二〇二二年三月(彌生)一日(火) 舊暦一月廿九日(癸丑) 晴一時小雨

竹内涼 『妖草師』(徳間時代小説文庫) をなかばまでよみすすんだが、どうしてもついていけずに放り投げた。このやうな妖術ものは肌にあはん!

それで、こんどは、ドイツのフランクフルト近郊のまちを舞臺とした刑事もの、ネレ・ノイハウス 『死体は笑みを招く』(創元推理文庫) をよみはじめる。

 

夕方、靜岡縣濱松市在住のセッツ(節子さん)から電話があつた。近況報告ではあつたが、話しはマキさんとデコさんの病氣のことになり、それはコロナワクチンを接種したからだとセッツはいふ! 彼女は近しいひとびとにはワクチンを打つのはやめるやうに訴へてきたらしい。デコさんにも傳へたらしいが、それを聞かずに打つたために、セッツに言はせれば「自己免疫疾患」になつたのだと主張する。ぼくが、打たないことにしてゐると言つたら、大變驚き、「はじめてだよ、打たないといふ人の話を聞いたのは」、といつて大感激! それほど感激してもらふこともないけれど、去年の八月によんだ、といふか目を通した二册の本の内容を知れば、接種しないと覺悟するのは當然だと思ふ。その二册とは・・・

内海聡著 『医師が教える新型コロナワクチンの正体 本当は怖くない新型コロナウイルスと本当に怖い新型コロナワクチン』 

高橋徳・中村篤史・船瀬俊介著 『知らないほうが……幸せかもしれない コロナワクチンの恐ろしさ』

 

 

三月二日(水) 舊暦一月卅日(甲寅) 晴のちくもり

陽のあたる窓べで、猫たちをひざと胸に、机の前で讀書。

ネレ・ノイハウス 『死体は笑みを招く』 よみつづける。

 

三月三日(木) 舊暦二月一日(乙卯・新月) 晴

ネレ・ノイハウス 『死体は笑みを招く』(創元推理文庫) 讀了。

つづいて北上次郎さん絶賛の、ジョン・ハート 『川は静かに流れ』(ハヤカワ文庫) をよみはじめる。舞臺は、アメリカ合衆國のノースカロライナ州のサウスベリー近郊の田園地帶、といふか田舎町。

 

三月四日(金) 舊暦二月二日(丙辰) 晴のちくもり

お忍び散歩、といふわりには今日は大膽な古本市めぐりだつた。

まづ、神保町の古書會館の古本市。ねらひは舊字舊假名の文庫本。ねらひ違はず、まとまつて數册發見。お晝は御茶ノ水驛の誠鮨でいつものランチをいただき、中央本線で国分寺驛經由、西武鐵道の所澤へ向ふ。驛前のくすのきホールで開催中の古本市は、八階ホールの入口に立つただけでため息がでるほど廣い。左右と正面の窓と壁際の平臺に並べられた文庫本から見てゆく。途中でなんどからだを動かしてほぐしたことか。収獲はすべて文庫本だつたが、とくに、チェーホフの 『シベリヤの旅』(岩波文庫) と、神西淸 『恢復期 他三篇』(角川文庫)、北條民雄 『いのちの初夜』(角川文庫) などが掘出し物と言へるだらうか。夕食は、池袋東武デパート一二階の天龍で餃子をいただいて歸路につく。

今日の歩數・・・六五七〇歩 

 

三月五日(土) 舊暦二月三日(丁巳・啓蟄) 晴のちくもり

讀書しながら、けふも三匹の猫とともにすごす。

ぼくのそばでぬくぬくとしてゐる飼ひ猫はいいけれど、外ですごしてゐるノラたちはかはいさうだ。かといつて手なづけられるわけではないので、その世話はけつこうむづかしい。我が家の敷地で死んでくれれば最期をみとれるけれど、氣がつかぬまにどこかへ去つていつたノラも多く、いつまでも心殘りだ。

最近では、死にかけてゐた、と思はれるノラが、妻の介護で元氣を取り戻した。一匹はミケのばあさんで、歩く姿がしつかりとし、食欲も出てきた。もう一匹は、まだ若いと思つてゐた黒猫のブンちやんだ。ブンは、たまに遠出するので心配してゐたところ、つい最近、ふらふらになつて、しかもがりがりにやせた姿でやつてきた。すぐに捕獲して動物病院でみてもらひ、以後は我が中村莊のネコ部屋で看病の日々。食べ物も水も受けつけなかつたのが、やつと食べはじめ、ウンチの状態もいいやうだ。今では、妻が部屋に入ると、なでなでしてもらひたくてひざにのつてくるといふ。だが、外に放してあげてもいいものかどうか、惱みどころだ。

