八月(葉月)一日(月) 舊暦七月四日(丙戌) 晴、猛暑

今日は、古本散歩。南柏驛前の古本市をめざし、柏驛の高島屋で晝食。暑かつたこともあつてあまり歩けなかつた。収穫は、文庫本數册。

昨夜、マイクル・コナリー 『トランク・ミュージック 上』(扶桑社ミステリー) 讀了。下にはいる。

また、『平家物語 百二十句本 四』(古典文庫)、卷第八・第七十九句〈法住寺合戰〉が終り、第八十句〈義經熱田の陣〉に入る。平氏西走、木曾義仲がその頂點に達し、いよいよ義經の登場である。

今日の外出・・・三四八〇歩

 

八月二日(火) 舊暦七月五日(丁亥) 晴、猛暑

今日は慈惠醫大病院へ通院。午後一時半よりエコー檢査が豫約されてゐたので、診察のはうも午後一時から。血液および心電圖檢査の結果は順調。エコー檢査技師はまだ着任したての若い女性で、久しぶりに倫理テストのやうな氣持におちいつた。薄暗いカーテンで仕切られた部屋で、ベッドに横たはつたはだかの胸を長時間探られるのは、これはよほどの試練である。

晝は病院のそば屋でたぬきそばを、早めの夕食は、神保町を東から西から古本探索後に、例のアルカサールで和風ステーキをいただいた。

歸りの電車の中で、マイクル・コナリー 『トランク・ミュージック 下』(扶桑社ミステリー) 讀了。 

今日の外出・・・六二二〇歩

 

八月三日(水) 舊暦七月六日(戊子) 晴、猛暑

昨夜、『平家物語 百二十句本 四』(古典文庫) 讀了。息長くよむといふことは、あきらめないで讀み繼ぐといふことなのだらう。寢床に横になれば、クリップでぶら下げてある本書が必ず目に入る。左を向けば 『平家物語』、右を向けば 『養生訓』。變體假名のくづし字を讀み繼ぐには、工夫して習慣づけるしかない。

一昨日求めた ニコラス・ペトリ 『帰郷戦線─爆走─』(ハヤカワ文庫)、よみだしたらやめられなくなつた。

 

八月四日(木) 舊暦七月七日(己丑) 曇天、雷、のち雨

ニコラス・ペトリ 『帰郷戦線─爆走─』(ハヤカワ文庫) 讀了。これはウィスコンシン州のミルウォーキーが舞臺だつた。振り返ると、

マイクル・コナリーの 「刑事ハリー・ボッシュ・シリーズ」 はロサンジェルス

ネレ・ノイハウスの 「刑事オリヴァー&ピア・シリーズ」 はドイツのフランクフルト

スティーグ・ラーソン&ダヴィド・ラーゲルクランツの 「ミレニアム・シリーズ」 はスウェーデン

M・シュバール P・ヴァ―ル 「刑事マルティン・ベック・シリーズ」 もスウェーデン

C・J・ボックス 「猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ」 はワイオミング州シエラマドレ山脈

アーナルデュル・インドリダソンの 「捜査官エーレンデュル・シリーズ」 はアイスランド

そして、ヘニング・マンケルの 「刑事ヴァランダー・シリーズ」 はスウェーデン。

また、今日よみはじめた パトリシア・コーンウェル 『検屍官』(講談社文庫) はバージニア州リッチモンド。このシリーズは、ブックオフはじめどこの古本屋にも見られるので敬遠してゐたけれど、神保町で一册ワンコイン(百圓)で、しかもきれいだつたので買つてみて、試しよみ。それにしても、地圖帳だけでなく、グーグルマップを檢索するとまのあたり。讀書は世界旅行だ! 

 

八月五日(金) 舊暦七月八日(庚寅・上弦) 曇天

今日は二週間ぶりに日本橋の齒科に通院。新しい入れ齒めざして治療がすすむ。

お晝は、高島屋新館のレストラン街で、“更科堀井” の精進天そばをいただき、ブックオフ上野廣小路店によつてから歸路につく。感染者はいつかこうにへらず、用心して神保町古書會館の古本市は避けた。

外出には小册子、石川淳の 『諸國畸人傳』(中公文庫) を手に、行き歸りの電車の中でよみすすむ。

今日の外出・・・三六八〇歩

 

