「讀書の旅」 二〇二〇年十月(神無月)一日~卅一日

 

 

十月一日(木)舊八月十五日(丁丑) 小雨のち晴

今日は、かたづけ作業はせず、ときどき猫たちを相手にしながらも、ソファーベッドで讀書。

ディック・ロクテイ著 『眠れる犬』(サンケイ文庫) 讀了。物語が複雑で、登場人物をたえず確認しながらも、じつに面白かつた。

つづいて、藤沢周平著 『時雨みち』(新潮文庫) をよみはじめる。

 

 

十月二日(金)舊八月十六日(戊寅・望) 晴

今日はいい天氣。高圓寺の古本市に行き、神保町にもどつて古本屋街を散歩。それで何册も古本を買ひこんでしまつた。

今日の収穫・・・『源氏物語五』(新潮日本古典集成─以前購入したはづなのに紛失してしまつたので再購入)、『万葉集』 (新潮古典文学アルバム)、角田文衛著 『京の朝晴れ』(角川書店)、『好色一代女』(岩波文庫、昭和十二年發行)、荒井章三著 『ユダヤ教の誕生』(講談社学術文庫)、吉田秀和著 『ソロモンの歌・一本の木』(講談社文芸文庫)、安岡章太郎著 『鏡川』(新潮文庫)、ローレンス・ブロック著 『処刑宣告』(二見文庫)、ジョン・ラッツ著 『別れのキス』(二見文庫) 以上九册。

 

 

十月三日(土)舊八月十七日(己卯) 晴

朝食後、中村莊の本のかたづけを少々。あとは、猫の相手と讀書を交互。

藤沢周平著 『時雨みち』 讀了。この短編集はよかつた。とくに心にしみたのは、「山桜」と「おさんが呼ぶ」だな!

〈若菜上〉もわづかながらよみすすんでゐる。

 

 

十月四日(日)舊八月十八日(庚辰) 曇天、朝方小雨、のち晴

今日は、猫の相手と本のかたづけをしつつ、古淨瑠璃の 「他力本願記」 を讀んだ。法然上人をめぐつてのはなしだつたけれど、漢字であれば理解できるところが、みなひらがななので、ときどき電子辭書のお世話になつた。

妻に賴んで、圖書館から北原亞以子の文庫本二册を借りてきてもらふ。慶次郎縁側日記を讀んでみたかつたからだ。

 

 

十月五日(月)舊八月十九日(辛巳) 晴

さてさて、今日は、はるばる川野さんをお迎へして、中村莊に運び込んだ古本を持ち歸つていただいた。晝から數時間、それで十分選んでいただけたやうなので、うれしかつたが、すこしも減つてゐないのは殘念だつた。またの機會を願ふ!

北原亞以子著 『その夜の雪』(新潮文庫) を讀みおはり、つづいて 『慶次郎縁側日記』 を手に取つたけれど、どうにもかみあわないといふのか、何を書いてゐるのかはつきりしないところがあつて、面白さが感じられない。それで、『慶次郎縁側日記』 は放り出した。

 

 

月六日(火)舊八月廿日(壬午) くもり

朝、日本橋高島屋から電話があり、遠近兩用の眼鏡(レンズ新調)ができたといふ。それで、すぐに出かけて受け取つてきた。讀書に關して、鼈甲ぶちよりずつと見やすくなる。

ローレンス・ブロック著 『倒錯の舞踏』(二見文庫) を讀みはじめる。

 

 

十月七日(水)舊八月廿一日(癸未) くもり一時晴のち曇天

肌寒いので、猫たちを相手に終日讀書。『倒錯の舞踏』 よみすすむ。

リクライニングソファー用に、電熱器入りのひざ掛けを出す。

 

 

十月八日(木)舊八月廿二日(甲申・寒露) 終日小雨

ローレンス・ブロック著 『倒錯の舞踏』 讀了。讀み應へあり。ずつと以前に何册かよんだが、よませる力はかはらず。つづけてよみたくなる。

 

 

十月九日(金)舊八月廿三日(乙酉) 雨

亮二郎君と上野で待ち合はせ、久しぶりに、とん八亭でヒレカツ定食を食べる。そして、一緒に歸宅し、本を二階から中村莊へ運ぶのを手傳つてもらふ。たいへん助かつた。それから、これも久しぶりにことぶき湯に一緒に入りに行つたけれど、とてもいい湯で、あらためて通ひたくなつた。

デイサービスから歸つてきた母とも會ひ、一緒に食事をして泊まつてもらふ。

 

 

十月十日(土)舊八月廿四日(丙戌・下弦) 雨

朝食後、亮ちやんに、昨日二階から運んだ、中村莊の工房の部屋の本を、隣の仕分け部屋に移動してもらつた。これも助かつた。

ローレンス・ブロックの 『獣たちの墓』 をよみあげてしまふ。つづいて、『死者との誓い』 に入る。

 

 

十月十一日(日)舊八月廿五日(丁亥) 曇天、時に小雨

終日讀書。ローレンス・ブロックの 『死者との誓い』 をよみすすむ。

 

 

十月十二日(月)舊八月廿六日(戊子) くもり

さて、今日はお二人目、我が處分本を取りに來てくださつたのは、源氏講座でご一緒したTさん。午後一時、堀切菖蒲園驛までお迎へし、仕分け部屋の本を見ていただく。たくさん選び取つてくださつたが、まだまだ減量にはほど遠い!

