二〇二二年十月(神無月)一日(土) 舊暦九月六日(丁亥) 晴

終日讀書。

ロバート・クレイス 『ぬきさしならない依賴』(扶桑社ミステリー) 讀了。

 

十月二日(日) 舊暦九月七日(戊子) 晴

午後、純子さん來りて整體をほどこしてくださる。

現職添乗員の高橋さんから、東山會・秋の東北旅行の案内がとどいた。日程は十一月二~三日。猊鼻渓、大茅葺本堂の正法寺、陸前高田奇跡の一本松、碁石海岸、中尊寺・毛越寺、厳美渓、達谷窟毘沙門堂など、ぼくが訪ねたことのないところばかりで、じつに魅力的なのだけれど、今回は見送ることにした。みなさんとともに歩くのも食べるのも自信がない。

 

十月三日(月) 舊暦九月八日(己丑・上弦) 晴

正午前に散歩に出る。妻と 驛前の “人と木” でそばをいただいてからわかれ、ぼくは先日訪ねそこなつた京成八幡驛前の山本書店と市川眞間驛の智新堂書店を再訪。珍しい文庫本ばかりまた買ひすぎてしまつた。とくに、吉本隆明 『追悼私記』(ちくま文庫) と 文藝春秋編 『私の死亡記事』(文春文庫) が面白さう。後者は、「『ご自身の死亡記事を書いてください』という大胆無謀な企画に各界102人が応えてできた前代未聞の書。全篇にそれぞれの人柄、人生観が窺われ、時に抱腹、時に粛然とさせられる名篇ぞろい」といふもの。それと、つげ義春の文庫本がまとめて七册、『無能の人・日の戯れ』(新潮文庫) をはじめ、『ねじ式』(小学館文庫)、『紅い花』(同) などなつかしい。

今日の外出・・・三一三〇歩 

 

十月四日(火) 舊暦九月九日(庚寅) 晴

西新橋の慈惠醫大病院へ定例通院。血液檢査と心電圖檢査の結果は良好。ミカ先生に胆石のことを話し、お聞きしたら、二〇一四年の胃カメラ檢査のときにすでに胆石が複數見つかつてゐたことがわかつた! そのときはたださうかと思つただけで、とくに注意事項もなかつたやうに思ふ。つまり八年の時を經て突如暴れだしたのであつた。

歸路、神保町に寄り、新しい食事處を開拓。“手打ち蕎麦 たかせ” といふ店で、鴨せいろをいただいたけれど旨かつた。

持ち歩いてゐた 色川武大 『怪しい来客簿』(文春文庫) 讀了。連作最後の 「たすけておくれ」 は著者の胆石治療のなまなましい記録で、恐ろしくて手が震えた!

さらに、黒井千次著 『高く手を振る日』(新潮文庫) を一氣に讀む。解説に、「この小説は、初老の恋を実に清潔に描いている。知的な抑制が効いている。日本文学のなかでも珍しい。高齢化社会のなかで生まれるべくして生まれた小説といえよう」とある。

今日の外出・・・五一六〇歩

 

十月五日(水) 舊暦九月十日(辛卯) 曇天のち雨

久しぶりに、殿山泰司の 『三文役者のニッポンひとり旅』(ちくま文庫) を讀む。タイちやんらしくて面白い。

山田風太郎の 『人間臨終図鑑』(徳間文庫) をよみはじめてゐるが、〈十代で死んだ人々〉の八百屋お七からはじまつて、〈百代で死んだ人々〉まで、いつたい何人の人々がとりあげられてゐるのだらう、かぞへるのもおつくうである。

 

十月六日(木) 舊暦九月十一日(壬辰) 雨

水木しげる 『猫楠 南方熊楠の生涯』(角川文庫ソフィア) 讀了。マンガといつてバカにしてはいけない。

先日亡くなられた佐野眞一さんの 『人を覗にいく』(ちくま文庫) をよみだす。 

 

十月七日(金) 舊暦九月十二日(癸巳) 雨、寒い

日本橋の齒科へ通院。

歸路、神保町の古書會館の古本市をたずねた。ラフカディオ・ハーンの 『怪談・奇談』 と 『続怪談・奇談』(角川文庫) の二册で二〇〇圓はおとくだつた。とくに「続」のはうは今まで目にしたことがなく、それもそのはづ、「若きハーンが、世界各国の奇書から、民話、伝説をもとにして 『異文学異聞』 『中国怪談』 として発表したもので、全編に異国情緒とロマン主義者ハーンの面影が偲ばれる好短編集」なのである。