八月六日(土) 舊暦七月九日(辛卯・廣島原爆記念日) くもり

パトリシア・コーンウェル 『検屍官』(講談社文庫) よみはじめたが八十四頁で放棄した。やはりといふ感じでおもしろくない。

終日横になつて、石川淳 『諸國畸人傳』(中公文庫) と 森外 『伊澤欄軒 下』 を交互によみすすむ。『諸國畸人傳』 では、『秋山紀行』 をよんでゐたせいか、鈴木牧之がおもしろく、『北越雪譜』 もよみたくなつた。

また、『伊澤欄軒』 のなかでは、安積艮齋(あさかごんさい)といふ人物に出くはし、その人の墓が線路むかうの妙源寺にあることを思ひ出した。そこで、安積艮齋についてしらべたら、どえらい人であることがわかつた。だが、なぜ墓が妙源寺にあるのだらう。 

安積艮斎(あさかごんさい 寛政3年(1791)~万延1年(1860年)

江戸末期の朱子学者。陸奥(むつ)郡山の人。父は神官。江戸に出て佐藤一斎、林述斎に学ぶ。文章をよくし、江戸で開塾ののち、陸奥二本松藩の藩校教授さらに昌平坂学問所の教授となった。著書《艮斎文略》《艮斎間話》《東省日録》など。

艮斎に学んだ門人は2000人以上と言われ、吉田松陰、高杉晋作、岩崎弥太郎、安場保和、秋月悌次郎、小栗忠順、栗本鋤雲、清河八郎、近藤長次郎、前島密など、著名な塾生だけでも200人を数えるという。

艮斎が学び教えていた朱子学は江戸幕府の正学とされており、江戸幕府が国を治めるために利用されていた。だが、師であった佐藤一斎の影響を受けたのだろう、艮斎は、朱子学だけではなく、危険視されていた陽明学など他の学問や宗教も摂取した新しい思想を唱え、また、外国事情にも詳しく、海防論の論客としても知られていた。それで、ペリー来航時のアメリカ国書翻訳や、プチャーチンが持参したロシア国書の翻訳及び返書起草に携わるなど、幕末の政治・外交を支えた。

万延元年(1860年)1121日没。没する7日前まで講義を行っていたと伝えられる。墓は東京都葛飾区の妙源寺にある。

 

八月七日(日) 舊暦七月十日(壬辰・立秋) くもり

終日讀書。

外 『伊澤欄軒 下』(『鴎外選集 第八卷 史伝三』 岩波書店) 讀了。しんどかつた。内容・・・「蘭軒誕生からその終焉まで。伊沢蘭軒とは何者か? また彼の生きた時代とは? 埋没していた事蹟を掘り起こして綴る長大な史伝小説。さらに、蘭軒の死去を伝えた後、作家の筆はさらにその遺子榛軒柏軒兄弟の事蹟を尋ねつつ、養孫棠軒にまで及ぶ。激動する幕末維新史の一断面」。つづいて史傳三部作の最後、『北条霞亭』 をよむかどうか、すこしあひだをおくことにする。

また、石川淳 『諸國畸人傳』(中公文庫) も讀了。 

 

八月八日(月・長崎原爆記念日) 舊暦七月十一日(癸巳) 晴

日本橋へ齒科通院。ぐらついてきた上の差し齒を急遽すゑなほしていただゐた。

石川淳の 『諸國畸人傳』 につづいて、『畸人傳』 の元祖、伴蒿の 『近世畸人傳』 の現代語譯、村上護 『近世畸人伝―アウトサイダー119』(教育社) をよみはじめる。

 

八月九日(火) 舊暦七月十二日(甲午) 晴、猛暑

明日が母の九十九歳の誕生日だが、弟と妹の都合によつて今日お祝ひの食事をともにする。

マイクル・コナリー 『エンジェルズ・フライト 上』(扶桑社ミステリー) よみはじめる。 

 

八月十日(水) 舊暦七月十三日(乙未) 晴、猛暑

車で佐久に歸る弟と一緒に上野まで行き、食事をする。

マイクル・コナリー 『エンジェルズ・フライト 上』(扶桑社ミステリー) 讀了。

  友人から、最上敏樹著 『未来の余白から』 と 『同 Ⅱ』(婦人之友社) が送られてきた。「婦人之友」に連載されてゐるエッセイが本になつたものだが、圖書館からかりてきたその雑誌の内容に、日頃ぼくが妻に、妻がぼくに話したことが、同感覺で取り上げられてゐて、感心したり笑つたりしてゐたのである。それを友人に傳へたところ、氣をきかせて送つてくれたやうなのだ。ものくるる友はありがたい。 