夜、アマゾンで、まだ讀んでゐないローレンス・ブロックを五册注文した。

 

 

十月十三日(火)舊八月廿七日(己丑) くもり

今日は神保町の三省堂に、ニューヨークの地圖を買ひに行つた。ローレンス・ブロックのマット・スカダー・シリーズを讀むには必携である。ところが、見やすいのがなかなかなくて、觀光ガイドブックの付録にいいのがあつた。が、本誌のはうはすぐに捨ててしまつた。

また、せつかくだから、探偵ものの文庫を探して何册か買ひ求めた。歸りは、新宿線で本八幡に行き、山本書店を見てから歸宅する。

今日の収穫・・・ローレンス・ブロック著 『冬を怖れた女』、リチャード・スターク著 『悪党パーカー/人狩り』、スティーヴ・ハミルトン著 『解錠師』、塩見鮮一郎著 『貧民に墜ちた武士 乞胸という辻芸人』、古浄瑠璃正本集刊行会編 『元禄歌舞伎せりふ正本集』 (和泉書院影印叢刊)。以上、五册。

 

 

十月十四日(水)舊八月廿八日(庚寅) くもり

今日はマキさんと、お花茶屋驛から龜有まで、曳舟川に沿つて散歩。殘念なことに、〈葛飾区郷土と天文の博物館〉は休館中であつた。

龜有で晝食後、千代田線で松戸驛まで行き、新京成線に乘つて新鎌ヶ谷驛下車、アクロスモール新鎌ヶ谷で開催中の古本市を見てから別れる。

ローレンス・ブロック、二册屆く。

 

 

十月十五日(木)舊八月廿九(辛卯) 曇天

ジョン・ラッツ著 『別れのキス』 一氣に讀む。フロリダが舞臺で、先日求めたニューヨークの地圖は役に立たなかつた。

そのニューヨークを舞臺とする、注文したローレンス・ブロック、四册屆く。

中村莊の本のかたづけをしてゐる際に目についた、北川忠彦編 『軍記物の系譜』 をよみはじめてみた。これは、和本の 「元版群書類從特別重要典籍集」 を讀むには便利で、ついでにその帙を出してきてひらき、讀む順番を確認したりしてひとり悦に入る!

 

 

月十六日(金)舊八月卅日(壬辰) 曇つたり晴れたり

今日は二か所の古本市を訪ねる。まづは、五反田の南部古書會館。靑砥驛から五反田驛まで、時間はかかるが直通で向ふ。じつに久しぶりである。つづいて、三田線で神保町に出、美味しくないラーメンを食べてから、東京古書會館を訪ねた。

久しぶりに、西秋書房と日本書房をのぞいたけれど収穫なし。総武線で淺草橋、都營淺草線に乘り換へて靑砥にもどつて歸宅する。

よく歩いたわりにはめぼしい本が見つからなかつた。以下買ひ求めた順に記す。

今日の収穫・・・『西鶴俗つれづれ』(古典文庫)、女好庵主人著 『こころの竹(春情心の多氣)』(和本)、加藤周一著 『日本文学史序説 上』(ちくま学芸文庫)、泉麻人著 『バスで田舎へ行く』(ちくま文庫)、小島政二郎著 『俺傳(おれでん)』(南窓社)、藤本孝一著 『日本の美術 468 「定家本源氏物語」册子本の姿』(至文堂)、ローレンス・ブロック著 『慈悲深い死』(二見文庫)逢坂剛著 『最果ての決闘者』(中央公論新社)。

 

 

十月十七日(土)舊九月朔日(癸巳・朔) 雨

寒いので、暖かくして終日讀書。ローレンス・ブロック著 『冬を怖れた女』 をよみすすみ、日付がかはつたころ讀み終る。ニューヨークの地圖が役に立つ。

 

 

十月十八日(日)舊九月二日(甲午) 雨のち曇天一時晴

寒いので、暖かくして終日讀書。北川忠彦編 『軍記物の系譜』 をよみすすむ。すでに、『平家物語』 についての考察にはいつてゐるが、平治の亂の一部である、複製の和本(寛永二十板の正本)、『待賢門平治合戰』 が目についた。