今日の外出・・・三五一〇歩

 

十月八日(土) 舊暦九月十三日(甲午・寒露) 晴

寢てゐたいやうな氣分だつたけれども、出かけてみた。新御茶ノ水驛經由で高圓寺の古書會館を訪ねた。まづは近くの店でタンメンと餃子をいただき、それから先週と打つて變はつてじつに中身の濃い店内をみて歩いた結果、宅配で送るつてもらふほどであつた。ただ一册だけ送らずに持ち歸つたのは、探しに探してゐた冨山房百科文庫の 『上田秋成全集 一』 である。うれしい。これぞ掘出し物といへやう。送つたなかには、源信の 『往生要集』 の影印本もある(歸宅して日本の古本屋で檢索したら、同じ本が二册出てゐて、八八八〇圓と一〇八〇〇圓だつた。定価は二二〇〇〇圓。編著者は西田直樹・西田直敏。書名は 『浄福寺本仮名書き 「往生要集」 : 影印・翻刻・解説』(おうふう) で、それが二二〇〇圓だつた)。屆くのが待ちどおしい。

また歸路、秋葉原と上野廣小路のブックオフに寄り、ここでも文庫本を數册もとめてしまつた。比較的新しいもので、北杜夫の 『青年茂吉 「赤光」「あらたま」時代』(岩波現代文庫)、武田百合子の 『犬が見た ロシア旅行』(中公文庫)、それに 色川武大の 『狂人日記』(講談社文芸文庫) など。

すでに夕暮れになり、夕食は“玄品”でいつものコースをいただいた。疝痛發作以來はじめてだつたので多少の不安はあつたが、ふぐ刺しの誘惑にはかてなかつた。

歸宅すると、アマゾンで注文した谷口雅男 『ふるほん文庫やさんの奇跡』(新潮OH!文庫) がとどいてゐた。早かつたな!

佐野眞一さんの 『人を覗にいく』(ちくま文庫) 讀了。たしかに「人物ルポの傑作集」だ。この中に谷口雅男も北杜夫もつげ義春のルポもあつたのだ。

今日の外出・・・五〇〇〇歩

 

十月九日(日) 舊暦九月十四日(乙未) 曇天のち雨

昨日高圓寺の古書會館から送つてもらつた本が今朝はやばやととどいた。着拂ひ一〇三〇圓なり。ぶあつい 『仮名書き 「往生要集」』 もとどいた。假名だからどうにかよめるのがうれしい。

最近の讀書はあれこれよみかじりが多い。昨夜は、妻が圖書館から借りてきてくれた、菅田文夫 『切らずに治る胆石』(主婦の友・健康ブックス) を讀む。三十年まえの本だけれど參考になつた。

 

十月十日(月) 舊暦九月十五日(丙申・滿月) くもり

蒲松齢 柴田天馬譯 『完譯聊齋志異 第二卷』(角川文庫 舊字舊假名) 讀了。つづいて、第三卷といひたいところだけれど、ここで、先日入手した、ラフカディオ・ハーンの 『続怪談・奇談』(角川文庫) をよむことにした。これにはハーンの處女作といはれる 『異文学異聞』 と つづく 『中国怪談』 がはいつてゐる。まづはこれらからあらためてラフカディオ・ハーンの文學にとりかかつていきたい。 

 

十月十一日(火) 舊暦九月十六日(丁酉) 晴

散歩に出た。柏で食事をして太平書林さんを訪ねる目的で歩いたら、思ひのほか歩けた。ただ歩いただけではこうはいかない。

夕食の、山芋の磯辺あげと牛肉のしぐれ煮、それに酢だこが美味しかつた。

今日の外出・・・四七四〇歩

 

十月十二日(水) 舊暦九月十七日(戊戌) 曇天

ラフカディオ・ハーン 『続怪談・奇談』(角川文庫) 讀了。

 

十月十三日(木) 舊暦九月十八日(己亥) 曇天

昨夜、色川武大 『狂人日記』(講談社文芸文庫) 讀了。

また、滝田ゆう 『滝田ゆう名作劇場』 講談社漫画文庫) をよみ終へる。

 

十月十四日(金) 舊暦九月十九日(庚子) 曇天

五反田と神田の古書會館をはしご。

お晝は神保町の裏通りにある “吉野鮨” でランチのちらし壽司をいただいた。はじめての店だつたが美味しかつた。夕食も食べて歸るつもりでゐたが、疲れたので早々に歸宅。

