「讀書の旅」 二〇二〇年九月(長月)一日~卅日

 

九月一日(火)舊七月十四日(丁未) 曇天

飯嶋和一著 『星夜航行(上)』 よみすすむ。しかし、一頁一頁中身が濃くて、しかも地圖を見ながらではなかなか進まない。まあ、あわてることもないので、樂しみながら讀んでいきたい。

 

 

九月二日(水)舊七月十五日(戊申・望) 曇天一時雨また晴、曇り雷

妻の言ひ分にならひ、自分が動けなくなつてからではおそいので、まあ、多少からだを無理してでも、少しやりかけてゐた中村莊の工房の本を整理をした。工房の本を一應整理しながら、まづとなりの空き部屋(仕分け部屋)に運ばなくてはならない。

しばらくは、處分すべき本を隣の部屋へ運ぶといふ單調な作業がつづくが、なんといつても量が多く、今日は五かごほど。毎日やつてもひと月はかかるかもしれない。

昨夜、『星夜航行(上)』 がおもしろくて、たうとう明け方までよんでしまつた。舞臺が三河の岡崎から東は大井川あたりまでなので、なつかしく地圖を追ひながらよめた。

〈若菜上〉もわづかながらよみすすんでゐる。

 

 

九月三日(木)舊七月十六日(己酉) 雨晴交互、のち晴

今日も午前中、中村莊の工房の本の整理續行。あとは、横になつて讀書にふける。

 

 

九月四日(金)舊七月十七日(庚戌) 晴

今日は、所沢で開催中の 〈第95回 彩の国 所沢古本まつり〉 に出かけた。所沢驛では、ついでに食事處を探し回つたりしたので、よく歩くことができた。しかし、肝心の古本まつりは、収穫は文庫本一册だけだつた。

今日の収穫・・・塩見鮮一郎著 『賤民の場所 江戸の城と川』(河出文庫)。以下二册は上野のブックオフにて。嵐山光三郎著 『芭蕉という修羅』(新潮文庫) と 梓澤 要著 『捨ててこそ空也』(新潮文庫)。

 

 

九月五日(土)舊七月十八日(辛亥) 晴、暑い

かたづけも讀書も進まず。

 

 

月六日(日)舊七月十九日(壬子) 晴、突然の雨、雷とめまぐるしい

『星夜航行(上)』 讀み進み、ついに讀了。(下)にはいる。とても重厚な歴史小説である。

 

 

九月七日(月)舊七月廿日(癸丑・白露) 晴、横殴りの雨、時に雷

『星夜航行(下)』 よみつづける。

 

 

九月八日(火)舊七月廿一日(甲寅) 晴

『星夜航行(下)』 よみつづける。

 

 

九月九日(水)舊七月廿二日(乙卯) 晴のちくもり

午前中、工房の本を、十五かごほど仕分け部屋へ移動する。それからは讀書。『星夜航行(下)』 よみつづける。

 

 

九月十日(木)舊七月廿三日(丙辰・下弦) 晴

飯嶋和一著 『星夜航行(下)』(新潮社) 讀了。物語の時代は、天正三年(一五七五年)から、慶長一二年(一六〇七年)。熱がさめないうちに、その背景となる時代を、『史料綜覽 卷十一』 でたどつてみたい。

〈新潮社公式サイト『星夜航行』より〉─徳川家に取り立てられるも、罪なくして追われ、堺、薩摩、呂宋の地を転々とした沢瀬甚五郎。天下統一の激動の波に飲まれ、秀吉の朝鮮出兵の暴挙が襲いかかるが、彼は屈しなかった。史料の中に埋もれていた実在の男を、九年の歳月を費やして描いた著者最高傑作。

 

 

九月十一日(金)舊七月廿四日(丁巳) 晴、時々雷雨

妻の兄、椎野茂さんの葬儀に列席。四つ木齋場にて。享年八十六歳。

 

 

九月十二日(土)舊七月廿五日(戊午) 小雨降つたりやんだり

久しぶりに古本市をはしご。神田と高圓寺の古書會館。新型コロナ感染を氣にしてか、ともに人出はまばら。

藤沢周平著 『用心棒日月抄』 讀了。再々々讀になるけれど、何度よんでも新鮮でおもしろい。つづいて 『孤剣 用心棒日月抄』 に入る。

今日の収穫・・・すべて舊版の文庫本で、林子平著 『海國兵談』、國木田獨歩著 『武蔵野』、志賀重昂著 『日本風景論』。それと、「ちゃんと歩ける」シリーズの 『東海道五十三次 東』 と 『東海道五十三次 西』、『甲州街道』 と 『中仙道六十九次 東』(ちなみに、『中仙道六十九次 西』 は實際に手にして歩いてとても役に立つた)