ちなみに、『待賢門平治合戰』 とは─「古浄瑠璃の作品。一六四三年(寛永弍拾年)の正本などがある。太夫の名は不明。六段よりなる。《平治物語》によった作品で,後半の源義朝の最期や鎌田政清の殺されるところなどに幸若舞《鎌田》によっているらしいところがあるが,それよりは簡単になっている。終りの方は説経節《鎌田兵衛正清》に似たところがある。かなり広い題材を扱っているために物語は筋書風になっているが,悪源太の活躍,朝長の切腹,義朝の最期,政清の横死,妻子五人の自殺,金王丸の武勇など,多くの見せ場を作っているところに,古浄瑠璃風の特徴が見られる」

また、ローレンス・ブロック著 『慈悲深い死』 をよみだす。

 

 

十月十九日(月)舊九月三日(乙未) くもり

終日讀書。

 

 

十月廿日(火)舊九月四日(丙申) 晴

通院後、日比谷驛のりかへで、千代田線、小田急線をのりついで町田に行く。まづ、ブックオフを訪ね、ローレンス・ブロックの文庫本を四册探して求める。

ローレンス・ブロック著 『慈悲深い死』 讀了。主人公の無免許探偵マット・スカダーのキャラクターがいい!

今日の収穫・・・ローレンス・ブロック著 『泥棒は選べない』、『泥棒はクロゼットのなか』、『ローレンス・ブロック短編集1 おかしなことを聞くね』、『快盗タナーは眠らない』。

 

 

月廿一日(水)舊九月五日(丁酉) 晴

北川忠彦編 『軍記物の系譜』 讀了。群書類從の〈合戦部〉を讀むには最適の參考書だ!

 

 

十月廿二日(木)舊九月六日(戊戌) 晴のちくもり

お晝を食べに出たついでに、関屋・牛田經由で錦糸町に行き、パルコの古本店をのぞいてみた。ちやちな店だが、文庫本を二册、吉本隆明・茂木健一郎 『「すべてを引き受ける」という思想』(光文社知恵の森文庫) と、E・R・バローズ著 『時間に忘れられた国(全)』(創元SF文庫) を求める。

『快盗タナーは眠らない』 讀了。舞臺がトルコからアイルランド、スペインのマドリード、さらに、フランス、イタリア經由でユーゴスラビア、ブルガリア、スロベニア、そしてソフィアからトルコへと、まるで海外旅行してゐるやうな冒険談で、歸宅してからグーグルマップですべての經由地を確認した。マット・スカダーものがニューヨークにかぎられてゐるのとくらべて、初期の作品とはいへおもしろいと思つた。

 

 

十月廿三日(金)舊九月七日(己亥・上弦) 雨のちやむ

終日寢てすごす。讀書もすすまず。

 

 

十月廿四日(土)舊九月八日(庚子) 晴

今日は、なんとしても散歩に出なければならなかつた。むろん古本散歩で、三か所の市を訪ねた。ところが、東京古書會館の特選古書即賣展であるはづが、會場での販賣はなし。そのまま中央線で高圓寺に向ひ、西部古書會館をたずねたら、ここは滿員の盛況さ! 時間をかけて見てまはつたが、たいしていい本はなかつた。次いで、錦糸町に向ひ、錦糸町パルコの古本市とやらに行つたところ、それが、錦糸町パルコの一階仲通にほんのわづかにならべられただけで、とても古本市などと呼べるものではなかつた。それで、北千住のなざわ書店を訪ねて出向いたところ、なんと學園通りから消えてなくなつてゐた!

 

 

十月廿五日(日)舊九月九日(辛丑) 晴

ローレンス・ブロック著 『墓場への切符』 讀了。もう、最高!

また、『宇治拾遺物語 卷第十』(和本) と、『源氏物語 三十四〈若菜上〉』(靑表紙本) もすこしづつ讀みすすんでゐる。

かつ猫のAさんが、明日入院するので、飼ひネコ三匹のうちの一匹を預かることになり、今朝妻が迎へにいつた。チャチャチャ(茶々)といふ名で、まだこどものやうだ。

 

 

十月廿六日(月)舊九月十日(壬寅)  晴

逢坂剛著 『最果ての決闘者』 を讀みはじめ、夜中までとまらず。

 

 

十月廿七日(火)舊九月十一日(癸卯)  くもつたり晴れたり

明け方四時、逢坂剛著 『最果ての決闘者』 讀了。一氣に讀ませたが、最後のところがあいまいで氣にくはなかつた!