今日の収獲は、なんといつても、松浦武四郎の 『山岳紀行六種(私家版)』(大修館書店) だらう。松浦武四郎といふと、「蝦夷地を探査し、北加伊道(のちの北海道)という名前を考案したほか、アイヌ民族・アイヌ文化の研究・記録に努めた」ことで有名だけれど、この文庫本大の和綴じでくづし字の册子の内容は、七十一歳で亡くなる直前、六十八歳の時とその翌年に(紀州の)「大台ケ原」に登つたときの紀行なのである。

その他、戸板康二 『ぜいたく列伝』(文春文庫)、泉麻人 『けっこう凄い人』(新潮文庫)、いしかわじゅん 『業界の濃い人』(角川文庫) が面白さう。 

今日の外出・・・五八三〇歩

 

十月十五日(土) 舊暦九月廿日(辛丑) 曇天

終日讀書。

岡山の森口君からやつと連絡があり、それによると、例の「誕生寺」が彼のところから車で一時間ほどのところだといふ。來春にでも訪ねられたら幸ひであるが・・・。

 

十月十六日(日) 舊暦九月廿一日(壬寅) くもり

ーレンス・ブロック 『殺し屋ケラーの帰郷』(二見文庫) 讀了。殺し屋ケラー・シリーズ第五册目で、これで完結。 「本書は五つの短編で構成されているが、長いストーリーもあり、いずれの物語にも切手収集家のエピソードが挿入されている」のが特徴である。切手好きにはたまらない内容だと思ふ。

つづいて、ラフカディオ・ハーン 『怪談・奇談』(角川文庫) 讀了。遠い昔によんでゐたものではあるが、はじめてよむやうな感動があつた。たしかに、「ハーンの怪談・奇談は、自分では翻案などと謙遜しているけれど、日本のもとの話とはまるで違った創作となり、ひさしく塵にまみれていた陰惨な幽霊物語や、抹香くさい因果ばなしに、新しい詩魂を注入して、何人の追従もゆるさぬ芸術味ゆたかな逸品にまで、仕上げたのである」

 

十月十七日(月) 舊暦九月廿二日(癸卯) 小雨

いしかわじゅん 『業界の濃い人』(角川文庫) 讀了。ひとの惡口つてなんて面白いのだらう! 著者の本名は石川潤といひ、石川淳とは別人。

 

十月十八日(火) 舊暦九月廿三日(甲辰・下弦) 曇天

南柏驛前の古本市と土浦驛前の「つちうら古書倶楽部」をたずねた。どんよりした天氣で體調も快適ではなかつたが、散歩としてはよく歩いたが、散歩といふより列車の旅ではあつた。さがしてゐた長谷川町子の 『いじわるばあさん ①』(朝日文庫) がやつと見つかた。おもしろい。

今日の外出・・・五三〇〇歩

 

十月十九日(水) 舊暦九月廿四日(乙巳) くもりのち晴

ひるまへ床屋に行き、歸宅したら、ネットの《全国古本まつり》案内によると、JR平井驛まへの古本屋「平井の本棚」の二階のイベントスペースで〈平井のはみだし古本市〉がおこなはれてゐることを思ひ出したので、はじめてのところだけれど出かけてみた。平和通りを南下する京成バスで新小岩驛まで行き、JRをひと驛乘ると平井驛。しかも「平井の本棚」は驛の北口から一分もかからない線路沿ひであり、しかも、小スペースにもかかはらず置いてある本の内容といふか質がいい。二階に行く前にだいぶいい文庫本をふところに。と、そこで本を店に預けて食事にでた。ところが、敎へてもらつたそば屋が休みだつたので、隣のすし屋でにぎりをいくつかいただいた。

晝食後は二階の〈平井のはみだし古本市〉、本の量は少なかつたけれど、趣味がいいといふかつぶぞろい。そこでは、田村隆一 『半七捕物帳を歩く』(朝日文庫)、今井金吾 『半七の見た江戸』(河出書房新社)、岡田喜一郎 『半七捕物帳 お江戸歩き』(河出書房新社)、横山泰子 『綺堂は語る、半七が走る』(教育出版 江戸東京ライブラリー) などを買ひ求めてしまつた。それと 『廃線都電路線案内図』(人文社) である、これはめずらしい。