 

 

九月十三日(日)舊七月廿六日(己未) 曇天のち雨、涼しい

『星夜航行』 の復習として、『史料綜覽 卷十一』(天正元年・一五七三年~) を讀んでゐたら、いきなり、「信長、石山本願寺ヲ撃タントシ、長岡藤孝ヲシテ、兵備を修メシム」、「信長、一向宗徒ヲ大坂城ニ攻メ、是日、入京ス」。さらに、途中に長篠の戰があつて、「信長、柴田勝家、瀧川一益、惟任光秀、羽柴秀吉等ヲ率ヰテ、越前ノ一向宗門徒ヲ攻メ、是日、府中ニ入ル」、とあつて、すでに買ひそろへておいた二册の本を思ひ起こさせた。

関西大学中世文学研究会編『龍谷大学図書館蔵 石山退去録』(和泉書院) と 津本陽著『火焔浄土 顕如上人伝』(角川文庫) である。

とくに、前者の帶の文句がおもしろい。

「秀吉の大阪築城の前、信長の石山本願寺攻め(石山合戦)を録した本願寺側による稀少の史料。合戦譚に特有の語り口が興味深く、説敎談義の信仰奇瑞譚も実に面白い。敗退したとはいえ、門徒には祖師の奇瑞に護られた輝かしい信仰があり、戦って勝てなかったのは仏敵法敵の信長自らであった。戦国軍記物の白眉」

また、『火焔浄土』 については、解説に、「元亀元年(一五七〇)九月から天正八年(一五八〇)八月までの十一年間にわたって、石山本願寺と織田信長との間で戦われた、いわゆる 『石山戦争』 を取り上げた歴史小説である」、とある。

で、『孤剣 用心棒日月抄』 とともに、『火焔浄土 顕如上人伝』 も讀むことにした。

 

 

九月十四日(月)舊七月廿七日(庚申) 曇天、肌寒い

『孤剣 用心棒日月抄』 讀了(再々讀)。『刺客 用心棒日月抄』 に入る。

 

 

九月十五日(火)舊七月廿八(辛酉) 曇天

通院後、神保町で古本散歩。収穫はなし。ブックカフェ二十世紀で休憩。

藤沢周平著 『刺客 用心棒日月抄』 讀み終へ(再々讀)、シリーズ第四册の 『凶刃 用心棒日月抄』 に入る。

 

 

月十六日(水)舊七月廿九日(壬戌) 曇天

朝食後、すこしのあひだ中村莊の本かたづけ。

柏に出かける。久しぶりに開催されたの柏モディ古本まつりを訪ねるためと、何か美味しいものを食べるためで、古本は文庫本一册のみ。

また、東武鐡道アーバンパークラインで新鎌ヶ谷驛經由で歸路につく。

今日の収穫・・・美川圭著 『白河法皇 中世をひらいた帝王』 (角川ソフィア文庫)

 

 

九月十七日(木)舊八月朔日(癸亥・朔) 曇天

今朝も早く目覺め、朝食後、本かたづけ。

藤沢周平著 『凶刃 用心棒日月抄』 讀了(再々讀)。ひきつづき、津本陽著 『火焔浄土 顕如上人伝』 をよみすすむ。

 

 

九月十八日(金)舊八月二日(甲子) 晴ときに曇り

今朝も食後、本かたづけ續行。

今日の讀書。津本陽著 『火焔浄土 顕如上人伝』 をよみすすむ。

 

 

九月十九日(土)舊八月三日(乙丑) 曇天のち一時小雨

朝食後、今日も本のかたづけ。賣却するものをダンボール箱につめはじめる。

津本陽著 『火焔浄土 顕如上人伝』(角川文庫) 讀了。信長の死後、顕如が、「信長滅亡によって、国々静謐にまかりなり、重畳に候」、とその書信にしたためてゐるやうに、これはまた秀吉にも言へることだが、殘酷非道な支配者があらはれることは、じつに國民國家の災難である!

