九月廿二日(土)丁巳(舊八月十三日) 雨のちやみ、夕方には晴

 

今日は、自分の氣分に負けずに、豫定されてゐる古書市に出かけてきました。神保町と高圓寺の二か所の古書會館です。 

神保町のはうでは、いちど手放してしまつた、敎へをいただいた松木冶三郎先生の 『人間Ⅱ その罪と信仰をめぐって』(アルパ新書) が見つかりました(二〇〇圓)。これには 「イエス・キリスト」 といふ、いはゆる史的イエスの問題について、松木先生の「二十年におよぶ研究課題」である論文が入つてをり、もう一度きちんと讀んでみたく思つたのでした。

 

つづいて、都營地下鐵新宿線と中央線を乘り繼いで高圓寺に向かひました。そこでは、掘り出し物としか言へない本と、まるでごみ溜めみたいなんて言つてしまひましたが、ほとんど新刊本と言つてもいい棚の中からも収穫がありました。 

まづは和本。といつてもぺらぺらの册子ですけれど、それが二册。それから、服部さんから薦められてゐた、飯嶋和一さんの 『聖夜航行(上下)』 です。定價では買へないなとあきらめてゐたのに、三分の一の値段でした。それと、『春画で学ぶ江戸かな入門』 ですね。これも廉價。しかも、いつもの高圓寺茶房で休憩をとりながら讀んだ、〈はじめに〉の内容が氣に入りました。

 

「今や我が国でくずし字を読める人口はごくわずかで、江戸時代に書かれた膨大な書物の実に九十九パーセントが未解読のまま捨て置かれているそうです。ということは、くずし字の識字率が上がれば歴史的新発見につながる可能性が高いと言えます。・・・本書によって一人でも多くの方にくずし字を習得していただき、我が国の文化遺産を読み解いていただければ幸甚です」。

 

どうです。著者は吉田豐さんと、はじめてお名前を知つた車浮代といふ方。しかも、お勉強の題材は「春画」ですよ。言ふことありませんね。ぼくもがんばります。

 

最後に、高圓寺ガード下の、藍書店に寄りました。ここはしつかりとした本を置いてゐる古書店で、何度も掘出し物を見つけたことがありましたが、今日は、店の外の廉價本棚のなかから、ぼくにとつては寶物を掘り出すことができました。 

古典文庫の、『土佐日記』 と 浮世草子複製の 『眞實伊勢物語』、それに、上田秋成の 『書初機嫌海 附、くせ物かたり』 です。しかも各一〇〇圓。それで、うれしさあまつて、店内の國文學の棚で見つけた、齋藤曉子著 『源氏物語の仏教と人間』(桜楓社) も買つてしてしまひました。

 

「押せば命の泉わく」ではなく、「古書は命の泉なり」でありますね! 今日はなによりも、元氣といふか生きる力を與へられました! 

お晝はかき揚げそばを、早めの夕食はお壽司をお好みでいただいて、まだまだこの世とおさらばできませんと自分に言ひ聞かせながら歸路につきました。 

 

今日の寫眞・・・高圓寺古書會館の、決してごみ溜めではないけれど似たやうな平臺。それと、今日の収穫。薄い和本は、『筆法七十三點』 と 『こそだて和讃』。「歴史的新発見」があるかも知れません!