五月十日(木)壬寅(舊三月廿五日) 雨、雷のち晴

 

連休が終はつた月曜日から、寒い日がつづきました。讀書は計が行きましたが、それも今日でおしまひ、明日からは晴れて暑くなるやうです。

 

さて、先走つた南北朝時代の勉強が一段落したので、また平安時代にもどります。『能因本 枕草子 学習院大学藏』(笠間書院) を、二月の誕生日の日から讀みはじめて、まだ上卷の第八七段です。毎日缺かさず讀んできましたが、わづかづつですし、内容が斷片的ですので面白くありません。「回想章段」と呼ばれる、宮中のできごとなんて、何を書かうとしてゐるのかさへはつきりしません。 

それで、集中して讀むにあたつて、考へました。その結果、本文を讀み進んでいくだけでは、分かりにくさはかはらないと思つたので、參考書を讀みながら、そこで取り上げてゐる章段を、くづし字の本文で、そのつど讀んでいくことにしました。

 

問題は參考書です。たくさんある中から選んだのは、ぼくのといふか、ぼくが今まで學んできた結論を補強してくれるやうな、山本淳子先生の 『枕草子のたくらみ』(註) です。『枕草子』 の謎を解き明かしながらですから、當然内容の理解が深まるわけで、一石二鳥と言へるでせう。むろん取り上げない章段は出てくるでせうから、それは後日まとめて讀むことにします。 

今日は、「序章」と「第一章」と「第二章」を讀み、本文は、初段と二段と一七七段(能因本では一八二段)を讀みました。山子淳子先生の書き方が上手なんでせうか、それとも著者の思ひがそのまま傳はつてくるからでせうか、讀んでゐて感動ものでした。 

 

註:山本淳子著 『枕草子のたくらみ 「春はあけぼの」に秘められた思い』 (朝日選書) 

藤原道長を恐れさせ、紫式部を苛立たせた書。それが随筆の傑作「枕草子」だ。 権勢を極めた道長が、なぜ、政敵方のこの書を潰さなかったのか。「枕草子」執筆に込められた、清少納言の戦略とは? 冒頭の「春はあけぼの」に秘められた清少納言の思いとは? あらゆる謎を解き明かす、まったく新しい「枕草子」論。 

 

今日の寫眞・・山本淳子著 『枕草子のたくらみ』 と 『能因本 枕草子』 の翻刻と現代語譯。