九月廿九日(土)甲子(舊八月廿日) 

 

今日は寒い日で、しかも外は雨。それで、部屋にこもつて讀書の旅をしました。インディアナポリスから、ココモ、そしてシカゴ、さらにまた、インディアナポリスへと目まぐるしくドライブし、やつと「事件」が解決。たうとう讀み終はらせました。マイクル・Z・リューインの探偵アルバート・サムスン・シリーズ第三作、『内なる敵』 です。でも、大旅行したわりには面白さにかけました。

 

もうひとつ、『素龍淸書本 おくのほそ道』 の旅のはうは、半ばを過ぎて〈羽黑山〉までやつてきました。 

途中いい文章があつたので寫しておきます。漢字は芭蕉が書いたそのまま。ただ康衡は誤りでただしくは泰衡。句點と讀點をつけました。 

 

〈壺の碑〉より・・ 「むかしよりよみ置る歌枕、おほく語伝ふといへとも、山崩川流て道あらたまり、石ハ埋て土にかくれ、木は老て若木にかハれは、時移り代変して、其跡たしかならぬ事のみを、爰に至りて、疑なき千歳の記念、今眼前に古人の心を閲す。行脚の一徳、存命の悦ひ、羈旅の勞をわすれて、泪も落るはかり也」

 

〈平泉〉より・・ 「康衡等か旧跡ハ、衣か關を隔て、南部口をさし堅め、夷をふせくとみえたり。偖も、義臣すくつて此城にこもり、功名一時の叢となる。国破れて山河あり、城春にして草靑みたりと、笠打敷て時のうつるまて泪を落し侍りぬ。 

  夏草や兵ともか夢の跡〉 」