月廿一日(金)舊七月三日(丙申) 炎天

 

今日はとくべつに暑い。部屋を涼しくしてじつとしてゐるしかなかつた。

『院政』 が面白くなつてきた。やつと半分、後白河法皇と平清盛とのかんけいについてのところでは、今まで學んできたことがうそのやうな展開なのである。いや、ぼくの理解が淺薄だつたからかもしれないけれど、それだけに頭腦がついていくのに精いつぱい、アイスノンで冷やし冷やしよむすすむ。

 

 

八月廿二日(土)舊七月四日(丁酉) 炎天のち曇天、雷

 

朝食後、書齋兼猫部屋にいくと、最惡のできごとが待つてゐた。モモタが、ソファーの上にオモラシをしてゐたのだ。想定して一應ビニールのシートを敷いてゐたのだが、そのシートに尿がたまつており、しかもすでにわきからソファーの尻の部分が尿を吸ひ取つてゐたのである。すぐに處理したが、ついいらだつてしまつた。病氣持ちなんだらうか、すでに何回となくくりかへしてきたオモラシである。叱つてはだめよと妻は言ふが、今日は一日モモタとは口をきかなかつた。

 

美川 圭著 『院政 もうひとつの天皇制』(中公新書) 讀了。じつに内容が濃かつた。讀んでゐて、新しく學んだこと以上に、今までの淺薄な知識の變更をせまられた! むろん、『平家物語』 の時代についても敎へられて有意義だつた。

本書の内容・・・「院政とはすでに譲位した上皇()による執政をいう。平安後期には白河・鳥羽・後白河の三上皇が百年余りにわたって専権を振るい、鎌倉初期には後鳥羽上皇が幕府と対峙した。承久の乱の敗北後、朝廷の地位は低下したが、院政自体は、変質しながらも江戸末期まで存続する。退位した天皇が権力を握れたのはなぜか。その権力構造はどのようなものであったか。律令制成立期から南北朝期まで、壮大なスケールで日本政治史を活写する」

 

 

八月廿三日(日)舊七月五日(戊戌・処暑) 朝雨、のち晴

 

具合がよくない。クスリの副作用せいなのだらうが、この日記を讀書の旅などと洒落てみたが、最近では「闘病日記」と名づけたはうがいいのかもしれない。

 

二階専用の小型冷藏庫のなかの氷を取つてゐたら、ガスが吹き出し、壞してしまつた。幸ひ立石のオリンピックにいつたら、同じものがあつたので買ひもとめることができた。まあ、ちやうど十年使つたからいいことにした。

 

妻がつくつてくれた晝食のカレーうどんを食べたあと、洗はうとして入れ齒をはづしたとき、齒にかぶせた金屬部分が取れてしまつた。それで食べるのに困難になり、夕食は、食欲がなかつたためもあるけれど、ほとんどのこしてしまつた。

 

 

八月廿四日(月)舊七月六日(己亥) 晴のちくもり

 

朝一で靑島齒科に連絡し、すぐにたずねて取れた齒の部分を修復していただく。その往き歸り、靑い空とさわやかな風が秋をおもはせた。

氣分がよくなくて、ひるにおいしくもない天丼を食べに出かけたりしたが、終日讀書。

昨日よみはじめた、藤沢周平著 『闇の傀儡師(上)』 を讀み終へ、(下)も、夜には讀了。面白くて途中でやすむ氣にならなかつた。

 

 

八月廿五日(火)舊七月七日(庚子) 晴

 

今日はいままでになくつらかつた。食欲がないのはクスリのせいとしても、氣分がすぐれなかつた。胸苦しいといふとおほげさだが、寢床のなかで仰向いてもだえてしまつた。それでも、夕食は少ないなりに食べられて、少し落ち着いた。

 

終日讀書。『源氏物語〈若菜上〉』、三分の一ほどよみすすみ、光源氏が、たうとう朱雀院の娘、女三宮を嫁にもらひ、第一の席を奪はれた紫の上の心中が語られる場面。

また、藤沢周平著 『闇の傀儡師(下)』 讀了。つづいて 『隠し剣孤影』 をよむ。

 

これからは 「闘病日記」 になりさうなので、二〇一三年十二月一日からはじめた 「ひげ日記 讀書の旅」 のブログへの掲載を、今日をもつて終了とする。

 

 

 

八月一日~卅一日 「讀書の旅」 ・・・』は和本及び變體假名・漢文)

 

一日 外山滋比古著 『「読み」の整理学』 (ちくま文庫)

三日 藤沢周平著 『驟り雨』 (新潮文庫) 再讀

七日 藤沢周平著 『橋ものがたり』 (新潮文庫) 再讀

九日 藤沢周平著 『霧の果て 神谷玄次郎捕物控』 (新潮文庫) 再々讀

十日 高嶋哲夫著 『トルーマン・レター』 (集英社文庫)

十一日 高嶋哲夫著 『サザンクロスの翼』 (文春文庫)

十四日 藤沢周平著 『春秋の檻 獄医立花登手控え』(講談社文庫) 再讀

十五日 藤沢周平著 『風雪の檻 獄医立花登手控え②』(講談社文庫) 再讀

十六日 藤沢周平著 『愛憎の檻 獄医立花登手控え③』(講談社文庫) 再讀

十六日 『宇治拾遺物語 卷第九』 (第一話~第八話)

十八日 藤沢周平著 『人間の檻 獄医立花登手控え④』(講談社文庫) 再讀

廿二日 美川 圭著 『院政 もうひとつの天皇制』 (中公新書)

廿三日 藤沢周平著 『闇の傀儡師(上)』 (文春文庫) 再讀

廿四日 藤沢周平著 『闇の傀儡師(下)』 (文春文庫) 再讀