと一週間たらずで讀めたことが嬉しい。中と下は後日に回すことにして・・・。 

 

つづいて、昨日屆いたばかりの、同じ日本古典文學會から出てゐる 『尾州家河内本 源氏物語』 に入りました。むろん影印複製本で、第一卷には、〈桐壺〉から〈末摘花〉まで収められてゐて三センチの厚さです。持ち運びには適してゐません。できれば切り分けて分册にしてしまひたいのですが、ちよいともつたいない氣持ちがしますので、これは机上で讀むやうにしませう。 

かたはらには、すでに讀み終へた 「靑表紙本」 とともに、小學館の日本古典文學全集 と 新潮社の新潮日本古典集成 の分册を置いて適時參照しながらまづは小手調べ、數頁讀み進みました。 

 

やはり違ひは一目瞭然で、變體假名の使ひかたがだいぶ異なつてゐます。「な」とか、「す」とか、「を」、「え」など、はじめて見る變體假名が出てきました。ですが、これはすぐに慣れてしまふものです。 

それより肝心なのは、文章ですけれど、例へば、靑表紙本では、 

「いつれの御ときにか女御更衣あまたさふらひ給けるなかに」 

といふ冒頭の文章が、河内本では、 

「いつれの御時にか・女御・更衣・あまたさふらひたまなかに・」 

とあり、「さふらひ給ける」と口遊んできた者にはちよいとひつかかります。 

ですが、長々とつづく文章に、句讀點と思しき 「・」 が打つてあるので、俄然よみやすくなつてゐます。これがあつたら讀みやすい、だけでなく意味も解しやすいです。お先が樂しみです。 

 

今日の寫眞・・・先日、何の間違ひか、アマゾンのプライム何とかに加入してしまつたらしいのです。すると、キンドル何とかで、本を買はなくてもキンドル版の畫像が見れるやうなのです。その寫眞です。 

ちよいと加工がうまくいかなくて見にくいのですが、現物が手に入らない本でも讀むことができるんですね。まあ、これで讀み通さうとは思ひませんが、調べることはできさうです。

 

一枚目は、讀みはじめた 『尾州家河内本 源氏物語』 と靑表紙本の〈桐壺〉の部分です。二枚目からが、アマゾンのKindle版です。『河内本 源氏物語』 もありましたし、富永仲基の 『翁の文』 が讀めるのには感動しました。 

ちなみに、原本を使用するにあたつて、以下のやうな説明がなされてゐます。 

 

紫式部 () 源氏物語 : 河内本 第1 (国立図書館コレクション) Kindle版 原本出版年:1934 原本出版者:尾張徳川黎明会 

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また、富永仲基の 『翁の文』 は、 

富永仲基() 翁の文 (国会図書館コレクション) Kindle版 原本出版年:1746 原本出版者:富士屋長兵衛  (以下、『源氏物語』 と同文)