ところが、ひと月前ころから、黑い子猫が隣家の床下に住みつき、食事には我が家にやつてくるやうになつた。我が家に定住してゐるノラたちは、けつこう縄張り意識があつて、排他的なのだが、子猫にはやさしいといふか、許容するところがあつて、この子猫、來たての頃すぐに捕獲して病院で檢査してもらつたら、女の子といふことがわかつたので、ハコちやんと妻が名づけて面倒をみはじめたのである。臺所近くにそなへた「猫ハウス」に寢るやうにもなり、とても元氣でとびまはり、見てるだけでいとほしくなる。けれど、まだ妻にも觸れさせないらしい。 

 

三月六日(日) 舊暦二月四日(戊午) 晴

終日讀書。グレーが胸の中で寝込んでしまふと、身動きがとれなくなるけれど、小一時間、じつと耐へてあげるだけのいとほしさはじゅうぶんにある。それにつけても、グレーのやうに、ごく幼い時から育てるのと、ココのやうに、子猫でも一旦ノラになつた子を育てるのでは天地の違ひがあることを、このグレーとともにゐて知つた。

ジョン・ハート 『川は静かに流れ』(ハヤカワ文庫) 讀了。北上次郎さんが絶賛するのはいいけれど、ぼくは 「家族小説」 とか、「家族の物語」 といふのはどうも苦手である。それでも後味の惡い内容ではなかつた。

 

三月七日(月) 舊暦二月五日(己未) 晴

日本橋の齒科へ通院。十一時半から一時間、今日は上の根元が傷んでゐる齒の治療。これも、いままで氣になつて仕方なかつたのでありがたかつた。

晝食を食べたのち、地下鐵で銀座で下車して、久しぶりに敎文館を訪ねる。目についた 『日本基督教団年鑑 2022』 を開いてみたら、ぼくが務めた中靜分區と西靜分區の敎會のすべてを確認したら、ぼくが知つてゐる牧師は一人もゐなかつた。まあ、時代が變はつたといふことだ。だから、党派がどうのと騒ぐこともなかつたのだが、現在はどうか、まだ「井の中の蛙」をやつてゐるのだらうか?

それから表參道で千代田線、代々木上原で小田急線に乘り繼いで町田に足をのばした。ところが、ブックオフをみてから馬刺しの “柿島屋” をたずねたら、なんと休みであつた。ガクつときたけれど、驛へ向ふ途中の店ですませて歸路につく。

今日の歩數・・・七〇四〇歩

 

三月八日(火) 舊暦二月六日(庚申) 小雨のち曇天、冷える

今日は慈惠醫大病院へ通院日。少し早めに着いたところ、たいへん混んでゐて、いつもとは逆に心電圖檢査とレントゲン撮影を先に、血液檢査はあとまはしになつてしまつた。それで安心したところ、齒科の豫約もはいつてゐたことに氣づき、すべりこみセーフで診てもらふことができ、抜齒のための入院についてなどの確認もできた。

循環器内科では、日頃の體重・血壓を報告し、血液檢査の結果をお聞きしたら、BNP値が高止まりのほかはかはらず。不整脈もみられず、レントゲンはきれいなものだつた。抜齒・入院については、連絡があればすぐに循環器内科から應援に行くことになつてゐると聞いて、より一層安心した。

歸路、冷たい風の吹くなか、神保町を探書散歩。さすが人通りは少なかつたが、舊字舊假名の文庫本を數册見いだして滿足。

今日の歩數・・・八二〇〇歩

 

三月九日(水) 舊暦二月七日(辛酉) 晴

今日はあたたか。猫たちとともに机の前で讀書。

先日求めた、エド・ゴーマン 『夜がまた来る』(創元推理文庫) をよみはじめる。

 

明治時代に山形縣鶴岡市から出てきたぼくの祖父の名は、中村文四郎といふ。その文四郎といふ名は、藤沢周平の小説にも登場し、鶴岡、すなはち庄内生まれの人に多いのかなと漠然と思つてゐたけれど、森銑三さんの 『傳記文學 初雁』(講談社学術文庫) を讀んでゐて、そのわけがわかつたやうな氣がした。その中の 〈真男児佐藤文四郎〉 によると、かの有名な上杉鷹山公に仕へたのが佐藤文四郎といふ名の「頼もしい人物」であつたのだ。この名を我が子につけた人は意外に多いのかもしれない。

