三月廿三日(日)癸巳(旧三月廿三日) 晴れのちくもり

あ~ァ、面白かつた。久しぶりにアドレナリンが分泌してしまひました。北方謙三『標的』(徳間文庫)を読んだんです。二〇〇一年三月に一度読んでゐるんですが、まつたく覚えてゐませんでした。

「ある人物の失踪を調査することからはじまるストーリー。・・企業にいながら組織からはみだした無頼社員の主人公をはじめ、酒場で知り合った男、そして二人のヒロインなど、それぞれに陰影の深い登場人物を配し、波瀾に充ちた物語を一気に読ませていく」、と解説者のおつしやる通り、一気に読ませていただきました。たしかに、北方作品「おなじみの話運び」なんですが、それだからファンとしては面白いわけなんですね。

舞台が、静岡、清水あたりといふのもいいです。クライマックスの決闘場面は、三保の松原です。ぼくの住んでゐたところですから、思はず場所を思ひ描いてしまひました。

また、カーチェイス場面なんか、ほんとかよ、と言ひたくなりますが、乱闘場面と同じく、アドレナリンがちびつてしまひました。なんせ、北方君、免許証を取る前からカーチェイスを描いてゐるベテランですからね。でも、なんといつても共感するのは次のくだりです。

「やけになりゃ、仕事放り出して帰ってるさ。本気になったんだよ。意地って言ったっていい。とにかく、この仕事だけはやり遂げると、決めたんだよ」

「それで、なにか得することがあるの?」

「なくしちまったもんを、取り戻せるかもしれねえ」

「なによ、それ?」

「自分を、男だって思ふ気持ちさ」

と、まあ、お馴染みの、内なる「けものが眼を醒」しておおあばれするといふ内容です。そして、今回読んでとくに面白いと思つたのは、主人公が暴くのが、会社ぐるみの武器の密輸で、当然それが法律に違反する、重大な犯罪だからですが、なんてことはありません。時代が変はれば変はつたものです。今ぢやあ、総理大臣からして、武器の輸出をしませうと、犯罪的行為を率先して行はうといふんですから、もうなんだかわからないことになつてきました。「こんな日本に誰がした!」 と叫びたいです。

 

先日、中仙道の資料の一つ、「前田慶次道中日記」を探してゐたので、長野市にある善光洞山崎書店といふ本屋さんに問ひ合はせました。〈新編信濃史料叢書〉といふシリーズがあつて、そこに入つてゐるやうなので、注文したんです。その際です、この〈新編信濃史料叢書〉の目録があればほしいと書き添へたんですが、いやァ、その全二十四巻の「目録」をご丁寧に送つてくださつたのであります。ありがたいですね。『中仙道紀行』、どうしても完成させなくてはならぬと思ひました。

それと、また、注文した葛飾区郷土と天文の博物館発行の『葛飾区古文書資料集六 小菅籾蔵関係文書』が届いたんです。さらに、同じ資料集の『かつしか紀行文』と『堀切と菖蒲園』も注文しました。やつと、ぼく自身の身の回りの歴史に辿り着いたといつた感じです。しかし、残念なことに、翻刻だけで、影印史料は載つてゐないんです。これでは古文書の勉強にはなりません。博物館でコピーさせてくれるでせうか?

 

今日の写真:ラム通院(エコー検査の結果、肝臓に腫瘍(癌?)ができてゐるといはれました。手術はせず、残された生命を豊かに過ごさせてあげたいと思ひました)。レンギョウの花。久しぶりのスカイツリー。それと、近所で残された唯一の農家のたたずまひ。