今日の外出・・・一五一〇歩 

八月十一日(木) 舊暦七月十四日(丙申) 晴

終日讀書。最上敏樹 『未来の余白から 希望のことば明日への言葉』(婦人之友社)、他の數册とともに併讀開始。

 

八月十二日(金) 舊暦七月十五日(丁酉・滿月) 晴

昨夜、マイクル・コナリー 『エンジェルズ・フライト 下』(扶桑社ミステリー) 讀了。

最上敏樹 『未来の余白から』、第一章をよんだだけだが、〈悲しみと不寛容〉、〈八月の平和─沖縄にも終戦を〉、〈反知世主義について〉、〈「さあ、意気消沈だけはしないでおこうよ」〉の内容は、ぼく自身もひごろ考へてゐるところだが、よみすすむにつれて、現在日本の社會がいかに危ふいところにあるかを改めて深く考へさせられた。

今日の外出・・・一五六〇歩

 

八月十三日(土) 舊暦七月十六日(戊戌) 曇天、一時雷雨

臺風接近、伊豆半島に上陸といふが、そのわりには靜か。

村上護譯 『伴蒿・撰・アウトサイダー119人─近世畸人伝』(教育社) 讀了。人物傳、ひきつづいては、森銃三さんの 『瓢箪から駒 近世人物百話』(彌生書房) をよみはじめる。 

その他、蒲松齢 『完譯聊齋志異』(角川文庫)、岡本綺堂 『半七捕物帳(一)』(角川文庫)、井伏鱒二著 『七つの街道』(新潮文庫)、池波正太郎 『おせん』(新潮文庫)、坪内祐三 『文庫本を狙え!』(ちくま文庫) を併讀。

 

八月十四日(日) 舊暦七月十七日(己亥) 曇のち晴

終日讀書。『未来の余白から』 をはじめ、『瓢箪から駒』、『七つの街道』、『おせん』、『文庫本を狙え!』 を交互によみすすめる。とくに 『文庫本を狙え!』 は、よむたびにこれも讀まなくてはとそそのかされる。

そそのかされるといへば、丸谷才一編 『私の選んだ文庫ベスト3』(ハヤカワ文庫) もさうである。「各界の名うての“本読み”の達人たちが、愛してやまない著者の作品の中からベストの3册を選び、その魅力を語りつく」した「偏愛的読書ガイド!」だから、何かと參考にしてしまふ。

 

八月十五日(月) 舊暦七月十八日(庚子・終戰記念日) 晴

終日、短編を交互に讀書。

ところで、安倍が死んで本當によかつた。統一敎會と自民党が持ちつ持たれつの關係であることが明白になり、巨惡をあばきだしてくれたからである。しかし、こんな自民党に投票する愚かなやからがゐるかぎり、ますます平和から遠い社會になつていくであらう。今日の記念日だつて、みんな被害者づら、自分がされたことだけを強調して、そんな戰爭を起こして侵略し、隣國の人々を不幸のどん底へたたきおとしながらそれを祝つてよろこんだのではなかつたか。隣國のその苦しみを思ひやつたことがあるのだらうか。「戰爭はいやだ平和がいいといふあなた、まさか自民党に投票してゐないでせうね?」といひたい。

 

八月十六日(火) 舊暦七月十九日(辛丑) 曇天、のち雨

終日讀書。

統一敎會の問題は、自民党が、日本國民をクヒモノにしてゐる犯罪集團から利益を得て、その犯罪がやりやすいやうに便宜をはかつてゐることにつきる。かれらこそ賣國奴、歴史上最大級の惡人集團、まるで「統一教会自民党支部」である。總理大臣から防衛大臣、法務大臣に國家公安委員長、その他大勢の閣僚や議員が關係あり。そんなやつらが國を動かしてゐるなんて、信じられないし、夢ならはやく醒めてほしい!