歸りは、北口驛前から上野松坂屋前行のバスが發車するところだつたのでとび乘り、上野驛まで下町の景色をのんびりとながめてすごした。

北尾トロ 『ぶらぶらヂンヂン古書の旅』(文春文庫) 讀了。これは全國の古本屋めぐりの旅で、樂しいし參考になつた。九州や北海道の古本屋は無理としても、岡山の「万歩書店」や只見の「たもかぶ本の街」、それと鶴岡の「阿部久書店」には是が非でも行つてみたいと思つた。この手の本では、つづけて司悠司 『文庫ハンターの冒険 町めぐり、古書さがし』(学陽書房)をよみはじめた。

今日の外出・・・三六九〇歩

 

十月廿日(木) 舊暦九月廿五日(丙午) 晴

眠くてだるくて一日寢床に伏す。讀書はかどらず。 

 

十月廿一日(金) 舊暦九月廿六日(丁未) 晴

今日はむだ足だつた。日本橋の齒科へ通院後、『文庫ハンターの冒険 町めぐり、古書さがし』 のなかの 「古本屋徘徊日記」 に從つて、ひさびさに未知の古本屋めぐりにのぞんだのはいいけれど、ほとんどが閉店、あるいは別の場所に移転してしまつたのだらう、探し歩いても見つからなかつたのである。

銀座線の表參道驛で千代田線(小田急線)に乘り換へ、はじめて経堂驛に降りたつた。本書によれば四軒あるはづの古書店が皆無。ラーメン屋が繁殖しすぎて、絶滅種かと思はれる日本蕎麦屋をさがしあてて久しぶりに天ざるをいただき、つづいては祖師ヶ谷大藏驛。しかし二軒あるはづがここも見あたらず。さいごは豪徳寺驛。だいぶ歩き疲れてきたけれど、あきらめなかつたのが幸ひ、二軒のうちの一軒、玄華書房が見つかつてほつとした。

あまり廣くはないけれど、店先には百圓均一の文庫本がならび、店内は明るく整理されてゐて學術書が整然とならぶ。觸手が動かなかつたわけではなかつたけれど、ここは思ひとどまり、文庫本のみを購入。四册で六〇〇圓。『文庫ハンターの冒険 町めぐり、古書さがし』(学陽書房) が電車のなかで読み終はつたので、買ひたてほやほやの C・ホールデン 『夜が終わる場所』(扶桑社ミステリー文庫) をよみはじめた。

小田急線といへば町田、町田といへば柿島屋の馬刺しが定番。各驛を急行、快速と乘り繼いで町田へ向ひ、開店の四時を待つて馬刺を堪能した。終りよければすべて良し。

今日の外出・・・九四〇〇歩 

 

十月廿二日(土) 舊暦九月廿七日(戊申) くもり

今日も古本散歩。高圓寺古書會館は〈好書会〉の出展で、良質の本が揃つて出されてゐるにもかかはらずみな安い。文庫はだいたいが一〇〇圓か二〇〇圓、思はず手を出しつづけてしまつた。しかも、歸りに立ち寄つた神保町でも収獲があり、體調がととのひはじめたおかげだと自分を納得させた。

今日の外出・・・五五二〇歩

 

十月廿三日(日) 舊暦九月廿八日(己酉・霜降) 晴

終日ボ~つとすごす。

ラフカディオ・ハーン 田中三千稔訳 『日本の面影』(角川文庫) 讀了。以上三册、角川文庫の田中三千稔譯でよんだが、岩波文庫や新潮文庫とくらべて優れた翻譯だと思ふ。日本語としてよみやすかつた。それにしても、こんにちすでに失はれてしまつた、ふるき良き日本と日本人のすがたをよく描いてくれてゐる。かすかに懐かしい思ひがこころにのこつた。

 

十月廿四日(月) 舊暦九月廿九日(庚戌) くもり

朝、日本橋の齒科に連絡し、午後、昨日とれてしまつた差し齒を修復してもらひに通院。手際よくより丈夫になほしていただいた。

歸路、上野廣小路のブックオフによつてから歸宅した。

『夜が終わる場所』 が面白くない。ぐづぐづ何やつてんだ、といふのをやめて本を閉じた。そのかはりによみはじめた、戸板康二 『ぜいたく列伝』(文春文庫) がすこぶる面白い。それで、立ち寄つたブックオフで、その續編の 『あの人この人 昭和人物誌』(文春文庫) を見つけたので即購入。