また、『宇治拾遺物語 卷第十』 讀了。

つづいて、何を讀もうかと考へ、さうだ説話文學を最初から讀み直してみようと思つた。それも、影印書か複製で、「元版群書類從特別重要典籍集」 の和本があるものはそれで。なかには漢文もある。すでに讀んだものもあるが、何度讀んでもいいわけで、それで、成立した順にみな書き出してみた。

 

説話文学(は、「元版群書類從特別重要典籍集」の和本、又は複製・影印本)

七五八~八二二年頃 『日本現報善悪靈異記』 景戒─最古の説話集。

九八四年 『三寶繪』 源為憲

一一〇七年頃 『江談抄』 藤原実兼

一一二〇年頃 『今昔物語集』

一一五四年以後 『中外抄』 中原師元

一一六一年以後 『富家語』高階仲行

一一七九年頃 『寶物集』 平康頼

一二世紀中期 『古本説話集』

一二一五年以前 『古事談』 源顕兼

一二一六年以前 『發心集』 鴨長明

一二一九年 『続古事談』

一二二二年 『閑居友』慶政

一二三九年以後 『今物語』 藤原信実

一二四二年以後 『宇治拾遺物語』

一二五〇年頃 『撰集抄』

一二五二年 『十訓抄』

一二五四年 『古今著聞集』 橘成季

一二五七年 『私聚百因縁集』 愚勧住信

一二八三年 『沙石集』 無住道暁

 

 

十月廿八日(水)舊九月十二日(甲辰) くもり

昨夜から、日本最古の説話集である 『日本現報善惡靈異記』 を 「元版群書類從特別重要典籍集」 で讀みだした。漢文で再讀だがよみ通したい。

Aさん、今日が手術日だ。預かつたチャチャはすぐに抱つこができた。安心してください。

 

 

十月廿九日(木)舊九月十三日(乙巳・十三夜) 晴

ベッドの右手には源氏物語が、左手には日本靈異記がぶるさがり、横になればいつでも讀める態勢がととのひ、〈若菜上〉はのこり數頁。漢文の靈異記は勘を取り戻すまで少し時間がかかるであらう。

で、今日はまた、ローレンス・ブロック著、マット・スカダー・シリーズの第一作 『過去からの弔鐘』 が屆いたので讀みはじめた。「できるだけ他人の人生に関与しないような人生を送っている」マット・スカダー、かつこいいと思ふ!

 

 

十月卅日(金)舊九月十四日(丙午) 晴

「元版群書類從特別重要典籍集」 の 『日本現報善惡靈異記 卷上』、しよつぱなから亂丁がみつかり、その數頁をうめるために、日本古典全集の 『校本日本靈異記』(「元版群書類從特別重要典籍集」をそのまま文庫本に縮小したもの) を擴大コピーしに行く。

ローレンス・ブロック著 『過去からの弔鐘』 讀了。マット・スカダー・シリーズの第一作だが、基調はのちの作品と變はらず、面白かつた。

また、探してみたがどうしても見つからず、再度求めて注文した、志村有弘他編 『説話文学史―説話文学小事典─』(明治書院) が屆く。

 

 

十月卅一日(土)舊九月十五日(丁未・望) 晴

昨夜、『源氏物語三十四〈若菜上〉』(靑表紙本) を讀み終へた。靑表紙本で二九〇頁。内容にも緊張感がただよひ、よみでがあつた。

また、『日本靈異記』 と先日屆いたばかりの 『一ドル銀貨の遺産』 を讀み讀みしてゐたら、結局寢られず、起きたのは一一時過ぎ。急いで準備して、綾瀨驛から柏に行く。

晝食は天外天の担々。太平書店では文庫本三册。

柏驛から、はじめて東武鐡道のアーバンパークラインに乘り、野田市驛まで行つてみた。いやあ、まあ何もない驛! 現在高架線化工事中なので、少しはましになるのだらうけれど、まつたくの田舎驛。そのまま折り返して、流山おおたかの森驛におりてみたら、野田市驛とは眞逆で、高級住宅地(?)化の眞最中といつた感じ。港北ニュータウンを思ひだしてしまつた。そこで、つくばエクスプレスに乘り換へ、南流山驛に下車して、驛前の古本屋を訪ねた。ここもだいぶ再開發がすすみ、變貌をとげてゐた。ここではやはり文庫本を二册求める。

今日の収穫・・・佐々木譲著 『冒険者カストロ』(集英社文庫)、サラ・パレッキー著 『サマータイム・ブルース』(ハヤカワ文庫)、ダニエル・ジャドスン著 『緊急工作員』(ハヤカワ文庫)、ロバート・クレイス著 『容疑者』(創元推理文庫)、アントニオ・マンジーニ著 『汚れた雪』(創元推理文庫)。

*「スコットランド出身の俳優ショーン・コネリーさん(90)が1031日、死去した。映画「007」シリーズの主人公ジェームズ・ボンド役で人気を博した」(毎日新聞)