五月廿日(日)壬子(舊四月六日) 

 

『枕草子』 のかたわら、『筑波問答』(和泉書院影印叢刊18)(註) を讀みはじめました。連歌の敎科書のやうな内容だといふし、興味が薄れないうちに、しかも、影印の原文がすでに手元にあるものですから、このチャンスを逃してはなりません。 

ただ、原文を讀んでも十分理解できないことは承知のうへですので、參考書に、岩波書店の 『日本古典文学大系66 連歌論集・俳論集』 のなかの翻刻された本文を用ゐることにしました。くづし字が個性的なのと、漢字に變換しなければ理解しがたい言葉や歴史的かつ専門的語句を知るためには、必需品です。また、これだと、頭注もあつて、より深い理解につながります。 

もちろん、持ち運びのためと、横になつて讀むためには、全集本では嵩張るし、重たくて自由な姿勢で讀むには適しません。それで、いつものやうに分解して別冊に製本いたしました。たつた四十八頁です。厚さは二ミリもありません。全集本と言つたつて、二〇〇圓ですからね、そのための古本でもあるのであります。 

『實語敎』 に、「雖積千兩金 不如一日學 (千兩の金を積むと雖も、一日の學に如かず)」 とありましたね。書物はものとしても大事ですが、體力に自信のないぼくの學びのために犠牲になつてもらひませう。ご勘弁願ひます。 

それにしても、『枕草子』 や 『源氏物語』 よりもだんぜんわかりやすい文章です。事柄の難しさは學んでいくしかありませんが、文章はすでに歴史的假名遣ひですから、文語文を日常的に使つてきたぼくにとつては、ことさら障害にはなりません。この日のために。ありがたいことです。 

尚、「連歌」本については、五月一日の日記に詳しく書きました。

 

また、氣分轉換のために、デズモンド・バグリイの 『敵』(ハヤカワ文庫) を讀みだしました。出だしで引かれなければやめるつもりでしたが、ぐんぐん引き込まれてゐます。 

 

註・・『筑波問答(つくばもんどう)』 南北朝時代の連歌論書。二条良基著。1372年ごろに成立。老翁に連歌についてたずねるという設定の問答体で,連歌の名称,起源,変遷,作法,風体等を記す。連歌論として初めての体系的叙述で,連歌を伝統文学と同じ地位にまで高めた。室町後期以降,連歌の入門書として広く読まれた。