夜、アマゾンで、トム・ベレンジャ―主演の映畫 “ディア・スナイパー” を途中までみた。 

今日の外出・・・三八七〇歩

 

十月廿五日(火) 舊暦十月一日(辛亥・新月) くもり

午、妻と驛前の “人と木” でそばを食べ、その後ひとりで古本散歩。とはいへ、電車の旅のやうなものだが、久しぶりに吉祥寺を訪ねた。そこのパルコ二階で開催中の 「トウキョウブックパーク」 と驛南の 「吉祥寺バサラブックス」 に入り、いい雰圍氣なのでしばらく滞在。おかげで、柴田錬三郎 『わが青春無頼帖』(中公文庫) だの、日夏耿之介 『明治大正の小説家』(角川文庫 舊字舊假名)、それに 色川武大 『喰いたい放題』(光文社文庫) だのを求めてしまつた。 

夜、昨夜のつづき “ディア・スナイパー” の途中からみた。

今日の外出・・・三三〇〇歩 

 

*豪徳寺驛の 「玄華書房」 と 「吉祥寺バサラブックス」 


 

十月廿六日(水) 舊暦十月二日(壬子) 晴 

夜、アマゾンで、ジョン・トラボルタ主演の映畫 “ポイズン・ローズ” と、つづけて、ニコラス・ケイジ主演の “グランド・ジョー” をみた。いづれも面白かつた。

 

十月廿七日(木) 舊暦十月三日(癸丑) 晴のち曇天

書齋のエアコンのフィルターを掃除した。はじめて自分の手でおこなつてみたが、ほこりが盛り上がるほどにたまつてゐたのには驚いた。これではきれいな冷風も温風も出てきやしない! もつと頻繁に行ふ必要を感じた。

戸板康二 『ぜいたく列伝』(文春文庫) 讀了。面白かつた。とくに、「内田百閒の御馳走」、「徳川義親の虎刈り」、それに「御木本幸吉の真珠」などの章。また、「鹿島清兵衛のぽん太」をよんで、本箱からさがし出してきて、引用のあつた白洲正子の 『遊鬼 わが師わがとも』(新潮文庫) のなかの「遊鬼 鹿島清兵衛」を、さらに、「志賀直哉の座右寶」をよんで、志賀直哉の 『蝕まれた友情 戰後作品集』(創元文庫) のなかの「猫」をよまないではゐられなかつた。志賀直哉はだいの生きもの好きで、猫はどちらかといふと苦手だつたやうだが、猫がすきになる話だつたので興味深かつた。

ところで、今日たまたま屆いた、高圓寺(西部古書會館)で開催豫定の古書市(古書愛好会展)の目録をみてゐたら、「志賀直哉の座右寶」と題した文の冒頭に記された、志賀直哉が「二年の歳月を費し」て編集した、「いま手に入れることが至難だと聞く『座右寶(ざゆうほう)』という立派な写真帖」が出てゐて、しかもたつた一〇〇〇圓なのである。注文はしないけれど見てみたいものだ。

夜、やはりアマゾンで、刑事ヴァランダー・シリーズのシーズン2・第一話「殺人者の顔」をみた。 

 

十月廿八日(金) 舊暦十月四日(甲寅) 曇天のち晴

今日から神田古本まつりがはじまつた。這つてでも行かなければならないどころか、體重は減り、ズボンのベルトも二つも穴がせばまつてしまつたけれど、體調と氣分はだいぶ回復してきたやうである。それで初日から出かけることができた。関屋驛で東武線に乘り換へ、半藏門線經由で神保町におもむいた。

今日は、靖國通りの歩道にずらりとならんだワゴンの〈青空掘り出し市〉を、専大前交差點側から駿河臺下まで、そして古書會館をめざして歩いた。文庫本をおいてゐないワゴンも多々あつたが、珍しい文庫本がたくさん目にとまり、しかも低價格ときては見逃す手はない。持てないほどにはならないやうに選別はしながらも、みるみる重たくなつてきた。

晝食は寒いのでざるそばはやめて成光さんのラーメンをいただいて力をつけた。夕食は歸路、京成青砥驛の “すし三崎丸” で、にぎりと馬刺をいただいた。

今日の外出・・・四四九〇歩

今夜は、刑事ヴァランダー・シリーズのシーズン2・第二話「笑う男」をみた。 

 

十月廿九(土) 舊暦十月五日(乙卯) 晴

終日讀書。先日 「吉祥寺バサラブックス」 で買つた 唐沢俊一『古本マニア雑学ノート』(幻冬舎文庫) 讀了。古本好きの生態がよくわかつた! 

