二〇一六年十一月(霜月)一日(火)丁亥(舊十月二日 雨のち晴

 

今日の讀書・・今日も、黒川さんの、『暗礁 上』 を讀み上げ、つづいて、『暗礁 下』 に入りました。 

やめられない面白さはあれこれありますが、その一つは、主人公らの行動力です。行動力といふか、移動のすさまじさとでも言ひませうか。ぼくは手元に、「大阪府」と「堺市・泉州」と「奈良県」の道路地圖をおいて、頁をくくるごとに開いては、彼らの移動とその行動を追ふのですが、すさまじい移動です。それでだいぶ大阪近邊の交通網と地理が頭に入りました。 

それと、彼らの會話の面白さです。どう面白いのか、まづは、ちよいと引用しませう。 

 

桑原は車を停めるようにいった。 

「この家ですか」 

「みたいやな」

敷地はざっと五百坪、・・・ 

「もうちょっと前へ行け」 

冠木門の真ん前に車を停めた。表札に隷書で《新庄》とある。 

「ひとつ訊いてもよろしいか」 

「なんや」 

「なんで落合やなく、新庄に会うんですか」 

「おまえはほんまに昼行燈やな。将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、やないけ。先に外濠を埋めてから落合を叩くんじゃ」 

「深謀遠慮ですね」 

「あほぬかせ。遠慮なんぞするかい」 

 

ついでにもう一場面。 

 

 いわれて、二宮はパーキングブレーキを解除した。走りだす。 

「どこへ行きます」 

「飯を食うんやんけ」 

「鮨を食うたらよかったのに」 

「あんなしょぼくれた爺といっしょに食えるかい。わしは人見知りするんや」 

「へーえ、鬼より強い桑原さんが人見知りね・・・・」 

「わしがいま、いちばん嫌いな人間、知ってるか」 

「中川ですか」 

「ちがう」 

「森山さん?」二蝶会の組長だ。 

「ちがうな」 

「誰やろ・・・・」 

「おまえや」 

「はいはい」 

 

以上、おそまつでした。 

 

今日の寫眞・・黒川博行著、『暗礁 上』 と 『暗礁 下』 (幻冬舎文庫)。