 

 

九月廿日(日)舊八月四日(丙寅) 曇天一時小雨

朝食後、本のかたづけ。ダンボール箱詰め續行。青砥の竹内書店に電話して、近日中に本を持參することを傳へる。

かたづけ中に目にとまつた、北方謙三著 『擬態』(文春文庫) を手にとつてよみはじめたらやめられず。

 

 

月廿一日(月)舊八月五日(丁卯) 晴

中村莊の本のかたづけ、順調にすすむ。

また、北方謙三著 『擬態』、再讀なのにおもしろくて、一氣によみあげてしまふ。

つづいて、藤沢周平著 『夜の橋』(中公文庫) もよみ終へる。再讀だけれど、心に響いてくる作品が何篇かあつた。

 

 

九月廿二日(火)舊八月六日(戊辰・秋分の日) 晴のち曇天

今日も七時に起き。朝食後、午まで本のかたづけ。

その中から、鈴木輝一郎著 『本願寺顕如 信長が宿敵』 が目にとまり、すぐによみはじめる。

 

 

九月廿三日(水)舊八月七日(己巳) 曇天ときどき小雨

十五日に處方してもらつたエンシュアリキッドを飲み始めてから具合がよい。

 

 

九月廿四日(木)舊八月八日(庚午・上弦) 曇天、ときどき小雨

朝食後、書齋のとなりの猫部屋の和本を仕分け。

晝過ぎ、車に本を積んで、靑戸の竹内書店に本を持つて行く。見てもらつてゐる間に妻と晝食。もどつてみると、持ち込んだ十三箱のうち、買ひ取つてくれたのは五箱だけで、あとはかへされた。資源ごみにだすしかないといふ!

結局古本屋に賴れないのでほしい人に差し上げるしかないことがわかつた。

TSUTAYA靑戸店により、DVDを五枚借りてきた。そして、夜、その一枚、ブルース・ウィリス主演 “THE LAW 刑事の掟” をみたが、最新作にしては面白くなかつた。

 

 

九月廿五日(金)舊八月九日(辛未) 終日小雨

朝のうち、本のかたづけ少々。

銀座敎文館を訪ね、「聖書協会共同訳」の 『聖書』 を求める。だいぶ高價だつたけれど、新規蒔き直しのために、できれば讀み通してみたい。まあ、賣れた本の代金で買へたと思へば安いものだ。

 

 

九月廿六日(土)舊八月十日(壬申) 小雨降つたりやんだり

今日は休息日。それでも、鈴木輝一郎著 『本願寺顕如 信長が宿敵』 よみすすむ。ちよいと理屈っぽいけれど、『星夜航行』 と 『火焔浄土 顕如上人伝』 と同時代を主題にしてゐておもしろい。

TSUTAYAからのレンタル、今日は “脱走特急” をみた。ロシア映畫で、しかも先日の女スナイパーにつづいて、これも對ナチスドイツ戰に動員された女學生らの活躍による鐵道もので、面白かつた。

 

 

九月廿七日(日)舊八月十一日(癸酉) 曇天のち一時晴

今日は晝から本のかたづけ。人にあげるものは、ほとんどカゴから出し、床にならべることができた。

TSUTAYAからのレンタル、今日は “ブラッドショット” をみた。これは面白かつた。

 

 

九月廿八日(月)舊八月十二日(甲戌) 快晴

鈴木輝一郎著 『本願寺顕如 信長が宿敵』 讀了。ふーむ、『史料綜覽 卷十、十一』 をかたはらに、じつに勉強になつた。

つづいて、氣分をかへて、ローレンス・ブロックの 『殺し屋 最後の仕事』(二見文庫) をよみはじめた。

今日も中村莊の本のかたづけ、順調にすすむ。

夜、今日は “ローン・ソルジャー 極限戦場” をみた。製作國はハンガリーといふが、じつに地味といふか暗い内容の映畫だつた。

 

 

九月廿九日(火)舊八月十三日(乙亥) くもり

ローレンス・ブロックの 『殺し屋 最後の仕事』(二見文庫)、一氣に讀了。面白かつた。つづいて、ディック・ロクティ著 『眠れる犬』(サンケイ文庫) をよみはじめる。

TSUTAYAからのレンタル、今日は “荒野の誓い” をみた。

 

 

九月卅日(水)舊八月十四日(丙子) 晴

寢室窓際に置いたソファーベッドで讀書。『眠れる犬』 をよみつづける。