 

三月十日(木) 舊暦二月八日(壬戌・上弦) 晴

釋仰誓撰 『妙好人傳 初篇下』(美濃國垂井 中山園藏版 天保十三年) 讀了。

また、エド・ゴーマン 『夜がまた来る』(創元推理文庫) も讀了。これはいささかもの足りなかつた。 

 

三月十一日(金) 舊暦二月九日(癸亥) 晴

今日のお忍び散歩は、古本と好物めぐりに始終した。

神田の古書會館は一〇時の開館時間にあはせて入り、和本を一册と舊字舊假名の文庫本を數册。和本は、『公武榮枯物語』(元禄六・一六九三年) と言ひ、その〈卷第一〉。内容は、「高倉院第四の宮御即位の事」、「後鳥羽院武家追罰思召立給ふ事」、「頼家修善寺にてうしなはるゝ事」、「實朝右大臣拝賀の事」等で、いかに色褪せてぼろぼろだとはいへ求めざるをえなかつた。

一一時には見終り、向かひの “マジカレー” で久しぶりにビーフカレーをいただき、御茶ノ水驛まで文坂をあがつて、快速で高圓寺に向かつた。

西部古書會館も今日が初日で、いつもより人出が多く、氣をつかひながら探書にはげみ、文庫以外はご法度にしたのに、斉藤由美子 『沙石集の語法論攷』(おうふう) を求めてしまつた。『沙石集』 についての參考書は少なくて、いい手がかりになりさうである。しかも著者は、關學の方なので、まあ許すことにした。その他、正宗白鳥の 『讀書雜記』(三笠新書 舊字舊假名)、矢口進也 『漱石全集物語』(岩波現代文庫) など。

無住法師の 『沙石集 卷第二』 讀了。ただしこの卷は雄山閣文庫でよんだ。『圓光大師傳(法然上人行状畫圖)』 と同樣和本では缺けてゐたからだが、活字化されてゐるとは言へ、内容は難しくてちんぷんかんぷんである。ただ、本書は、「庶民を教化・啓蒙するために、説話を随所にまじえながら仏法の趣旨を説いたもの。和歌説話、笑話、動物説話なども多く、内容は多彩をきわめる」、といふのだから、もつと面白くなることを期待するしかない。

今日の歩數・・・五六〇〇歩

 

三月十二日(土) 舊暦二月十日(甲子) 晴

森銑三 『傳記文學 初雁』(講談社学術文庫 新字舊假名) 讀了。すこぶる面白かつた。つづいて同じ森銑三さんの 『近世人物夜話』(講談社文庫 新字舊假名) をぼちぼちよみはじめる。ぼちぼちといふのは、内容は「人物研究」だからであり、急いでよんではもつたいないからでもある。

さういへば、現在讀してしてゐるのは何册だつたか、『平家物語』 にしろ、『養生訓』 にしろ、『妙好人傳』、『沙石集』 みな變體假名だからでもあつて、ぼちぼちと樂しみながら讀むにしかず。

その他、海外ミステリーやら、《文人たちの回想録》 を拾ひ讀みしたり、讀書もけつこう忙しい。

 

三月十三日(日) 舊暦二月十一日(乙丑) 晴

今日は横になつて讀書。すこし疲れがたまつたらしい。

ヘニング・マンケル 『苦悩する男 上』(創元推理文庫) をよみつづける。刑事クルト・ヴァランダー・シリーズ最終卷にあたるが、今までの事件とは樣相がことなり、まるで探偵ヴァランダーの活躍だ。

 

三月十四日(月) 舊暦二月十二日(丙寅) くもりのち晴

今日も日本橋の齒科へ通院。十一時から四〇分あまり上の齒の治療を繼續。いよいよ今週末には入院しての抜齒だ。いささか緊張する。

晝食をいただいたあと、東西線で早稻田に向かひ、はじめて漱石山房を訪ねた。その山房跡には記念館が建つてゐたが、今日は月曜日で休館日だつたのが殘念。記念館のある漱石公園をひとめぐりし、夏目坂通りを經て、穴八幡宮、早稻田通りを古本屋街まで歩いた。古書店街といつても人通りはなくてさびしい。それでも、舊字舊假名の文庫本を數册買ひもとめることができた。

高田馬場二丁目のバス停から上野公園行の都バスに乘り、上野広小路で下車、歸路に着く。

今日の歩數・・・八五九〇歩

 