結局 安倍「国葬」に反對するデモに參加できなかつた。

 

八月十七日(水) 舊暦七月廿日(壬寅) 曇天ときどき小雨

終日讀書。

最上敏樹 『未来の余白から 希望のことば明日への言葉』(婦人之友社) 讀了。最上さんはあとがきで、つぎのやうに書いてゐる。「世界と歴史が悲慘に満ちていることを常に心の隅に置きながら、同時にそこにある美しさや人間の愛おしさを忘れずに伝えよう、と心がけました。苦難や悲しみに満ちた世界にあって、美しいものに目をとめる義務が私のような立場のものにはある、といつも考えています」

みにくいことにばかりふれてゐると、心が腐つてきてしまふ。この書は、そんな穢れた心を淨めてくれるやうだ。そして、「新しく生きることに向けて魂を揺さぶる」内容である。 

 

八月十八日(木) 舊暦七月廿一日(癸卯) 雨のち晴

終日讀書。短編集のなかで、池波正太郎 『おせん』(新潮文庫) がとくにいい。一作一作緊張をはらみながら、あかるいこころもちにしてくれる。

午後、六週間ぶりに床屋へ行き、坊主頭を短く刈り込んでもらふ。顔を剃つてもらつて氣持いい。

 

八月十九日(金) 舊暦七月廿二日(甲辰・下弦) 晴

朝、起床後、意を決して歩いてみる。我が家から北へ路地をたどり、九品寺の“鈴懸の径”までの往復、約一三〇〇歩であつた。けつこう街路樹や草花が多い。ラムとよく歩いた道だ。ただ、それで朝食がおいしく食べられたかといへば、さうは問屋が卸さなかつた。それにしても大氣が澄んでゐてさわやか、氣持ちがよかつた。

晝前、日本橋の齒科へ通院。

終了後神保町へ直行、成光さんでラーメンをいただく。隣の席の若者が大盛りラーメンと大盛りチャーハンを食べるさまは壓卷だつた! それから靖國通りの古書店街を西の果てから東にむかつて歩いたが、古書會館までたどりつけず、白山通りとの交差點の神保町驛から歸路に着く。

夜、アマゾンで映畫 “ミレニアム 蜘蛛の巣を払う女” をみた。テンポがよくて面白かつた。

井伏鱒二著 『七つの街道』(新潮文庫) 讀了。いささかマニアック氣味で面白かつた。

内容・・・「旅に出たいために旅行記を書くことにした」著者は、昭和三十一年、街道めぐりに着手した。古き時代の面影を残す旧街道 〔ささやま街道・久慈街道・甲斐わかひこ路・備前街道・天城山麓を巡る道・近江路・「奥の細道」の杖の跡〕 を史実や文献を辿りつつ歩き、その今昔を風趣豊かに描き出した紀行文集。

今日の外出・・・計五七二〇歩

*今日の新型コロナウイルスの全國感染者は二十六萬人をこえたて過去最多!

 

八月廿日(土) 舊暦七月廿三日(乙巳) 曇天ときどき小雨のち雨 

池波正太郎 『おせん』(新潮文庫) 讀了。これは、丸谷才一編 『私の選んだ文庫ベスト3』(ハヤカワ文庫) のなかで選者によつてえらばれた三册のうちの第二位だつた。それでよんだのだが、たしかによかつた。ちなみに第一位はごぞんじ仕掛人・梅安シリーズである。すでに二度よんでゐるけれど、またよみたいとおもつた。

 

八月廿一日(日) 舊暦七月廿四日(丙午) 小雨のちくもり

丸谷才一 『年の殘り』(文春文庫) 讀了。四篇からなる短編集だが、ちつともおもしろくない。それなのに讀み通せてしまふのはどうしてだらう。

また、森銃三 『瓢箪から駒 近世人物百話』(彌生書房 新字舊假名) 讀了。

つづいて、鹿島茂 『鹿島茂が語る山田風太郎 私のこだわり人物伝』(角川文庫) を一氣に讀了。山田風太郎もまたよみたくなつた。

 

八月廿二日(月) 舊暦七月廿五日(丁未) くもり

今日も食欲なく、終日讀書と猫の相手。文机を前にすると、三匹がそれぞれの位置についてはなれない。とくにグレーは、抱かれたままぼくのわきのしたにあたまをつき入れてじつとご滿足。グレーがゐなかつたら、猫のほんたうのかはいらしさを知らずにゐただらう。

森銃三 『書物の周囲』(研文社) よみはじめる。

 

八月廿三日(火) 舊暦七月廿六日(戊申・處暑) くもりのち晴

今日は外出、久しぶりに柏まで遠出した。古本探索は驛南のブックオフと驛北の太平書林。久々に丁寧にみて歩いたので、面白さうな文庫本をザクザクと掘りあてた。

まづ、ブックオフでは、田中小実昌 『ふらふら日記』(中公文庫)、色川武大 『怪しい来客簿』(文春文庫)、中島らも 『とらちゃん的日常』(文春文庫)、つげ義春 『新版 貧困旅行記』(新潮文庫)、高橋克彦 『非写真』(新潮文庫)。