今夜は、刑事ヴァランダー・シリーズのシーズン2・第三話「五番目の女」をみた。第二話と第三話は、本でよんだのを思ひ出したが、ぼくのイメージしたのとだいぶことなつてゐた。

 

十月卅(日) 舊暦十月六日(丙辰) 晴

神田古本まつりに出かけた。今日は、千代田線大手町驛で半藏門線に乘り換へて神保町へ。日曜日だからおほかたの食事處は休みなのだが、「赤舎利一筋」と銘打った “もり一” といふ回轉すし屋にはいつた。日曜日のためか初日よりたくさんの人が出てゐた。

最近は文庫本のみ、しかも從來目をむけなかつたやうな種類のものに手がでるやうになり、ちよつと買ひ過ぎて反省。しかも今日はただ一册、齋藤愼爾編 『永遠の文庫〈解説〉名作選』(メタローグ) といふ文庫本でないものを求めてしまつた。帶によると、本書は、

「全集や選集に収録されることもなく忘却されていく文庫〈解説〉。しかし、文庫〈解説〉は最良の作品論であり、鑑賞文であり、作家と批評家との出会いの絶景であり、内容紹介であり、作家ガイドであり、ときに世相文化史である。本書は膨大な文庫を渉猟し、主に絶版となった文庫から珠玉を精選した初の文庫〈解説〉名作集である」。

二十八日に買ひ求めた 『東洋之佳人』 がじつはたいへん貴重な文獻であることがわかつた。著者、東海散士の本名は柴四朗といひ、「父は三百石取りの会津藩士であった。明治元年9月、官軍の会津城攻撃には銃を取って戦った。落城後は降伏者となって護送、監禁された。亡国の民となったこのときの体験がのちの文学の原点となる」といふその結実が本書(明治二十一年刊行)なのである。

今日の外出・・・五〇〇〇歩 

 

十月卅一(月) 舊暦十月七日(丁巳) 晴

服部さんからメールがとどいた。

「青戸教会70周年のお知らせの件、連絡をせずに失礼いたしました。ご容赦ください。当日は川島先生が礼拝説教を担当されました。参加者は40名前後、その中に私が教会学校の担当の頃の子どもが2人、教会員として残っていたことに感動しました。礼拝後の交流の時間もなく散会しました。私自身は70年の歩みを振り返り、主イエスの導きに感謝いたしました」

古い會堂を他の靑年たちと解體したときの苦勞を思ひ出しながら、殘念に思つた。ぼくも參加したかつた。

 

 

 

十月一日~卅一日 「讀書の旅」 

一日 ロバート・クレイス 『ぬきさしならない依賴』 (扶桑社ミステリー)

四日 色川武大 『怪しい来客簿』 (文春文庫)

同 黒井千次著 『高く手を振る日』 (新潮文庫)

五日 殿山泰司 『三文役者のニッポンひとり旅』 (ちくま文庫)

六日 水木しげる 『猫楠 南方熊楠の生涯』 (角川文庫ソフィア)

八日 佐野眞一 『人を覗にいく』 (ちくま文庫)

同 菅田文夫 『切らずに治る胆石』 (主婦の友・健康ブックス)

十日 蒲松齢 柴田天馬譯 『完譯聊齋志異 第二卷』 (角川文庫 舊字舊假名)

十二日 ラフカディオ・ハーン 田中三千稔訳 『続怪談・奇談』 (角川文庫)

同 色川武大 『狂人日記』 (講談社文芸文庫)

十三日 滝田ゆう 『滝田ゆう名作劇場』 (講談社漫画文庫)

十六日 ローレンス・ブロック 『殺し屋ケラーの帰郷』 (二見文庫)

同 ラフカディオ・ハーン 田中三千稔訳 『怪談・奇談』 (角川文庫)

十七日 いしかわじゅん 『業界の濃い人』 (角川文庫)

十九日 北尾トロ 『ぶらぶらヂンヂン古書の旅』 (文春文庫)

廿三日 ラフカディオ・ハーン 田中三千稔訳 『日本の面影』 (角川文庫)

廿五日 長谷川町子 『いじわるばあさん ①』 (朝日文庫)

廿七日 戸板康二 『ぜいたく列伝』 (文春文庫)