 


 

三月十五日(火) 舊暦二月十三日(丁卯) 小雨のち晴

終日讀書。ヘニング・マンケル 『苦悩する男 下』(創元推理文庫) 讀了。

内容・・・刑事クルト・ヴァランダー59歳。同じ刑事の道を歩む娘のリンダに子どもが生まれた。リンダのパートナー、ハンスの父親のホーカンは退役した海軍司令官、母親のルイースは元教師だが、突然ホーカンが姿を消してしまう。ヴァランダーは娘のため、孫のために、ときおり襲う奇妙な記憶の欠落に悩まされながら、ホーカン失踪の謎を調べ始める。刑事ヴァランダー最後の事件、北欧ミステリの金字塔シリーズ最終巻。 

 

三月十六日(水) 舊暦二月十四日(戊辰) 晴

朝一で、慈惠大學病院へ行き、明後日の入院にそなへて「入院前PCR檢査」 を受ける。陰性の場合は連絡はないといふ。

一〇時半には病院をあとにし、千代田線で柏に向かひ、高島屋新館の本屋で休憩。晝食後、太平書林さんを訪ねて文庫本三册。それから夕方まで高島屋新館五階の本屋のフロアーのカフェに入り、先日求めた 矢口進也 『漱石全集物語』(岩波現代文庫) をよみあげてしまふ。

歸路、常磐線で日暮里驛經由で歸る。

夜、一一時三五分、大地震。震源は十一年前の地震の震源の近くといふ。

今日の歩數・・・六二四〇歩

 

三月十七日(木) 舊暦二月十五日(己巳) 晴のちくもり

昨夜、坪内祐三 『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り 漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代』(新潮文庫) をよみだしたらやめられず。ただ、これは文庫本で七五〇頁もある。明日の入院には何を持つていかうか迷ふ。

幸ひ病院から電話がなかつた。 

〈東山會春満喫の旅〉について詳しい案内がとどいた。長瀞と秩父路だ。往路、熊谷驛からは蒸氣機關車に乘れるのがこれまた樂しみである。今回の幹事さんは、中仙道を歩くの旅の添乘員をしてくださつたTさん。さすがプロのコース選びである。

 

三月十八日(金) 舊暦二月十六日(庚午・滿月) くもり

朝一で慈惠大學病院に行き、齒科で抜齒し、そのまま入院。ただ順序としては、外來に到着後ただちに入院し、午後一時半から抜齒。それなのに、晝食は抜齒後の献立で、どろどろのものばかり。埋もれた齒の抜齒には一時間半ほどかかり、なにしろ痛かつた。抗生劑の點滴をうちながらの治療だつたが、痛くて痛くてからだがずり落ちさうになつた。抜齒のあとを七針も縫つたので、そのあとがまた悲慘。血壓もあがり、不整脈も生じた。痛め止めをのんでどうやら以後ベッドでよこになる。夕食は、入れ齒を入れると傷にさはるので、いくらどろどろでもほとんど食べられず。でも、入院できたので安心してまかせられた。

出がけに、結局、坪内祐三 『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り 漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代』(新潮文庫) を持つて出ることにした。ただ落ち着いてよむことはできなかつた。

 

三月十九日(土) 舊暦二月十七日(辛未) 晴のち雨

入院した病室はE棟一〇階で、初めての部屋だつたが、看護婦さんもやさしく、快適だつた。出血もとまり、痛みもうすらぎ、入れ齒を入れて食事することはまだできないが、あとは退院するのみとなつたとき、循環器内科の醫師が來てくれて不整脈の状態を診てくれた。それで思ひのこすことなく退院できた。

昨日からほとんど食べてゐなかつたけれど、歸り、神保町で開催中の 〈神田古本まつり 青空掘り出し市〉 に寄つた。ただ、用心して、神保町交差點から靖國通りを専大前交差點まで、ワゴンセールの文庫本に照準をあはせて歩き、それでもお目當ての二册をゲット。

夕食は、とろろ汁と湯豆腐、それに大好物のレバーの甘煮、みな柔らかいものにしてもらつた。痛かつたけれどおいしく食べられてよかつた。

今日の歩數・・・二五六〇歩

 

三月廿日(日) 舊暦二月十八日(壬申) 晴

終日休息。抜いた齒ぐきのあとには糸が飛び出てゐて、舌があたるのもいやだが、入れ齒がつけられるやうになつたので糸もかくれ、痛みもなく從來通りのものが食べられるようになつた。めでたしめでたし。

