五月廿六日(土)戊午(舊四月十二日) 

 

今日も古本市めぐり。しかも三か所を朝から夕方までかかつて訪ねてきました。神田の東京古書會館と、高圓寺の西部古書會館と、五反田の南部古書會館です。 

ただし、ぼくが現在求めてゐる本となると、さう簡單には見つかりません。最近は、むしろ、ぼくの關心や興味を引き出すやうな古書との出會ひのはうが樂しみです。 

求めてゐる本と言へば、木曜日に、病院の歸りに寄つた西秋書店で、路上に出された投賣り本の木箱の中から、分厚い、福井久藏著 『連歌の史的研究』(有精堂) を見つけたのでした。これは掘出物でした。その後編の冒頭、〈第一 学書〉に、今讀んでゐる 『筑波問答』 があげられてをりました。

 

「後光嚴天皇の応永五年二条良基の著わすところ。連歌の起源、沿革、その効験、稽古の要諦、発句脇の仕様、百韻千句の運び方、学書、上古中古近来の諸体、賦物連歌の性質、式目設定の由来、会席の作法等十六項目に分かち問答体に記述してあるもの。首めに序を加えてある。従来連歌を説くものこれを準拠とする」

 

とありまして、『筑波問答』 が、「連歌を説くものこれを準拠とする」ほどの文獻であることがわかりましたし、讀み進んでゐるぼくとしてはよき手がかりを見出すことができました。 

 

それで、今日は、興味を引くやうな内容で、しかもくづし字のお勉強のためのテクストを二册得ることができました。 

一册目は、『貞丈雑記 十上』 と題簽(だいせん)にある和本で、全三十六冊のうちの端本です。内容は、〈弓矢之部〉です。でなければ求めませんでしたが、あきらめたとはいへ、弓道には未練がありますし、内容も、弓箭を事とする人の手になる、實に具體的な記述です(註一)。 

二册目は、『鳥羽絵本集(一)』 です。ほとんど繪本ですが、輕妙な詞書が添へられてゐて、それがまた面白い(註二)。 

 

註一・・『貞丈雑記(ていぢやうざつき) 伊勢貞丈(さだたけ)の著した有職故実書。16巻。礼法,礼儀,人品,人物,人名,小袖,烏帽子,役名,官位,装束,飲食,膳,酒盃,輿,調度,書札,進物,弓矢,武具,刀劔,馬,馬具,家作,座鋪,紙類,皮類,鳥目,鷹,物数,言語,神仏,諸結,凶事,雑事,書籍の35部に分類記載されている。貞丈が子孫が古書を読むときのたよりに、また人から故実を聞かれたおりの助けにもと、1763(宝暦13)1月以後日々筆のまにまに書き記した雑録で、草稿のまま伝わったのを、子孫貞友のとき、弟子の岡田光大が清書校合して1843(天保14)に刊行。 

*「日本の古本屋」で調べたら、二種類出てゐました。 

一、『貞丈雑記』 全三十六冊揃 伊勢平蔵貞丈著 、天保14年 和本、絵入り本、26×18×24cm(36冊積んだ高さ) 明治堂書店 石川県金沢市長町 150,000 

一、『貞丈雑記』 全十六冊揃伊勢平蔵貞丈 著、門人 千賀春城・岡田光大 校、東都書林 文溪堂、大伝馬町二丁目 丁子屋平兵衛、天保十四年 和本、絵入り本、25.8×18.3×20.5cm ぼおぶら屋古書店 宮城県仙台市青葉区上愛子 360,000 

また、翻刻本も二種、増訂故實叢書(吉川弘文館)と、東洋文庫(平凡社)で刊行。 

 

註二・・鳥羽絵(とばえ) 《戯画に長じたと伝える平安後期の僧、鳥羽僧正覚猷(かくゆう)にちなんでいう》 江戸時代、日常生活を軽妙なタッチで描いた墨書きの戯画。今日の漫画にあたり、大坂の松屋耳鳥斎らの手によって盛んになった。 

 

今日の寫眞・・『貞丈雑記 十上』と『鳥羽絵本集(一)』。それと、「ほーむ」の寫眞の五匹が譲渡會のためにつれていかれたあと、捕獲されて一時預かりしてゐる二匹。これもノラです。