十月廿五日(木)庚寅(舊九月十七日・望) 

 

今日も、モモタをひざに、ココを胸に抱いて讀書。靑表紙本 『源氏物語〈明石〉』 を三十頁ほどよみ進みました。

 

嵐と落雷によつて邸は炎上。須磨から去りたいと願ふところに、明石の入道の救ひの手が差しのべられ、源氏一行は須磨から明石の入道の館へ移ります。 

そこは都に劣らぬ豪奢な住まひであり、源氏はやうやく落ち着きを取り戻しました。が、明石入道は源氏に自分の娘を嫁がせたいと考へ、事あるごとに迫るのでありました。

 

「申上げにくい事でございますが、あなた樣が思ひ懸けなくこの土地へ、假にもせよ移つておいでになることになりましたのは、若しか致しますと、長年の間老いた法師がお祈り致して居ります神や佛が憐みを一家にお懸け下さいまして、それで暫くこの僻地へあなた樣がおいでになつたのではないかと思はれます。 

その理由は住吉の神をお賴み申すことになりまして十八年になるのでございます。女の子の小さい時から私は特別なお願ひを起こしまして、毎年の春秋に子供を住吉へ參詣させることに致して居ります。また晝夜に六回の佛前のお勤めを致しますのにも自分の極樂往生はさしおいて私はただこの子によい配偶者を與へ給へと祈つて居ります。・・・ 

どうかして京の貴人に娶つて頂きたいと思ひます心から、・・・命の有る限りは微力でも親が保護をしよう、結婚をさせない儘で親が死ねば海へでも身を投げてしまへと私は遺言がしてございます。」 

などと書き盡くせない程のことを泣く泣く云ふのであつた。源氏も涙ぐみながら聞いてゐた。(以上 〈三笠文庫〉版 與謝野晶子譯です) 

 

まあ、このやうに言はれて源氏も冷静ではをれなかつたでありませう。でもこれはまだほんのてはじめだつたやうです。 

一氣に三十數頁も讀めたのは、物語がすなほだつたからであります。すらすらよみながら話の筋がたどれればそれでいいので、このぶんだとすぐにでもよみ終へることができさうです。