ヘニング・マンケル 『手/ヴァランダーの世界』(創元推理文庫) 讀了。「単行本初収録の短編と著者自身が書いたシリーズ各巻の解説、全登場人物、地名索引を併録。シリーズ読者必読の一冊!」。これでシリーズ完結といふ一册であつた。 

現在何册の本を併讀してゐるだらうか。一氣によまなければならないものはなささうなので、つまみよみはさらに増えさうだ。

 

三月廿一日(月) 舊暦二月十九日(癸酉・春分) 晴

あらためて、神保町で開催中の 〈神田古本まつり〉 に出かけた。本日限りといふこともあつたが、先日買ひそこねた本が無性に惜しくなつて再度たずねたわけだつた。幸ひまだ賣れずにあつたものを手に入れ、さらに先日まはらなかつた、靖國通りは駿河臺下交差點までのワゴンを渉り歩いた。一番の掘出し物は、齋藤敏夫著 『天路程物語』(日曜世界社 兒童宗敎文藝叢書 昭和二年) だらう。

晝は、思ひ切つてアルカサールの和風ステーキに挑戰し、完食できたことはうれしかつた。歸宅後、夕食は夕食で、いつものまぐろ山かけとともに酢だこが食べられたので、齒の方の心配もほとんどなくなつた。

今日の歩數・・・四〇四〇歩

 

三月廿二日(火) 舊暦二月廿日(甲戌) 雨一時雪、冷え込む

今日は眞冬にもどつたやうな寒さ。その雨の中、日本橋の齒科へ通院。十一時から、慈惠で抜齒したあとを確認して消毒し、今後の豫定を話してくださつて終了。

晝食をいただき、ただちに歸宅。午後は、猫たちとぼんやりとすごす。C・J・ボックス 『発火点』(創元推理文庫) がおもしろい。

今日の歩數・・・三一四〇歩

 

三月廿三日(水) 舊暦二月廿一日(乙亥) くもり、寒い

今日は寒くて、母の座るこたつに入りこんで讀書。

C・J・ボックス 『発火点』(創元推理文庫) 讀了。

 

三月廿四日(木) 舊暦二月廿二日(丙子) 晴

牛田乘換へ、東武電車で業平橋驛下車、“銀座天龍 ソラマチ店” の餃子を食べに出かけた。八つあるうちどうにか六つを食べ、二つはのこしてしまつた。それでも腹いつぱい。

地下の押上驛から、新橋まで行き、SL廣場で開催中の古本市を見てまはる。暖かいといふ豫報だつたが、風が寒くて早々に歸路に着く。

前坂俊之 『ニッポン奇人伝』(現代敎養文庫) 讀了。

今日の歩數・・・三一六〇歩

 

三月廿五日(金) 舊暦二月廿三日(丁丑・下弦) 晴

慈惠大學病院齒科に通院。抜齒から一週間たつた今日抜糸。痛いかと緊張してゐたけれど、少しも痛くなくて救はれた思ひだつた。

今日は二か所の古書會館で古本市。まづ、都營三田線と淺草線を乘り繼いで五反田の古書會館へ。文庫本を數册求める。晝食をいただき、次いで、JR五反田驛から代々木驛經由で御茶ノ水驛下車。神田の古書會館では、和本一册のみ。今日は、その 『火急用意和譚』(文化四年) と、森鴎外 『水沫集 上卷』(春陽堂文庫 昭和七年) が掘出し物だつたか。

さらに馬刺しを食べに町田に遠征し、ブックオフで海外ミステリーを數册。スエーデンやドイツのミステリーはやめられない面白さだ。柿島屋が蔓延防止期間が解除されたためにやつと開店し、馬刺しを満喫。

今日の歩數・・・九五九八歩

 

三月廿六日(土) 舊暦二月廿四日(戊寅) 雨降つたりやんだり、強風

終日横になつて讀書。

坪内祐三 『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り 漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代』(新潮文庫) やつと終盤にかかる。

 

三月廿七日(日) 舊暦二月廿五日(己卯) くもり

終日讀書。ネレ・ノイハウス 『悪女は自殺しない』(創元推理文庫) をよみつづける。 

 

