七月(文月)一日(水)舊五月十一日(乙巳・半夏生) 強風雨

 

今日も藤原資房の日記 『春記』 をよみすすみ、長暦三年(一〇三九年)が終つて、四年に入る。

また、『源氏物語〈梅枝〉』 もわづかだがよみ進む。 

 

今日は、さういへば、グレイを我が家に迎へてからちやうど一年になる。モモタ君がじつに面倒見がよくて、そのグレイとココの二人の妹に慕はれて毎日ご滿悦である。

 


 

 

七月二日(木)舊五月十二日(丙午) 晴

 

今日は貴重な天氣だつたので、久しぶりに散歩出た。まづ、堀切驛前の地區センターで都知事の期日前投票を行ひ、京成、東武、半藏門線を乘りついで神保町をめざした。靖國通りをにしひがし。よく歩いたので食事もすすみ、一日の歩數は、七三〇〇歩であつた。

それで何册か掘出し物もあり、とくに珍しかつたのは、吉岡曠著 『作者のいる風景 古典文学論』(笠間書院) であつた。「遺文集」だといふことで、『源氏物語』 にかんする論文が多い。そして目を引いたのが、〈後記にかえて〉を、學習院さくらアカデミーでお世話になつた伊東祐子先生が書いてをられたことだ。

そのほか、路上観察学会編 『路上探検隊 奥の細道をゆく』 と 『路上探検隊 讃岐路をゆく』。遠藤周作の 『イエスの生涯』(新潮文庫) と 『キリストの誕生』(同)。この二册は再購入。それに、はじめて手にとつた澤地久枝さんの 『一人になった繭』(文春文庫) といつたところである。

それと、惱んだ末に求めたのが、『北野天神縁起 (承久本)』 である。八木書店の店頭の廉價ものの箱のなかに、ぽつんと、「お得ですよ」とかなんとか添へ書きまでしてあり、豪華な帙入である。それがまたとても重くて惱んだのだが、送つてもらへるといふので、たうとう購入してしまつた。實にあざやかな繪卷物である。お得だ!

ところが、まだ散歩の途中なのに、妻から、「今日の新たなる感染者が一〇〇人を越えましたよ」といふ緊急連絡が入つたので、おそくならないうちに歸宅した。

 

若松英輔著 『悲しみの秘儀』(文春文庫) 讀了。むねにしみ入るやうなことばに滿ちたエッセイ集で、敎へられたこと、戒められたこと多々あり。

 


 

七月三日(金)舊五月十三日(丁未) 曇天時々雨

 

午前中、中村莊の一室に運び込んだままになつてゐた本を、一通り目をとおして整理した。すると、山のやうな本の中から、探してゐた、坂本賞三著 『藤原賴通の時代 摂関政治から院政へ』(平凡社選書) を發見。そのほかにも、林丈二さんの 『路上探偵事務所』(毎日新聞社) と、路上観察学会編 『路上探検隊 新サイタマ発見記』(宝島社) などを發掘することができた。

また、ふと目についたのが、藤原伊織著 『てのひらの闇』(文春文庫) である。帶には、「著者の新たな到達点を示す長篇ハードボイルド」とあり、それで求めたのに、未知の作者だつたもので、ついつい埋もれてしまつてゐたのだつた。それが、ちよいと讀みだしたらぐいぐいとひかれて、ついにお勉強を放り出して讀みだしてしまつた。

 

「毛倉野日記」を書き冩してゐたら、當時作成した地圖があつたことを思ひだし、探してみたけれど、どうしても見つからない。それで親しくしてゐた南伊豆在住のさんちやんに問ひ合はせたら、ありがたいことに、すぐにその寫眞をメールに添付して送つてくれた。その作成年月日を見ると、一九九九年五月だから、今寫してゐる 「毛倉野日記(五十)一九九八年五月」 のちやうど一年後に作成してゐることになる。つまり、ラムを迎へて山に入り、遊び回りはじめたころに作つたやうなのである。 

 

*さんちやんに送つてもらつた 「毛倉野散歩コース」 地圖。裏山を寺の段といふくらゐだから、大昔には寺院があつたやうで、登つてくるための道の跡があちこちに發見され、ラムとともにわくわくしてたどつたものである。

 

 

七月四日(土)舊五月十四日(戊申) 曇天雨降つたりやんだり

 

藤原伊織著 『てのひらの闇』(文春文庫) 讀了。よみごたへえのあるハードボイルド小説だつた。北方謙三を思はせるところもあり、また電通社員である著者の經驗と知識をいかした内容も、話を重厚にしてゐると思はれた。續編があるといふので調べたら、『名残り火 てのひらの闇Ⅱ』 が出てゐることがわかつたので、さつそく注文。それが、「病床の著者が最後までこだわった傑作長篇」といふのだからまちがひはあるまい。

北方謙三はぼくと同じ年、藤原伊織はぼくより一つ年下で、なんと五十九歳で亡くなつてゐるのだ。あまり評判のよすぎる作家は敬遠してゐるけれど、これはおもしろかつた。これから古本散歩で出會ふのをたのしみにしたい。

 

お勉強のはうは、よみ進んでゐる 『春記』 の參考になると思はれたので、書庫にあつた、山口博著 『王朝貴族物語 古代エリートの日常生活』(講談社現代新書) を手にとつてみた。

 

 

七月五日(日)舊五月十五日(己酉・望) 雨やみ夕方には日差し

 

ベッドわきのパソコン環境を改善し、中斷してゐた 「毛倉野日記(五十)一九九八年五月」 を書き寫しはじめた。いよいよラムのしつけにとりかかつたころだ。

 

また、『王朝貴族物語 古代エリートの日常生活』 よみすすむ。 

内容は、「午前3時の起床、吉凶占いから、夜の社交までの一日。激烈な出世競走、土地や富への欲望。恋の歓びと怨霊への恐怖。豊富なエピソードでつづる奈良平安華麗絵巻」といふもの。たしかに當時の日記を讀むには參考になる。

 

 

七月一日~卅一日 「讀書の旅」 ・・・』は和本及び變體假名・漢文)

 

二日 若松英輔著 『悲しみの秘儀』 (文春文庫)

四日 藤原伊織著 『てのひらの闇』 (文春文庫)