月廿一日(木)舊三月廿九日(甲子) 曇天のち雨

 

今日一日寒かつた。讀書しようにも眠くてしかたなかつたが、それでも藤沢周平のかたはら、『宇治拾遺物語 卷第七』 をよみすすんだ。 

 

 

五月廿二日(金)舊三月卅日(乙丑) 曇天のち雨 寒い

 

今日も寒い。かたづけた電氣あんかを出してきて、ふとんをひつかぶつて讀書。『漆黒の霧の中で─彫師伊之助捕物覚え─』 をよみ終へ、シリーズ三册めの、『ささやく河─彫師伊之助捕物覚え─』 をよみはじめる。

 

が、その前に、『宇治拾遺物語 卷第七』 をよみ終らしてしまつた。すると、第五話の 「長谷寺參籠男預利生事」 が、「わらしべ長者」 そのものであることがわかつて興味深かつた。といふのも、これと同じ話が 『今昔物語集』 にもあるのだが、そのはうでは、男が利生(ご利益)にあづかつたのは、長谷の觀音の靈驗としてしめくくられてゐるのにたいして、『宇治拾遺物語』 では、その部分が省かれ、事件の展開をたのしむ物語に徹してゐる。平安時代から中世への移りかはり、神がかり的な時代が、いかに世俗化された時代になつていつたかがしのべておもしろい。 

 

 

五四月廿三日(土)舊四月朔日(丙寅・朔) 曇天、夕方日差し

 

今日も、肌寒い。からだが冷えないやうにして讀書に徹する。 

 

 

五月廿四日(日)舊四月二日(丁卯) 晴

 

今日も讀書。『ささやく河─彫師伊之助捕物覚え─』 讀了。これは十七年前によんでゐるけれど、前の二册と同樣、まつたく覺えてゐなかつた。 

 

 

五月廿五日(月)舊四月三日(戊辰) 曇り時々晴

 

紫式部著 『源氏物語〈野分〉』 讀了。野分(暴風)のあと、源氏が夕霧とともに六條院の「ハーレム」の女性たちを見舞ふはなし。むずかしいところのない、よみやすい文章だつた。靑表紙本で四十七頁。

 

つづいて、キケロの 『老境について』(ワイド版 岩波文庫) をよみはじめ、一氣によんでしまふ。カバーの折り返しにはかうある・・・「老境は青年期のあらゆる歓楽にもまさる値打ちがある。世に老境が惨めなものであるとされる四つの理由─仕事を失うこと、体の機能の低下、意欲の衰え、死への接近─を一つ一つ検証し、稔りの時を満ち足りて過ごす心がまえを説く。八十四歳のカトーが二人の若者を相手に開陳する形で述べられた、老いの重荷を楽々と背負う方法」 

譯文が正字・歴史的假名遣ひで、ぼくにとつてはありがたかつたが、讀んでゐて、はたして老境の荷が輕くなり、のこりの人生を滿ち足りて過ごすことができるのかどうか、ちよいと自信がもてない。 

 

朝、先日亡くなつた信ちやんの奥さんがこられ、しばらく話していかれる。メールアドレスをお聞きしたので、のちほど信ちやんの昔の寫眞をお送りした。 

 

*二〇一〇年五月廿五日に東京葛飾に歸郷して、今日でまるまる十年になる。寫眞は、毛倉野の家を去る朝、それと上京の途中、根府川のあみもと大吉の駐車場にて。 

 


 

 

五月一日~廿五日 「讀書の旅」 ・・・』は和本及び變體假名・漢文)

 

二日 田中小実昌著 『ないものの存在』 (福武書店) 

六日 田中小実昌著 『くりかえすけど』 (銀河叢書 幻戯書房) 

十一日 田中小実昌著 『ほのぼの路線バスの旅』 (中公文庫) 

十二日 『宇治拾遺物語 卷第六』 (第一話~第九話) 

十三日 田中小実昌著 『バスにのって』 (青土社) 

十六日 紫式部著 『源氏物語二十六〈常夏〉』 (靑表紙本 新典社) 

十七日 紫式部著 『源氏物語二十七〈篝火〉』 (靑表紙本 新典社) 

十七日 殿山泰司著 『バカな役者め!』 (ちくま文庫) 

十九日 藤森照信著 「今和次郎著 『日本の民家』 解説」 (岩波文庫) 

廿日 藤沢周平著 『消えた女─彫師伊之助捕物覚え─』 (新潮文庫) 

廿二日 藤沢周平著 『漆黒の霧の中で─彫師伊之助捕物覚え─』 (新潮文庫) 

廿二日 『宇治拾遺物語 卷第七』 (第一話~第七話) 

廿四日 藤沢周平著 『ささやく河─彫師伊之助捕物覚え─』 (新潮文庫) 

廿五日 紫式部著 『源氏物語二十八〈野分〉』 (靑表紙本 新典社) 

廿五日 キケロ著 『老境について』 (ワイド版 岩波文庫) 

 

 

五月に買ひ求めた本

 

四日 田中小実昌著 『ほのぼの路線バスの旅』 (中公文庫) 

七日 田中小実昌著 『バスにのって』 (青土社) 

七日 田中小実昌著 『田中小実昌紀行集』 (JTB)