三月廿八日(月) 舊暦二月廿六日(庚辰) 晴のちくもり

日本橋の齒科へ通院。十二時から、上の齒の治療繼續。

晝觸後、廣小路と秋葉原のブックオフを訪ねたけれど一册も収穫なし。さらに水道橋驛經由で神保町を訪ね、ワンダーで、やつと探してゐた、「刑事マルティン・ベック」(角川文庫)シリーズを三册みつけた。そこで、時間も早いし、まだお晝に食べたものが消化されてゐなかつたけれども、“成光” のラーメンをいただいてから歸路に着く。

昨夜、ネレ・ノイハウス 『悪女は自殺しない』(創元推理文庫) 讀了。

今日の歩數・・・七四一〇歩

 

三月廿九日(火) 舊暦二月廿七日(辛巳) 曇天

坪内祐三 『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り 漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代』(新潮文庫) 讀了。面白かつた。いや、ただ面白いだけでなく、誘發されてといふか刺激されて、例へば、正岡子規の 『筆まかせ』 とか、内田魯庵の 『思ひ出す人々』、淡島寒月の 『梵雲庵雑話』、さらに、今までは見向きもしなかつた伊藤整の 『日本文壇史』 などまでよみたくなつた。七人の一人、幸田露伴の 『幸田露伴紀行文集』 をすでによみすすんでゐるが、旅の樣子がじつに面白い。

 

三月卅日(水) 舊暦二月廿八日(壬午) くもり

鹽谷贊編 『幸田露伴紀行文集』(新潮文庫) 讀了。露伴が二十歳から二十五歳までの紀行文七篇がおさめられてゐるが、文章が文語體で、しかもまつたくよめない漢字が多々みられる。旅の仕方は、それこそ徒歩が主で、人力車や船、そしてたまに開通したばかりの鐵道も利用してゐる。なかでも、中仙道や恐山、佐渡の記述が秀逸で、とくに佐渡には訪ねてみたくなつた。

 

三月卅一日(木) 舊暦二月廿九日(癸未) くもり

幸田露伴の 「紀行文集」 につづき、その紀行を舞臺にした 『風流仏・一口剣』(岩波文庫) をよみはじめる。ともに二十二、三歳の頃に書かれてゐるので、「紀行」 にどつぷりと浸かつてゐるさなかでの作品で、露伴の出世作といはれる。文體は同樣文語體だがよみやすい。

明日は待ちに待つた 〈東山會春満喫の旅〉 である。中仙道を一緒に歩いた旅友との小旅行も十四回になる。今回は、その添乘員だつた(いや、現在も添乘員として活躍中の)高橋さんの案内で、櫻満開(?)の長瀞・秩父を歩く。どんな旅になるかこころが躍る。

その行き歸りによむ本を選んでゐたら、先日よんだ 『発火点』 の著者、C・J・ボックスの 〈猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ〉 の第一作、『沈黙の森』(講談社文庫) が目についたのでよみはじめたら止まらなくなり、ついに讀みあげてしまつた。ハラハラドキドキ、じつに面白かつた。

 

 

 

三月一日~卅一日 「讀書の旅」 ・・・』は和本及び變體假名・漢文)

三日 ネレ・ノイハウス 『死体は笑みを招く』 (創元推理文庫)

六日 ジョン・ハート 『川は静かに流れ』 (ハヤカワ文庫)

十日 釋仰誓撰 『妙好人傳 初篇下』 (美濃國垂井 中山園藏版 天保十三年)

同日 エド・ゴーマン 『夜がまた来る』 (創元推理文庫)

十一日 無住道曉 『沙石集 卷第二』 (雄山閣文庫 舊字舊假名)

十二日 森銑三 『傳記文學 初雁』 (講談社学術文庫 新字舊假名)

十三日 ヘニング・マンケル 『苦悩する男 上』 (創元推理文庫)

十五日 ヘニング・マンケル 『苦悩する男 下』 (創元推理文庫)

十六日 矢口進也 『漱石全集物語』 (岩波現代文庫)

廿日 ヘニング・マンケル 『手/ヴァランダーの世界』 (創元推理文庫)

廿三日 C・J・ボックス 『発火点』 (創元推理文庫)

廿四日 前坂俊之 『ニッポン奇人伝』 (現代敎養文庫)

廿七日 ネレ・ノイハウス 『悪女は自殺しない』 (創元推理文庫)

廿九日 坪内祐三 『慶応三年生まれ 七人の旋毛曲り 漱石・外骨・熊楠・露伴・子規・紅葉・緑雨とその時代』(新潮文庫)

卅一日 鹽谷贊編 『幸田露伴紀行文集』 (新潮文庫 舊字舊假名)

同日 C・J・ボックス 『沈黙の森』 (講談社文庫)