八月十一日(火)舊六月廿二日(丙戌) 晴、蒸し暑い

 

なんといふ暑さだらう。外氣は四〇度、エアコンの効きがよくないのか、汗がとぎれない。いちおう讀書はすすんでゐるが、それもとぎれとぎれ。氣候のせいなのか、ぼくの體調のせいなのか。

珍しく、弓道仲間の齋藤さんから電話があつた。まづ口にでたことばが、「生きてゐましたか?」だつた。 

 

 

八月十二日(水)舊六月廿三日(丁亥・下弦) 晴のち雷雨

 

昨夜、高嶋哲夫著 『サザンクロスの翼』 讀了。『トルーマン・レター』 とともに太平洋戰爭がらみの内容だけれども、主役はゼロ戰とダコタと言つてもよく、シリアスでもあり、じつに面白かつた。最後の部分は胸があつくなつた。

1945年夏、いまや日本は敗戦寸前。何もかも失い特攻でも死にそびれた男・漂着した島で孤独に暮らしていた整備兵・そして闇の運び屋をしている女―。それぞれの思惑を抱えながら、水上仕様に改装されたオンボロ輸送機(ダコタ)で、南太平洋の空を駆ける。長く植民地支配を受けたこの地の自由と独立のために。胸すく大活劇」

 

午後、NHK・BSPで 『史上最大の作戦(The Longest Day)』 を見た。白黒映畫だつたのであらためておどろいたが、制作は一九六二年、ぼくが中學三年生のときだ。だから、映畫をみて讀んだのか、讀んでから映畫を見たのかは忘れたけれど、この原作(コーネリアス・ライアン 著 『史上最大の作戦』)を讀んだことは今でもよくおぼえてゐる。現在ではハヤカワ文庫で出てゐるやうだけれど、當時出版された翻譯本は子どもがよむ本とは言ひがたく、それでもよみ通せたことはうれしかつた。

194466日、人類史上かつてない大規模な上陸部隊が、ノルマンディの海岸を埋めつくした。連合軍の全兵力を結集したヨーロッパ反攻作戦が、ついに開始されたのである。要塞地帯を突破されて総崩れとなったドイツ側は、この日を境に、急速に敗北への道を歩んでいく。同名映画の原作としても有名な本書は、全世界の運命を決した24時間の激戦をドラマティックに再現した戦記物語の不滅の名作である」

 

今日も、息苦しいやうな暑い一日だつた。ただ、午後から雷雨となり、いいおしめりにはなつたけれど、蒸し暑さはかへつてひどくなつた。 

 

 

 

八月十三日(木)舊六月廿四日(戊子) 晴のち夕方には激しい雷雨

 

『宇治拾遺物語 卷第九』 をよみはじめた。その第一話 〈瀧口道則術を習ふ事〉 からして奇怪なはなしで、「とにかく猟奇的でこっけいでセクシーでもあり、説話として」この上ない面白さなのである。

それと、藤沢周平の「獄医立花登手控え」シリーズをよみはじめる。

 

 

八月十四日(金)舊六月廿五日(己丑) 晴のちうすぐもり

 

今日も暑い。エアコンは除濕にし、多少汗をかくくらゐにして、『宇治拾遺物語 卷第九』 と 『春秋の檻 獄医立花登手控え』 を、一話ごとに交互によみすすんだ。『春秋の檻』 は二十八年ぶりの再讀だが、けつこうスリリングで面白い。

 

 

八月十五日(土)舊六月廿六日(庚寅・敗戰記念日) 晴、蒸し暑い

 

黙祷

 

『春秋の檻』 につづいて 『風雪の檻』 讀了。「本卷には第一話〈老賊〉を始めとして全五話が収めてあるが、時代小説というものの面白さ・良さというものを読者に滿喫させてくれる佳篇ぞろいである」、とは解説者のことばだが、まことにそのとおり。いいものは何度よんでも面白いのだとおもつた。つづいて 『愛憎の檻』 に入る。

 

 

 

八月一日~卅一日 「讀書の旅」 ・・・』は和本及び變體假名・漢文)

 

一日 外山滋比古著 『「読み」の整理学』 (ちくま文庫)

三日 藤沢周平著 『驟り雨』 (新潮文庫) 再讀

七日 藤沢周平著 『橋ものがたり』 (新潮文庫) 再讀

九日 藤沢周平著 『霧の果て 神谷玄次郎捕物控』 (新潮文庫) 再々讀

十日 高嶋哲夫著 『トルーマン・レター』 (集英社文庫)

十一日 高嶋哲夫著 『サザンクロスの翼』 (文春文庫)

十四日 藤沢周平著 『春秋の檻 獄医立花登手控え』(講談社文庫) 再讀

十五日 藤沢周平著 『風雪の檻 獄医立花登手控え②』(講談社文庫) 再讀