八月十日(金)甲戌(舊六月廿九日) 曇りのち晴

 

久しぶりに古本市に行つてきました。はじめのうち、だいぶふらふらしてゐましたが、歸るころには足取りもしつかりしてきました。「かねいち」さんでうな重を食べたからでせうか。 

神田の古書會館はもちろん、澁谷驛の東急東横店で開催中の 《渋谷大古本市》 をも訪ねました。内容は、澁谷のはうが充實してゐたやうに思ひます。源氏物語關係書もたくさん出てゐました。 

ぼくが求めたのは三册だけ(今日の寫眞參照)。歸宅したら、五四〇〇歩でした。

 

行き歸りの電車のなかで、觀世流稽古用謠本の 『夕顔』 を讀みました。文庫本より小さな册子(袖珍本?)で、これまでにも何册も讀んできました。文字は變體假名は使はれてはをりませんが、くづし字を讀んだ氣持ちになれるかも知れません。 

内容は、『源氏物語〈夕顔〉』 を素材としたもので、「都へ上った豊後の国の僧が、五条辺りで夕顔の上の跡を弔っていると、その霊が現れ、光源氏と契りを結んだ昔をしのんで舞い、僧の回向を喜んで消える」 といふものです。 

ぼくはまだ實際に能樂を鑑賞したことがありません。機會があれば國立能樂堂へ行つてみたい。

 

尚、參考のために、『源氏物語』 を題材とした「謡曲」十曲をあげておきます。

 

半蔀・・夕顔の上が源氏の君と出逢い、契りを結んだ恋の思い出を描いた物 

夕顔・・儚く亡くなった夕顔の上の悲しい運命を語った物 

葵上・・御息所が、怨念から生霊となって葵上に取り憑き命を奪うが、やがて僧侶の祈りで成仏する。 

野宮・・光源氏に捨てられた六条御息所の心情を描く 

須磨源氏・・感銘を読み込んだ謡で、光源氏の経歴を物語る 

住吉詣・・光源氏と明石の上の悲しい別れを描いている 

玉鬘・・玉鬘の苦悩と運命を描き、〈浮舟〉の影響を受けたといわれる 

落葉・・夫亡き後、夕霧に対する思慕の情をしみじみ描いた物 

浮舟・・匂宮と薫に愛され、恋に苦しみ物の怪に憑かれて投身する 

源氏供養・・巻名を織り込んだ名文で、『源氏物語』 の無常を説いたもの 

 

今日の寫眞・・・今日求めた三册(合計で九〇〇圓也)。左から二册目は、以前、同著者の 『源氏物語の謎』 とともに入手した本。