太平書林さんでは、山田風太郎 『死言状』(小学館文庫)、開高健(対談集) 『人とこの世界』(中公文庫)、それに、阿佐田哲也(色川武大)さんの 『麻雀放浪記 (一)~(四)』(角川文庫)、これは麻雀を知らないものにも面白いといふのでだまされたと思つて求めた。ちなみに、これは、丸谷才一編 『私の選んだ文庫ベスト3』(ハヤカワ文庫) のなかで選者によつてえらばれた三册のうちの第一位なのである。

今日の外出・・・四〇二〇歩

 

八月廿四日(水) 舊暦七月廿七日(己酉) くもり

昨夜、蒲松齢 柴田天馬譯 『完譯聊齋志異 第一卷』(角川文庫 舊字舊假名) 讀了。獨特の雰圍氣があつておもしろい。とにかく翻譯が奇抜である。例へば、

 

「・・・果して四人の女道士がゐて、喜んでむかへてくれた。みると皆な雅びやかで潔(きよ)らかであつたが中でも一ばんわかいのは、曠世眞無其儔(このよにふたりとな)いきりやうなので、心好而目注之(いいなとおもつてみつめ)たが、その女は手で頤を支へたまま但他顧(わきみばか)りしてゐるのだつた」

かつこの假名は原文ではフリガナだが、このフリガナがなければたうていよめない文字のつらなりなのである。漢字好きにはこたへられない! 第二卷にはいる。 

中島らも 『とらちゃん的日常』(文春文庫) よみとおす。とらちゃんの寫眞が可愛い。

 

八月廿五日(木) 舊暦七月廿八日(庚戌) くもり 

昨夜、一昨日もとめた高橋克彦 『非写真』(新潮文庫) をよみだしたらゾクゾクときた。心靈寫眞のはなしだつたからだ。が、はじめの三作は東北大震災の津波で亡くなつた方々への鎭魂なのだとおもつた。登場人物が作家であつたり寫眞家であつたり、寫眞やカメラにかんしてのはなしがいとこまかにのべられてゐて、ついにぼくも最近手にしてなかつたGRデジタルを出してきて、モノクローム寫眞でも撮つてみようかと思つてしまつた。

 

八月廿六日(金) 舊暦七月廿九日(辛亥) くもり一時雨

日本橋の齒科へ今朝も通院。新しい義齒が待ちどおしい。

歸路、神保町は古書會館へ直行。入館後最初に目についたのは、『中村眞一郎小説集成 第五卷』(新潮社) である。収められてゐる 「雲のゆき来」 を文庫本で探したら目が飛び出るやうな値段だつたのであきらめてゐたのだが、この全集本が三〇〇圓。大きい本だけれどためらはずに購入。

つづいて高圓寺の古書會館へ、驛前の回轉壽司でいただいてから向かふと、永井荷風の「戰後の作品」だけを集めた 『秋の女』(河出書房 市民文庫 舊字舊假名)、二二〇圓を發見。今日も數册もとめて意氣揚々と言ひたいところだけれど、町田の柿島屋へ行く氣力をなくし、はやめに歸宅した。

夜、岡本綺堂 『半七捕物帳(一)』(角川文庫) 讀了。さらによみたいが、できれば同じ角川文庫でよみたい。

今日の外出・・・五七四〇歩

 

八月廿七日(土) 舊暦八月一日(壬子・新月) くもり

今日も出かけ、上野の美術館で楓さんと會ふつもりでゐたところ、朝から氣分がすぐれずに寢てすごす。食欲もない。

永井荷風著 『秋の女』 を半分ほどよみすすむ。

 

八月廿八日(日) 舊暦八月二日(癸丑) くもり時々小雨、涼しい

永井荷風著 『秋の女』(河出書房 市民文庫) と、つづけて森銃三 『書物の周囲』(研文社) 讀了。『秋の女』 のはうは、「戰後世相のスケッチ集ともいふべき短編」集で、舞臺は葛西橋のあたりだつたり、市川、高砂、四ツ木、立石など京成電車沿線で懐かしい。 

 

八月廿九日(月) 舊暦八月三日(甲寅) くもつたり晴たり

朝食後、食堂にゐると、庭にゐた妻が 「靑木さんよ」 とさわがしい。顔を出すと、たしかに驛前の古本屋のご主人の青木さん。久しぶりである。すぐにあがつてもらつて話をしだしたらとまらず、パソコンで “GYAO!” などの無料映畫の見方などを敎はつたりして、樂しいひとときだつた。さういへば、妻以外との久しぶりの會話だつた。

つげ義春 『新版 貧困旅行記』(新潮文庫) をよむ。

夜、青木さんの助言によつて デスクトップパソコンで、ダニエル・クレイグ主演の “ドラゴン・タトゥーの女” をみた。著作と異なるところもあつたが迫力滿點。面白かつた。アマゾンで初めての有料映畫だつた。有料でもアマゾンギフトカードから引いてくれるので安心。

 

八月卅日(火) 舊暦八月四日(乙卯) くもり

柏に行く。ブックオフをみたが探してゐた本はなし。近くの燒き肉店に入り、カルビ肉を食べた。また、松戸驛のブックオフには岡本綺堂讀物集がそろつてあつたので、6冊求めた。その同じビルにマクドナルドがあつたので、ハンバーガーとコーラを食べた。綾瀨驛まで美知子が迎へにきてくれて歸宅。

つげ義春 『新版 貧困旅行記』(新潮文庫) 讀了

今日の外出・・・四九六〇歩

 

八月卅一日(水) 舊暦八月五日(丙辰) 曇天

昨夜、腹が痛くなり、それも今まで經驗したことがない、はんぱではない痛みで、夜中に靑戸の慈惠大學病院に行き、それでも朝までうめき通し! 檢査の結果、なんと盲腸炎だつた。この歳で! それでも初期のやうで、大事にはいたらないやうなので安心。

といふのも、ぼくが痛い痛いとわめいたので、CTをとつてくれて、それで判明したのであつた。しかも膿んでもゐないものを通常ならば見過ししてゐると言つてゐた。正直に痛いとわめいてよかつた。

事實、昨夜の零時あたりから今朝の一〇時頃に痛み止めの藥がきくまでのあひだ、とぎれない痛みにもだへ苦しんだ。ぼくのこれまでの人生で經驗したことのない痛みだつた。

たしかに、大動脈弁置換手術よりも、指先を複雑切断骨折して手術したときよりも、そしてアブレーション手術やペースメーカーを入れるときにも經驗したことがない痛み!

それで入院ときまつた六階の西向きの病室は、きれいで明るくながめがいい。看護婦さんたちもみな若くて明かるい。ただ、念のために食事はとめられ、腹はすかないが、ものさびしい。點滴は繼續してうちつぱなし。

 

 

 

 

八月一日~卅一日 「讀書の旅」 ・・・』は和本及び變體假名・漢文)

二日 マイクル・コナリー 『トランク・ミュージック 下』 (扶桑社ミステリー)

同 『平家物語 百二十句本 四』 (古典文庫)

四日 ニコラス・ペトリ 『帰郷戦線─爆走─』(ハヤカワ文庫)

七日 森外 『伊澤欄軒 下』 (『鴎外選集 第八卷 史伝三』 岩波書店)

同 石川淳 『諸國畸人傳』 (中公文庫 舊字舊假名)

十日 マイクル・コナリー 『エンジェルズ・フライト 上』 (扶桑社ミステリー)

十一日 マイクル・コナリー 『エンジェルズ・フライト 下』 (扶桑社ミステリー)

十三日 村上護譯 『伴蒿・撰・アウトサイダー119人─近世畸人伝』 (教育社)

十七日 最上敏樹 『未来の余白から 希望のことば明日への言葉』 (婦人之友社)

十九日 井伏鱒二著 『七つの街道』 (新潮文庫)

廿日 池波正太郎 『おせん』 (新潮文庫)

廿一日 丸谷才一 『年の殘り』 (文春文庫)

同 森銃三 『瓢箪から駒 近世人物百話』 (彌生書房 新字舊假名)

同 鹿島茂 『鹿島茂が語る山田風太郎 私のこだわり人物伝』 (角川文庫)

廿三日 蒲松齢 柴田天馬譯 『完譯聊齋志異 第一卷』 (角川文庫 舊字舊假名)

廿四日 中島らも 『とらちゃん的日常』 (文春文庫)

廿五日 高橋克彦 『非写真』 (新潮文庫)

廿六日 岡本綺堂 『半七捕物帳(一)』 (角川文庫)

廿八日 永井荷風著 『秋の女』 (河出書房 市民文庫 舊字舊假名)

同 森銃三 『書物の周囲』 (研文社 新字舊假名)

卅日 つげ義春 『新版 貧困旅行記』 (新潮文庫)